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【ショート】 推しの推し

―― short story ―—


——僕の彼女はすごく可愛い。

少し童顔で、笑うと子どもみたいになる。

さらさらの肩まで下ろした黒髪は、
風で揺れるたび、いい香りがする。

よく「へくちっ。」と面白い効果音のくしゃみをして、
鼻をすすることが多い。

一体、誰にそんなに噂されているのだろう。

……あぁ、僕か。

彼女の様子を見ながら、
心でつぶやく。

彼女に自分のマフラーをしてあげると、
赤い鼻のまま、上目遣いに僕を見上げる。

「ありがとう」

微笑んだ彼女が可愛すぎて、
このまま一緒に家に帰りたい衝動に駆られる。

これから、一緒に映画を見に行くのだから、
それは無理だ。

肩を抱き寄せ、
彼女の頭に口を寄せる。

シャンプーの香りに包まれると、
彼女の体温を感じた。

そっと、彼女の顔を覗き込むと、
下を向き、恥ずかしそうに、
もじもじしている。

その様子を見て、
また胸が跳ねた。

……映画の後、家に誘おう。

自然な流れに見えるようにしなければ。

昨日、自宅を片付けておいて、
本当によかった。

——私の彼氏はめちゃくちゃかっこいい。

短い短髪と、
年齢の割に少し大人っぽい、シャープな顔立ち。

一見、怖そうに見えるけど、
少しだけ下がった目元がチャームポイントだと思う。

今日は、がんばって気合いを入れてきた。

新調したワンピに、
お姉ちゃんに教えてもらったメイク。
彼が好きだと言っていた香水も、少しだけ。

今日は映画の後、
彼が行きたいと行っていたお店に行くんだ。
ちゃんと、調査済み。

「へくちっ。」

また、くしゃみが出てしまった。

……恥ずかしい。

ふいに、首元が温かい。

彼のマフラーに包まれていると気付いたのは、
彼のおうちの香りがしたから。

そっと上を見上げると、
下がった目元が見えた。

「ありがとう」

言葉を告げると、
目元が嬉しそうに細まり、
彼の温かな吐息が私の頭を撫でる。

胸の音が全身に鳴り響き、
呼吸がうまくできない。

下を向き、深呼吸をする。

上昇する体温がセーブできない。

……こんな素敵な人が私の彼氏だなんて。

気が付くと、
温かな手が私の左手を包んでいた。

「行こうか」

……あぁ、声も、いい。

彼女の手は小さくて少し汗ばんでいた。

……あぁ、本当に可愛い。


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