水と空気が最上級〈山の坊 3行日記〉#1
この山の坊に居を構えて、五日め。まわりはうつくしい屋敷、洗練されたお庭には蝶が舞い、風が草木の香りとともにやってくる。京町暮らしの空間とは大きく異なる、山と川に囲まれた暮らしがある。これから日々、この地で出会うさまざまなことがらを、みなさんとじっくりあじわってみたいと考えている。
保津川畔 山ノ坊──悠久の風情と人情の里
ここ、保津、山ノ坊は、保津川の清流とやわらかな丘陵に抱かれた小さな集落である。古くから川と山に寄り添い、舟運や農業とともに暮らしを営んできた。春には山桜や菜の花がほころび、夏には川面から立ちのぼる霧が谷を包む。秋は紅葉に彩られ、冬は白雪が静かに野を覆う。四季の移ろいはゆるやかで、訪れる者の心を和ませる。散策で出会う地元のひとたちは、いつも親し気に話しかけてくれる。かわしいしぐさのおばあちゃんたちと話すのが朝の楽しみになっている。
山と川にはぐくまれた、歴史と伝統の地域、山の坊
この地には、臨済宗天龍寺派の文覚寺があり、明治の面影を今に残す本堂が佇む。近くには農業用のため池があり、田畑を潤すとともに水鳥の憩いの場となっている。集落はかつて保津川下りの船頭や、川を利用した商いに携わる人々とも縁が深かった。川沿いの道には往時を偲ばせる石仏や道標がひっそりと立ち、旅人や村人を見守ってきたのである。
京都駅からわずか20分、こんな世界があったなんて…
JR京都駅からJR嵯峨野線(山陰本線)なら、快速で20分、二条駅からも15分~20分で駅につく。そこから車で約5分の距離に、この豊かな自然にあふれた山ノ坊がある。観光素材にも恵まれ、セカンドハウスにふさわしい和風建築や、ゲストハウスやホテル、おしゃれなレストランに最適な武家屋敷も残る。庭もエントランスも最上級の風格を備えているのである。
わたしは京都に生まれ育ち、海外でも生活してきたが、いわゆる都市生活ばかりだった。そんなわたしが自然を五感で感じられる山ノ坊に居を構えた。無謀だ、なにを考えているのかと友がいう。しかし、今まで手に入れることができなかった生命のいとなみが、ここにはある。朝に聞く鳥の声や、夕暮れに漂う草いきれが日々の心を静かに整える。新たな土地で、どのように根を張り、生きていくのか。その行く先に、大きな興味と期待を抱いている。

山ノ坊の魅力は、ただ歴史が古いというだけではない。人々が互いに助け合い、行事や祭りを通して結びつきを保ってきた温かな人情にある。日々の営みが自然と溶け合い、過ぎゆく時間さえ柔らかく感じられるのが、この地の真の豊かさである。山ノ坊は、にぎやかな観光地ではない。しかし、川と山が織りなす風景、人と人との距離の近さ、季節の息づかい。それらすべてが、ここを唯一無二のふるさとたらしめているのである。


8月11日、京都・保津川花火大会が開催予定
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