【ショート】 初恋
―― short story ――
チュン、チュン。
眩しい光がカーテンの隙間から漏れ、瞼が自然と開く。
……もう朝か。
昨日もだいぶ飲んだ。
体が重い。胸に乗った知らない女の腕をどかし、ベッドを降りる。
肌に絡みつく髪が鬱陶しかった。
シャワーを浴びる。
着替えを済ませ、冷蔵庫の飲みかけの水を飲み干す。
鍵と金をテーブルに置き、部屋を出た。
初夏の風が吹く。
少し湿っているが、不快というほどじゃない。
見上げた空は、妙に青かった。
チュン、チュン。
俺が通ると、草むらから雀が飛び立つ。
枝へ移り、忙しなく跳ねる。
その中の一羽と、目が合った気がした。
そんな訳ない。
背を向け、そのまま家に帰った。
アパートの二階に上がる。
玄関を開けると、いつも通り、物が溢れている。
こもった空気に思わず、ベランダの窓を開ける。
裏の木に、雀が止まっていた。
音をさせても、逃げない。
「……なんだ、ストーカーか」
口元をゆるめて、ベランダに直に腰を下ろす。
……逃げない。
「かわいいな」
雀を間近で見るなんて初めてだ。
手を伸ばす。
「……さすがに、無理か」
ちょこちょこと動きながら首を傾げたり、細い脚で跳ねている。
でも、丸い黒の瞳は、俺を見ている。
空気が静かだった。
ベランダに振動が走る。
「……んだよ」
スマホのバイブが鳴ると、雀が少し離れてしまった。
息を吐いて、スマホを持ち上げる。
すると、反対の手の甲に雀が止まる。
目を見開く。
スマホを置く。
目は雀から離せなかった。
俺の手の上で、忙しなく動く。
喉が鳴る。
息を潜め、手をそっと持ち上げる。
反対の手で頭を撫でると、雀の体がふるっと震える。
……やべぇ。
俺は頭を抱えた。
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