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【ショート】 どんぐりの恋

―― short story ―—

りすちゃんは、大きな森の一本の木に住んでいます。

りすちゃんは、とても優しいりすでした。

たくさんの緑に囲まれた豊かな森には、
穏やかに流れる川と、
小さな小屋が一つありました。
その小屋には、人間が一人で住んでいます。
森のりすたちは、その人を少し怖がっていました。

ある晴れた日に、
りすちゃんは、木のお家の穴から顔を出し、
どんぐりを求めて、
出かけることにしました。

とととっと、素早く木を降りると、
鼻をくんくんさせながら、
どんぐりを探します。

葉の下に顔を潜り込ませたり、
他の木に登ったり、
大忙しです。

しばらくすると、
川の方から、友だちのりすが走ってきました。

『向こうに、人間がいるぞ』

友だちのりすはりすちゃんに隠れるように言いました。

一つだけ手に入れたどんぐりを、
しっかりと握って、
友だちのりすと一緒に、草むらの中に隠れます。

人間は、細長い黒い鉄の棒を持っていました。

人間は若い男性でした。

周囲を見渡しながら、
何かを探しているようです。

あれが危険なものだとりすたちは感じました。

りすちゃんと友だちは静かに息を潜めました。
若い男性は、そのまま通り過ぎて行きます。

二匹はほっとすると、
再び、どんぐりを探し始めました。
気に入るどんぐりをストックすると、
二匹は、お互いの家に帰ります。

家には、寝たきりになったお父さんりすがいました。
どんぐりをあげて、
食べてもらいます。

たわいのない話をしながら、
過ごしていると、
ふと、木の穴の下に、
若者の姿がありました。

なんだか、元気がないようです。

可哀想になり、
りすちゃんは座り込む若者の肩まで、
木を駆け降りて行きました。

若者はビクッと肩を震わせました。

驚いた顔でりすを見つめます。

りすちゃんは、持っていたどんぐりの一つを、
差し出しました。
これで元気が出ると思ったのです。

若者は、目をぱちぱちさせた後、
しばらく、りすちゃんの様子を伺っていました。

つぶらな瞳をくりくりと動かし、
小首を傾げる様子を見ていると、
若者の心に温かいものが生まれました。

そして、
りすちゃんのどんぐりを受け取りました。

「ありがとう」

若者は、優しく微笑みました。

――りすちゃんは、恋をしました。

どんぐりよりも、ずっと大きな恋です。


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