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私が「再登校を第一の目標にしない」と決めている理由

「もう半年になります。最初のころは『少し休めば戻れる』と思っていたんですけど…」

あるお母さんが、そう話してくださったことがあります。

最初は一時的なものだと思っていた。でも一週間が一ヶ月になり、一ヶ月が半年になった。季節が変わっても、状況は変わらない。

そうなると、心の中にある問いが、少しずつ形を変えていきます。

最初は「いつ戻れるだろう」だった。それが「どうすれば戻せるだろう」になり、やがて「何としてでも戻さなければ」に変わっていく。

その変化は、ごく自然なことだと思います。学校に行けていない現実を目の前にして、「戻ってほしい」と思わない親はほとんどいないでしょう。

ただ、私はカウンセリングの中で、この「再登校」を第一の目標には置いていません。

今日は、その理由についてお話しさせてください。


再登校を否定しているわけではありません

最初にお伝えしておきたいことがあります。
私は、再登校そのものを否定していません。

学校は勉強だけでなく、人との関わりの中で学ぶことが多い場です。

お子さんが自分から「行ってみようかな」と思えるなら、それはとても大切な一歩だと思っています。

ただ、再登校を「最初から、第一の目標」として固定してしまうと、かえって親御さんもお子さんも苦しくなることがある。

そのことを、支援の中で繰り返し見てきました。


理由の一つ目:お子さんの気持ちを飛び越えてしまうこと

多くのお子さんは、学校に行ったほうがいいということを、実はよく分かっています。

分かっているけど、行けない。だから苦しんでいるのです。

その状態のお子さんに「明日は行こうね」「少しずつでも頑張ろう」と繰り返すことは、たとえそれが善意から出た言葉であっても、お子さんの気持ちを飛び越えた関わりになってしまうことがあります。

それが続くと、お子さんの中に「自分のしんどさは分かってもらえない」という感覚が静かに積み重なっていきます。

そしてもう一つ、少し見えにくい問題もあります。

再登校を第一の目標に据えていると、親御さんの日々の関わりが、言葉にはしていなくても「今のあなたではダメだ」「元の状態に戻ってほしい」というメッセージを帯びてしまうことがあるのです。

子どもはそういう空気に、とても敏感です。

本当は「今のあなたのしんどさを、ちゃんと見ているよ」という安心感のほうが、お子さんにとってはずっと必要なのではないでしょうか。


理由の二つ目:「再登校」はゴールではなく、あくまで結果の一つである

不登校の「解決」とは何か。
多くの場合、それは「学校に戻ること」と同義に語られます。

しかし、支援の現場にいると、再登校したあとに再び行けなくなるケースを少なからず目にします。

なぜそうなるのかというと理由はシンプルで、「行けるようになった」ことと、「行ける状態が続く」ことは、まったく別のものだからです。

一時的に頑張って登校できたとしても、その土台にあるもの…つまりお子さん自身の安心感や、家庭の中の空気が整っていなければ、再び同じ場所に戻ってしまいます。

再登校を最初の目標にすることの問題は、「学校に行けたかどうか」が日々の成否の基準になってしまうことです。

行けた日は「よかった」、行けなかった日は「また失敗した」。
この繰り返しは、親御さんにもお子さんにも、想像以上の消耗をもたらします。

だからこそ私は、再登校を「目指すべきゴール」ではなく、「土台が整った結果として訪れるもの」として位置づけています。


では、何を大切にしているのか

再登校を最初の目標にしない代わりに、私が大切にしているのは順番です。

私はこれを、木に例えて考えることがあります。

再登校は、いわば「果実」です。目に見えるし、周囲からも分かりやすい。

でも、果実を実らせようとして肥料や水をどれだけ注いでも、根っこが弱っていたら木はうまく育ちません。

まず根っこが安定していること。
つまり、親御さん自身が少し息をつけること、そして家庭の中に安心があること。

果実は、その上に自然と実っていくものだと、私は考えています。


以前、不登校を経験したご本人が語っていた言葉が、私の心に残っています。

「ある日、お母さんがいつものように声をかけてこなかった。むしろ、お母さん自身がその日は穏やかにしていた。その様子を見て、『あ、お母さん、大丈夫なんだ』と思えた。その数日後、私は部屋を出てみた」

もちろん、すべてがこのように進むわけではありません。

ただ、子どもは親の「安心」をよく見ています。

親御さんが穏やかでいられたとき、子どもは「この家は安全だ」と感じ、少しずつ自分のペースで動き出しはじめることがある。

果実を急いで摘もうとするのではなく、根っこを育てる。

遠回りに見えるかもしれませんが、私はこの順番が、結果的には一番確かな道だと感じています。


この記事を読んでくださったあなたへ

「学校に戻すこと」を一旦横に置くというのは、怖いことかもしれません。

周囲からは「甘やかしている」と言われるかもしれないし、自分自身の中にも「これでいいのだろうか」という不安は残るかもしれません。

ただ、「再登校を目標にしない」ということは、「何もしない」ということではありません。

焦る必要はありません。

ただ、もしこの記事を読み終えたあとに、ほんの少しだけ自分に問いかけてみていただけるなら。

「私はいま、果実を急いで摘もうとしていないだろうか。それとも、根っこに水をやっているだろうか」

答えはすぐに出なくて構いません。その問いを持っているだけで、明日の関わり方が、少しだけ変わるかもしれません。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

この記事では、再登校を第一の目標にすることがかえって親子を追い詰めやすい理由と、まず家庭の安心という「根っこ」を育てることの意味について、お伝えしました。

ただ、実際のご家庭では、

「うちの場合、もう少し背中を押したほうがいいのか」
「今の見守り方で、根っこは育っているのか」
「このまま学校の話を出さないままで大丈夫なのか」

などと、記事だけでは判断しきれない場面も出てくると思います。

私は、不登校対応で大切なのは、再登校を急がせることよりも、まず親御さんが安心して関われる土台を整えることだと考えています。

そのために、声かけや見守り方を整理するための記事を書いています。
無料の判断シートのご案内もしていますので、今の関わり方を一度落ち着いて見直したい方は、こちらから読んでみてください。

不登校の子への関わり方を、親の安心から整理する


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