【ショート】 ぜんぶ、わたしのせい
―― short story ――
――お前が悪いんだ
それは呪いの言葉だと気づくまで時間がかかった。
すべて、手遅れだった。
じゃり、じゃり……
歩くたびに何かが足の後ろをつついた。
足を踏み下ろすたびに、
おびただしい石ころのような白い粉末が巻き上がる。
時々、白の中に鮮やかな赤が散っている。
醜い呻き声が、まだ、響いていた。
足元が崩れて、真っ直ぐ歩けない。
ここには、こんなにも多くの悪者がいたのか。
雲が避けると、足元を赤い月が照らす。
どろどろに溶けた肉片が姿を見せる。
ふと振り返ると、愛おしい人が横たわり目を閉じていた。
気をつけながら、駆け出す。
そっと、その顔を覗くと、
すぐに目を開けて、いつものように微笑んでくれそうだった。
私は、その顔から目を離せなかった。
どのくらい時間が経ったのかよく分からない。
彼は、目を開けていた。
私を正面から見つめ、ゆっくりと体を起こす。
そして、そっと抱きしめてくれた。
彼のぬくもりに包まれると、目を閉じたくなる。
「……怖かったね」
私の頭を撫でる。
「いいえ」
首を振る。
「そうか。よかった」
「……何がよかっただ!この化け物が」
突然、背後から何かを振り上げる音がする。
振り返ると、男は胸を剣で貫かれ硬直していた。
えずく声と、鈍器が落ちるのは同時だった。
彼が剣を引き抜くと、男は血に覆われて倒れる。
鈍い音が響いた。
静かに振り返ると、彼は剣の刃先を布で拭き始める。
「……汚れてしまいましたね。」
囁くように呟くと、彼は微笑んだ。
「まだ、使えるよ……さて、ここはまだ物騒だし、休めるとこに行こうか」
彼は私をひょいと抱き上げる。
止まっていた時が動き出す。
「あ……証拠隠滅しとかないとね」
彼が言う。
私は手を死体にかざし、力を込める。
闇に覆われると、肉が溶け、骨だけが残った。
嫌な匂いと焼けた煤だけが残る。
笑い声が響く。
「あーすごいなぁ。……僕にはしないの?」
少しだけ真顔になる。
「その時は、一緒に」
囁くと、彼は目を細めて笑った。
「君が傷つくのは嫌だから、しないでもらおう」
抱き上げたまま、強く抱きしめられる。
私は首に手を回し、身を預けた。
彼は躊躇なく、踏みつけて進んだ。
私を蔑ろにしてきた、すべての人たちを。
「……私が、悪いのでしょうか」
時々、まだ聞いてしまう。
「君は何も悪くないよ。僕の望みを叶えてくれただけさ」
彼の言うことだけが真実だった。
「さぁ、どこに行ってみたい?」
彼は、天使のように微笑んだ。
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