私を構成する9枚
「私を構成するアルバム」をこれまで真剣に考えたことがないことに気付いたので、作ってみた。一応100枚選んだけど全てに文章書いてると時間がかかるので、100枚の中から何となく今の気分で9枚に絞った。

Coldplay 『Parachutes』 (2000)
初めて聴いた年:2007年(中学生)
Coldplayは最初に好きになったアーティストの一つ。出会いは2005年に当時の最新作『X&Y』先行シングル"Speed Of Sound"をラジオで聴いた時で、他のポップソングとは完全に一線を画する壮大さの虜になった。そこから順調にCDを買い揃え始め、本作に出会った。これを聴きたいあまり友達と一緒に帰るのも断り一人でMD(Walkmanが壊れていた)で聴きながら下校する日々。当時大ヒットしていたLinkin Park "What I've Done"やMaroon 5 "Makes Me Wonder"よりも、"We Never Change"のサビの静かなギターの方が深く深く胸に突き刺さった、そんな中学生だった。
Mew 『Frengers』 (2003)
初めて聴いた年:2009年(中学生)
どうやってMewを知ったのかは覚えていないが、これを買いにCDショップに行って無事見つけた時の喜びは覚えている。Mewがあるかどうかちょうど微妙なくらいの品揃えの店だったから。透明感という言葉をそのまま音にしたような別世界。音楽を聴けない三日間の修学旅行は「早く家に帰ってフレンジャーズ聴きてえ」ばっかり思っていた記憶が今でも鮮明にある。そして家に帰って手も洗わず即聴いた"Wherever"(日本盤ボートラ)がもたらした鮮やかな快感。自分が音楽の中毒になっていることを初めて自覚した瞬間だった。
JJ72 『JJ72』 (2000)
初めて聴いた年:2011年(高校生)
高校時代、97年〜01年くらいのUKロックが大好きでAmazonで中古1円CDを買い漁っていた。その中でこれはLongpigsの2nd, Gay Dadの1st, Southの2ndとかと並んで最高の買い物だった。思春期の説明不可のもどかしさや鬱憤を発散させるためにNirvanaとかLinkin Parkとか、あるいはホルモンとかもっとヘヴィなバンドを聴く人も多いだろうが、私にちょうど良かったのはJJ72の陰鬱な激情だった。楽しくない部活、行きたくない塾、帰りたくない家、その鬱憤は夜これを聴きながら自転車でどこまでも走り続けることで少し晴れた。草野マサムネは「大人になった悲しみを忘れてしまうのが怖い」と歌ったが、私は本作を聴けばいつでも「大人になる悲しみ」を抱えていた当時の自分に戻ることが出来る。感性を麻痺させるために大人になったわけじゃない。
My Vitriol 『Finelines』 (2001)
初めて聴いた年:2011年 (高校生)
2011年は頭で理解して聴くようなインディロックが英米ともに流行っていて、全部つまらんな、Vampire Weekendとかマジでクソ退屈だなとかイキっていた頃にAmazonで中古で購入。あまりに直接的なかっこよさと切なさに一瞬で衝撃を受けた。それまで好きで聴いていたOasisとかFoo Fightersとか一瞬でどっかに吹っ飛んだ。今でも90年代ロックの集大成であり最高到達点だと思い込んでいる。これ聴いてないのにオルタナやシューゲイザーを語るような人間のことは根本的に信用できない、と年甲斐もなくイキりたくなるくらいの大傑作。ちなみにサブスクにあるのは2002年のUSミックス盤で音質が悪いので2001年のオリジナル盤CDをリッピングして聴いている。
The Smashing Pumpkins 『Mellon Collie And The Infinite Sadness』 (1995)
初めて聴いた年:2012年 (高校生)
小林克也のBest Hit USAで"Tonight, Tonight"のMVが流れていたので知った。その時は「なんだこの声キモ」とか思っていたのに、なんとなくCD買って全編聴いたら、声とか関係なくその音に圧倒されずにはいられなかった。世界の全ての感情がここにはあると思った。原因不明の怒りに満ち溢れているし、人生は孤独だと気付いてしまうほど悲しいし、なのに世界中で一番自分のことを理解してくれているような気もした。”夢見がちな現実主義者”という自分の性格は本作によって強化されたと本気で思う。CD買って聴いてたら父に「気持ち悪い声だなあ」と言われ、ムッとなってどれだけ良いバンドなのか熱弁した記憶がある。ついこの間まで自分もそう思っていたくせに。
Happyness 『Weird Little Birthday』 (2014)
初めて聴いた年:2015年 (大学生)
大学生の時に初めて聴き、すぐ好きになった。たしかSign Magazineの記事で出会ったと思う。そしてコロナ禍の時にもう一回、もう一段深く虜になった。2014年のロンドンの作品とは思えないほど、90年代前半のアメリカの光景がありありと眼前に広がる。出口の無い郊外に暮らす、怠惰で、自虐的で、諧謔的で、でもどこまでもまっすぐな瞳を持つ奴ら。ゆったりとしたサウンドと狂おしいほど美しいメロディの中に仕込まれた、棘と毒と愛。有能で友好的な人間の底の無い瞳より、斜に構えた人間のまっすぐな瞳を信じて生きていこうと思った大学2年の青臭い春。
R.E.M. 『Automatic For The People』 (1990)
初めて聴いた年:2015年 (大学生)
高校生でベスト盤をレンタルした時は今ひとつはまらなかったが、大学生になってCDレンタル10枚1000円キャンペーンの数合わせとして何となくレンタル。名盤とか言われてたのは知ってたし、当時は60年代〜90年代という大昔の名盤を貪るように聴いていたから(そして60〜70年代のロックは自分に合わないと悟った)。それが今では、父の訃報を聞いて実家に駆けつける時にこれしか聴けなかったほど信頼するアルバムになった。 Peter Buckは「30歳になった時の感覚を表現しようとした作品」と語っている。まさに今30歳の私にとって最もアクチュアリティを持つ作品でもある。
Inc. No World 『As Light As Light』 (2016)
初めて聴いた年:2016年 (大学生)
2016年11月にBandcampで出会って購入。当時は大学もバイトも楽しめず彼女とも別れて暗い日々を送っていた。そこで出会うべくして出会った。暗い気持ちをより暗くすることも無理に明るくすることもない、ただ同じ温度感で寄り添ってくれるだけのアルバム。線の細いアコースティックソウルで基本寂しげだが、人肌の温かみもあって、何よりちょっとオシャレなのが大学生の気持ちに響いた。1stも大好きだけどあっちは果てしなくオシャレなので、こっちの2ndの方が自分には馴染む。
Leave Yourself Alone 『Leave Yourself Alone』 (2023)
初めて聴いた年:2023年 (社会人)
ここまでの8枚がそうであるように、やっぱり学生時代に聴いていたものの方が心には残りやすい。しかしこのアルバムは例外で、社会人になって聴いた全てのアルバムの中で一番感動したし、今日聴き直したけど相変わらず同じレベルの感動を保っている。それどころか、学生時代を共に過ごして色々な思い出がある上の8枚よりもこれを好きになってしまっている自分もいる。全てが完璧。
