それでも音楽を続ける理由
息子へ。
君がいなくなってから、父さんは一度、音楽と向き合えなくなりました。
若い頃からずっと続けてきた音楽。
父さんにとっては当たり前にそこにあるものだったのに、何もかもがどうでもよく感じてしまった時期がありました。
音を出しても、心に響かない。
ギターを手に取っても、すぐに置いてしまう。
そんな日が続きました。
正直、もうやめてしまってもいいんじゃないかと何度も思いました。
でも、ある時ふと思ったんです。
もし君が大きくなって、父さんのことを知りたいと思ったとき、
何も残っていなかったらどうするんだろうと。
名前を検索しても出てこない。
どんな人間だったのか分からない。
そんな状態にしてしまっていいのかと。
そう考えたとき、父さんは思いました。
何があっても、音楽だけはやめてはいけない。
君がいつか自分の意思で世界を知ろうとしたとき、
父さんにたどり着ける場所を残しておかなければいけない。
音楽は、そのための一つの手段だと思いました。
正直、今でも気持ちが追いつかない時はあります。
でもそれでも、父さんは続けています。
君に見つけてもらうために。
そしてもう一つ。
父さん自身が、父親としてちゃんと生きていくために。
音楽をやめてしまったら、きっと父さんは前に進めなくなる。
そんな気がしたからです。
だから父さんは、これからも音楽を続けます。
君がいつか見つけてくれるその日まで。
