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【ショート】 消えた王様

―― short story ―—

とある王国に、
それは、それは仲の良い王とお妃がおりました。
とても、穏やかな日々でした。

優しく勇敢な王を、妃は深く愛していました。

ですから、
……本当のことは言えなかったのです。

結婚して3年が経った時、
王国に危機が訪れます。
城下町から少し離れた森に、魔物が現れました。
騎士団を向かわせても、
被害は収まりませんでした。

人々の間に、不安が広がります。

妃は顔を上げませんでした。

――まるで、何かを拒むように。

戦況は悪くなるばかりでした。

王様は、神聖国へ助けを求めようとしました。

「……なりません」

妃は、王にすがりつきました。

「……どうしたのだ。我が妃よ」

さめざめと泣きながら、
妃は王様から離れようとしません。
王様は強く抱きしめました。

「行かないで下さい……」
「人々を救うのだ。」

妃はゆっくりと泣き腫らした目を上げます。

「神聖国はなりません」

「……あなたが」




魔王だから。




その夜、
王は姿を消しました。
妃と、ともに。

王国には、平和が訪れました。

王様はいないまま。

でも、誰も、
そのことを口にしませんでした。


――まるで、最初からいなかったかのように。


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