【ショート】 一妻四夫制の世界で
―― short story ――
私には、四人の夫がいる。
『……今年の出生率の男女比が……』
ニュースの音声に、掃除機を止める。
「今年も女の子が減ったな」
ソファに座る夫の隣へ腰を下ろした。
「……もう一人作ろうか?」
夫は眉を寄せて笑う。
「負担になるだろ」
後ろから、頭を撫でられる。
仰ぎ見ようとした時、
「ママ~、僕、妹ほしい」
一番下の子が私の膝に乗ってきた。
思わず頬がゆるむ。
「そうよね」
この子が末っ子だった。
「じゃあ、次は俺にしようよ」
子供を抱き上げながら、もう一人の夫が笑う。
その声につられるように、子供たちが部屋に入ってくる。
小さな足音が増える。
女の子は……一人だけだった。
みんな、優しい夫たち。
でも、ただ一人……。
彼だけは、私に触れようとしなかった。
子供はいた。
それでも、距離は縮まらなかった。
三年目で彼の子を授かると、
彼は家を出た。
それからは、
三人の夫と子供たちと暮らしていた。
ある日、娘が言った。
「お父さんに会いたい」
手紙を書いた。
返事は短かった。
娘とは会う、と。
帰ってきた娘は、笑っていた。
「やさしい人だったよ」
その言葉は、私の心を抉った。
もう一度、手紙を書いた。
——離婚届を添えて。
翌朝、玄関が鳴った。
「……離婚はしない」
息を切らせている。
「どうして……」
彼は離婚届を差し出し、目を逸らした。
「君が、他の男と話している姿を見るのは、……耐えられない」
息が、できなかった。
彼は背を向ける。
伸ばした手は、何も掴まない。
静かに、
紙の上に水滴が落ちた。
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