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「学年閉鎖まであと1人」の攻防戦。


かれこれ、3週間前くらいになろうか。

我が校は、インフルエンザの嵐に襲われていた。


修学旅行前の2年生は、鼻に粘土を詰めかねないほどの勢いで防御し、

目の前に受験がぶら下がった3年生は、むしろかかるなら「今」とばかりに、最後のクラスマッチで汗と飛沫を飛び散らし、

なんの緊張感もない1年生は、当然の如く、インフルエンザに次々とやられた。



ところで今年のインフルエンザは、我が校で9月にもビッグウェーブを巻き起こしていた。

この時、一学年でもひときわ距離感の近いクラスとして認識されているC組が襲われ、学級閉鎖ライン9名をあっという間に飛び越えて、見事、学級閉鎖を勝ち取った。

インフルに罹る…学級閉鎖になる…

もちろん、インフル生徒はお気の毒ではあるが、元気な生徒は勝利の凱歌をあげる。

当然っちゃ当然である。

元気いっぱいのまま、学校から言われるがままに特別欠席。最高。

家から出てはいけないとはいえ、昨今はオンラインでなんでもできる時代。

1時間目に学校の偉い人たちが寄り集まって学級閉鎖が決定し、その事実を告げられたクラスの勝利の雄叫びよ。

うちはD組として、その雄叫びをリアルタイムで聴いていた。

ガタガタと机を揺らす音、ガヤガヤと荷物を片付ける音と共に、生徒が廊下に出てくる。

お調子者が、D組に向かって親指を立てる。

我がクラス…お通夜的な意気消沈。

わかるよ、わかる。

だって、うちのクラス、全員揃ってたからね。なんだかね、元気なの、うちの子達。

絶対、学級閉鎖とかなさそう。




そうこうしているうちに、インフルエンザの第2波が来た。

11月の終わり、これは大きな嵐であった。

まず、A組が一気にやられた。

休み明けの月曜に突然の12人欠席。

次々入る欠席連絡と、次々入る「インフルでした。」速報。

2時間目の最初にあっさり「9人ライン」を超え、学級閉鎖決定。

翌日にはまたもやC組がやられた。

距離感が近いのか?あるいは誰かの陰謀なんか知らんが、とにかく2度目のインフル閉鎖。



学級閉鎖は基本、3日間である。

A組のみんなが戻ってきて、さあ明日からC組も戻ってきますよ、という日。

B組とD組が一気にやられた。

B組は即座に9人ラインを超えて閉鎖。

我がD組は8人まで確定、残り1人で学級閉鎖ラインだ。



ひと学年4学級の場合、3クラスが学級閉鎖になったら、自動的に学年閉鎖に突入する。

学年閉鎖になると、4日間学年を閉じなきゃなんない。

今まさに、この分水嶺にいるのである。

明日から帰って来れるけど、今日はいないC組。

今日から学級閉鎖になったB組。

そして、あと1人インフル確定の連絡が来たら学年閉鎖になってしまうD組。

発熱でお休みしている生徒の中で、まだ連絡がないのはケータ。

「朝イチで病院に行きます」ってお母さんは言ってたけど。

ケータよ、おまえはインフルだったのかい?



教頭に お伺いを立てる。

「もしかしたら、ケータ君のお母さん、インフル確定の電話をし忘れているかもしれないから、こちらから電話してみましょうか?」

もちろん、わし(及び学年教員)は、学年閉鎖を心から望んでいる。

生徒がたくさん休んでいるのに授業するのは忍びないし、かといって自習にすると最後に授業足りなくなっちゃうし、できればうちらもちょっとゆっくりしたいし。

学年閉鎖にしたい!!!!(学年教員の心の声)



ところが教頭は、静かに首を振った。

「もずく先生…C組をみて。もう、2度も学級閉鎖になっているのよ…この上、学年閉鎖になったら…もう、授業の回復のために、冬休みも春休みもなしよっ!!」

かぁぁぁぁぁ!?

そういうこと??

うちらの「ちょっとゆっくりしたい」っていうささやかな望みよりも、やっぱ、教頭目線そっち??

まあ、そりゃそうだよなあ。



我がD組のケータの母親の電話が、全てを握っている。

昼まで固唾を飲んで電話を待つが、連絡がない。

教頭は、13時に動いた。

「C組の学級閉鎖、明日より解除、登校可能って、一斉メール流すわ。」

「え?教頭先生、ケータ君のインフル連絡、待たなくていいんですか?」

「ま…待たないというより、待つのが怖い。」

正直な教頭である。

確かに、学級閉鎖トータル6日分及び、学年閉鎖4日分の授業補填は冬休みと春休みを使わねば完遂できないほどのボリュームである。

せめて、学年閉鎖を…阻止したい(by教頭)

まあ…そうだよねえ…仕方ないか…デモヤスミタカッタ(by学年教員)




一斉メールを流し、C組の復帰が決まった直後、学校に1本の電話がかかってきた。

ケータ母「センセ〜イ、やっぱりインフルでした〜〜」

「え〜お母さん、それは大変ですねえ〜病院混んでたんですか?今までかかっちゃいましたか?すぐ連絡くれたのかしら?」

母「いいええ〜。9時半にはわかってたんだけど〜。電話するの忘れてて〜。すみません笑」


ああ。

そう。

そうだよね。

うん。学年閉鎖。

ならなくてよかったんだよ。



ちなみにこの日、うちのD組は閉鎖ライン9人を超えたが、翌日に2人復帰することがわかっていたので、結局学級閉鎖にならなかった。

無念。



わしだって、わしだって、学級閉鎖でちょっと楽したかったのになあ。






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