彦川の一歩(#毎週ショートショートnote)
この平野を流れる大きな彦川が私の愛しい川。
「ママ、短冊を書いたよ」
『パパに会えますように。銀河』
「銀河、七夕になったらパパに会えるわ」
私は銀河の短冊を七夕飾りに括りつけた。
7月7日、この平野には毎年大きな台風が上陸する。川に流された肥沃な土砂がこの土地に実りを与えている。
今年も台風の大雨で川の水が溢れ出した。
彦川の水が川辺のそばの銀河を包む。
「久しぶりだね。銀河」
川の水は銀河をそっと抱きしめた。
「パパ!」
銀河はパパの頬に自分の頬をくっつける。
「彦川の一歩は大きすぎるわ」
「はやくふたりに会いたかったんだよ」
銀河を私に預けると、ざぶんと音を立てて、彦川は私にキスをした。
「もう、ずぶ濡れじゃない」
「いつも濡れてるじゃないか。また来年の七夕に会おう。織川」
「また来年ね。パパ」
私は彦川の頬に優しくキスした。
川の水がさーっと引いていく。銀河が大きく手を振った。
台風が過ぎ去った平野では、彦川と織川の間で小さな支流が織川に寄り添っていた。
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#毎週ショートショートnote #七夕の歩幅に参加しています。
田原さん、よろしくお願いします。
(今月は恋愛月間だそうです)
