【ショート】 灯りを嫌う精霊
―― short story ――
真っ暗で何も見えない。
——ここは、そんな場所。
葉に寝そべり肘をつきながら、
遥か遠くに見える一筋の光を睨む。
周囲には黒く染まった木々が聳え、
囲うようにして黒い薔薇のアーチが続く。
ここでは、光など残らないはずだった。
それなのに、あの小さな光だけが消えない。
本当は見たくもないが、仕方ない。
あの光が広がらないようにするのが、私の役割だった。
ゴロンと仰向けになると、伸びをする。
体を起き上がらせると、指先から闇を生み出した。
広げると次々と黒い薔薇が咲く。
花びらで道を作ると、光へと向かう。
近づくたびに、胸がざわついて眉が寄る。
深く息を吐くと、
目の前の光が大きくなったような気がして黒い薔薇を放つ。
光に触れると、吸い込まれるように消えていく。
……忌々しい。
手から再び闇を生み出した時、
光の中心から、火のような灯りが浮かび上がった。
それは少しずつ形を変え、女人の姿になる。
ふと、気付く。
自分と同じ形をしている。
こめかみが、ぴくりと跳ねる。
闇をぶつけようと手を振り上げた。
私を傷つけないで
声が体に響く。
やめてちょうだい。
オレンジ色の女人が、そう言って微笑んだ。
なぜか、体が動かない。
女人は近づくと、私に口付けした。
あなたは、私なの。
――違う。
声が出なかった。
体の内側に眠る闇を叩き起こすように、灯りへ闇を放つ。
蛇のように唸ると、女人を締め上げた。
そうやって自分を傷つけてばかり。
胸の奥が、細く裂けた。
違う!
叫ぶと女人が闇に潰され、消えた。
再び、闇だけの地に戻る。
見届けると、力が抜ける。
膝から崩れ落ちる。
けれど、体は地に触れなかった。
大きな腕に抱かれていた。
見上げると、想う人が眉尻を下げて私を見つめている。
よくやった
その言葉だけで、全てを捧げたくなる。
闇のような瞳が、漆黒に染まる私を映した。
そなたは、その方が美しい
いつもの褒美に黒い実を受け取る。
口にすると、甘い、甘い味が私の舌を満たす。
私が指先まで黒く染まると、
彼は、微笑んだ。
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