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【ショート】 No.400

―― short story ―—

400。
冷たい数字。
それが私だった。

拒否権はない。

朝になると、番号を呼ばれる。

金属音とともに、鉄格子が開いた。

促されるまま、廊下へ出る。
力なく、冷たい床を踏み締めて歩いていると、
後ろから「遅い」と警棒で肩を押される。

肩の痛みよりも、胸の奥が視界を濁らせた。

部屋に入ると、同じ顔をした人々が座っている。

封筒を作る。
型取られた紙を折り込んで、糊で止める。
ひたすら、それを三時間。

昼は支給される。

そして、午後は、外に出されランニングをさせられた。

また、夜になり、独房へ戻る。

支給された食事はスープとパン。

置いてある聖書だけが、
唯一見ることのできるものだった。

鉄の柵の間から見える月。

夜も更け、布団に横になると、鉄格子が開いた。

複数の影が見える。

もう、いや。

そう思うことも、なくなってきた。

声が枯れるほど叫んだのは、初めの一週間だけだった。

私は冤罪だった。
ただ、証明できるものがなかった。

だから、一年後のある日、突然、釈放された。

「400番、出ろ。」

そう言われたのが、最後だった。


私を迎えにきたのは、お付き合いしていた男性だった。
不思議と名前が出てこない。

彼は私を優しく抱き締めると、
「かえろう」
と、言った。

――いったい、どこへ

私が見上げると、
彼は笑っているのに、涙を流した。

その顔に既視感があった。

涙の先に、見知った冷たい鍵が目に入る。

ふと、気づく。

あぁ、そうか。

地獄はまだ続くのか。

彼は私を愛おしそうに見つめ、また、涙を落とした。
それが、頬を伝う。

何かが、違う。

――それでも、目を逸らせなかった。




素敵な企画に参加させて頂きました。
ありがとうございます。
皆様もよろしければ🌿


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