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【ショート】 囚われてから

―― short story ――


恋をした。
身を焼くほどの。


細くて冷たい指先が頬をなぞる。
長い髪と甘い香りが鼻をくすぐり、手を伸ばしたくなる。
静かな眼差しは蕩けるように揺れている。
目と鼻の先に欲しい人がいる。
なのに、動けなかった。

彼女に囚われたまま。

彼女の目は俺に釘付けだった。
憐れなほどに。
そして、時々、彼女は俺を見て微笑んだ。
それに、たまらなく興奮した。

どうしてこうなってしまったのだろうか。
彼女の負担になどなりたくなかった。
俺の心臓を一刺しすれば、終わったのに。
腕には、紋様が脈打つ銀の腕輪。
指先ひとつ、思うように動かない。
体は宮殿の壁に張り付いて、
痛みも苦しみも、空腹さえも訪れない。
息だけが、途切れずに続いていた。
時折、監視の男たちが俺に殺気を放つ。
男たちは彼女を慕っていた。
俺へ向ける殺気は隠そうともせず、それでも誰一人、手が出せない。
朝になっても、夜になっても、彼女はここにいた。
玉座を離れるたびに、最後には俺の前に戻ってくる。
俺がどんなに彼女を憎んで見せても、
彼女は眉を顰めて笑うだけ。
俺を手放そうとはしない。

喉がひりつく。

目を伏せた。

この至福の時間は早く終わらせなければならない。

俺は彼女を殺さねばならないから。



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