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【ショート】 恋をしたのは、

―― short story ――

初めて彼女に会ったのは、図書館だった。
視線を感じて、横目で見る。
とくん、と音がする。
彼女の瞳は、僕に熱い眼差しを注いで、長いこと見つめていた。
僕は下を向き、それから上げた。
先に動き出したのは彼女だった。
ゆっくりと近づくと、目を逸らす。
それから、やっぱり僕を見た。

数日経って、彼女がまた図書館にやってきた。
それだけで、心が揺さぶられた。
また、目が合う。
今度は、僕も見つめた。
指先が触れる。
離れる。
もう一度、触れた。
触れ合うと、彼女の口が綻んだ。

途端に、すべてが持っていかれた。

彼女は表情が豊かだった。
目を細めて、揺らす。
眉を顰める。
唇が弓形になる。
やがて、こわばる。
また、弛む。
彼女の表情が揺れるたびに、
僕は少しムズッとした。

次に会ったのは、書店だった。
ここにも来るんだと、つい、目線が彼女を追った。
でも、今日は僕には目もくれず、横を過ぎ去っていく。
心に大きな穴が空く。
動けないでいると、帰り際に彼女は僕を一瞥した。
手を伸ばす。
期待した。
なのに、すぐに引っ込めると、帰って行った。

それは、午前中だった。
彼女が来た。
どこか、心待ちにしていた。
彼女の顔を見つめる。
頬は紅潮し、息を弾ませている。
そして、目が合った。
頬を染め、微笑む彼女の表情に舞い上がりそうだった。
彼女は僕に触れた。

彼女の部屋は、白を基調とした爽やかな部屋だった。
淡い緑色のカーテンが陽光に包まれ、風を運ぶ。
花柄のベッドに飛び込むように座り、
置きっぱなしだった日記を机に置く。
僕の手を引くと、彼女は迷わず抱きしめた。
ほのかに薫っていた彼女の甘さが全身を包む。
ざわめく胸を落ち着かせる前に、押し倒される。
艶やかな髪が僕の顔に落ちる。
やわらかい微笑みが、今は妖艶に見えた。
こんなに性急に求めてくる人だとは思わなかった。
僕は望まれるままに、開いた。
指先が僕をゆっくりとなぞる。
摩擦の音が静かに耳をくすぐると、彼女の目が酔いしれていく。

もっと、僕から抜け出せなくなるといい。



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