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【ショート】 氷の城からの招待状 ―嘘はつけないの―

―― short story ――

「嘘みたい……」

招待状には、私の名前が書いてあった。

まるで、物語のヒロインになったような気分。

氷の城では、毎年、盛大に開かれるパーティーがある。

街や学園で成果を上げた人々が選ばれ、この国を担う重要な人物として紹介される。

将来の仕事を保証されたようなものだった。

私は手紙を持ったまま、くるっと一回転した。

鼻歌を歌いながら踊り出す。

――あぁ、認められた。

そう思うと、たまらなかった。

そっと、手紙をポケットにしまう。

誰にも見せたくない。

戸がノックされる。

「はい」

返事をすると、シェーラが中に入ってくる。

「ジャネット、何の手紙だったの?」

「学校からよ」

「差出人がなかったじゃない」

「レンドロン先生よ」

シェーラの目がまるくなる。

「あぁ……」

レンドロン先生は、突飛な行動で知られているうえ、私の魔法学の顧問でもある。

シェーラはすぐに納得したようだった。

それから、私はすぐに準備に取りかかった。

研究の成果を承認してくれたレンドロン先生に最終確認を行い、魔法薬の完成品を複数用意した。

そして、ダンスの練習も欠かさずに行った。

素敵な殿方と出会えるかもしれない。


部屋へ戻るたび、シェーラの視線は新しいドレスへ向いていた。

「最近、楽しそうね」

「そうかしら」

招待状の入った引き出しに、そっと鍵をかけた。


数日後、シェーラが部屋の戸を叩いた。

中に入るなり、話し始める。

「ジャネット! 聞いてよ。氷の城から招待状が届いたの!」

「え……」

頭が真っ白になる。

「私の作った魔法薬が認められたんですって!」

その言葉で、少し冷静さが戻ってくる。

「……おめでとう」

シェーラが私に抱きつく。

鼻を掠めた香りには覚えがあった。

「そういえば、ジャネット。あなた素敵なドレスを新調していたでしょう。当日、貸してくれない?」

「……いいわよ」

「やったぁ。ジャネット、大好きよ」

「えぇ、私もよ。かわいい妹だもの」


――あの子の魔法薬は、ひどい出来だった。


それでも、かわいい妹だ。
自分の髪に残る、私の魔法薬の香りにも気づかないくらい。



研究室に戻ると、レンドロン先生が机に向かっていた。

書き物をしている時は、反応がないことを知っている。

私は黙ってお茶を入れにいく。

水を沸かし、茶葉を取り出す。

沸いた湯を注ぎながら、袖から取り出した小さな瓶の液体を数滴入れた。

そっと、紅茶を机の端に置くと、ようやく先生が顔を上げる。

「あぁ、来ていたのかい」

先生はカップを持ち、香りを楽しむように目をつむる。

そして、一口飲んだ。

「……先生、どうしてシェーラも選んだんです? 私の魔法薬のレシピまで盗んで」

「……なんて、ひどいことを」

先生は、カップをソーサーへ戻し私を見た。

「あの子は、君に勝ちたいからって自分から脚を開いたんだ。若くて従順なら、研究なんてどちらのものでも……」

先生の顔から、みるみる血の気が引いていく。

「少し褒めてやれば、何でも――」

先生は両手で自分の口を塞いだ。


思わず口元が緩む。


私の研究は完璧だった。




「よく似合っているわ、シェーラ」




私は妹のドレスを整え、薬瓶の入った鞄を持ち上げた。

迎えの馬車がやってくる。


氷の城では、

――嘘はつけないの。





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