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聞かれたことに答えるだけでは足りない

依頼に返す一言で、その人が案件をどう受け取ったかが、だいたいわかる。

たとえば「明日までにお願いできますか」と聞かれたとき。「承知しました」だけの返事と、「承知しました。夕方に一度、途中経過をお送りします」の返事。中身はどちらも引き受けている。それでも、後者を受け取った側は、その日の残りを別のことに使える。

正しい返事と、安心する返事は違う。

聞かれたことに答えるのが、正しい返事だ。相手が何を心配しているかに答えると、安心する返事になる。「明日までに」と言ってきた人が本当に気にしているのは、たいてい期限そのものではない。間に合わなかったときに、いつそれを知れるか、のほうだ。

広報の仕事をしていると、この差がはっきり出る。記者から問い合わせが来たとき、事実だけを正確に返しても、相手は動けないことがある。締め切りが今日なのか明日なのか。写真が要るのか。担当者に直接聞きたいのか。聞かれていないことのうち、相手が困りそうなところを一つだけ足す。それだけで、次から連絡が来るようになる。

コミュニティでも同じだ。「次の回はいつですか」と聞かれて日付だけ返すのと、日付と一緒に「前回来られなかった方向けに、最初に少し振り返ります」と足すのとでは、読んだあとの気持ちがまるで違う。

足すのは一行でいい。長い返事が丁寧なわけではない。

むしろ、書きすぎると要点がぼやける。相手の不安を一つだけ選んで、そこに触れる。どれを選ぶかに、その人が状況をどれだけ見ているかが出る。

わたし自身、返事が遅れたときほどこれを意識する。遅れた事実を説明するより、いつまでに出せるかを先に書く。相手が知りたいのは、そちらだからだ。

もちろん、外すこともある。相手が気にしていないところに先回りして、話を長くしてしまう。それでも、外したところは次のやりとりで分かる。何を心配していたのかが、相手の返信に書いてあるからだ。一度外せば、その人については次から外さなくなる。

返事の速さは、たしかに信頼になる。ただ、速いだけの返事が続くと、こちらの心配は残ったままになる。速さと安心は、別のものだ。

聞かれたことに答えて、心配していることに一行だけ足す。それだけで、返事は届き方を変える。



山田克基(こにー)
PRアドバイザー・コミュニティデザイナー・ワークショップデザイナー
京都を拠点に、企業・自治体・NPO・スタートアップの「きっかけ創り」に伴走しています。
🔗 燈スタジオ:https://akaristudio.jp 

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