一冊の絵本が招いた偶然の出会い
リビングに飾り続けている一冊の絵本がある。
それは、本当に偶然の出会いだった。
国語の授業で、自分のおすすめの本を紹介したものが、教室の外に貼り出されていた。
その日、教員の指導にあたる教育センターの職員の方が、校内を巡回していたらしい。
人懐こい息子は、その職員の方に自分から話しかけた。
すると、
「あなたの紹介した本は何?」
と聞かれた。
息子は、
「『番ねずみのヤカちゃん』」
と答えた。
そして、
「どうしてその本がおすすめなの?」
と聞かれた息子は、
「僕と同じだから」
と答えた。
不思議に思った教育センターの職員の方は、なぜそう思うのかを息子に聞いた。
番ネズミのヤカちゃんは、ある人間のお家の片隅で、ひっそり暮らしているネズミ一家の一匹。
兄弟の中で自分だけが声が大きいといつも皆から怒られている。
だけど、ある日そんな大きな声が役に立つ日が来ると言うお話だった。
息子は自分はヤカちゃんに似ているんだ、と話したらしい。
そして、息子から話を聞いた上で担任の先生に、
「少しお時間をいただきたい」
と伝え、保護者の方にも、もしよければ一度連絡をしてほしいと伝えてくださったそうだ。
担任の先生から事の流れを聞いた私は、教育センターに電話を入れた。
そこから近所で発達検査を受けられる病院を紹介してもらい、WISCを受けることになった。
結果は、ワーキングメモリーが著しく低い。
けれど、他の数値がそれほど低いわけではない。
その差が大きいため、できない部分を他の力で補おうとすることで、本人はとても辛い思いをしているのではないか、と説明された。
息子は注意欠陥多動と自閉症スペクトラムだった。
私は息子の診断名がついて、悲しいというより……
正直、ホッとしてしまった。
「やっぱりそうだったんだ」
そんな気持ちだった。
それまで感じていた「どうしてできないんだろう」「どうしてこんなに育てにくいんだろう」という疑問に、初めて答えが見えた気がした。
じゃあ、どうしたらいい?
私に何が出来る?
本人が少しでも生きやすくなるには何をしたらいい?
そこからは、学校内で週に一度の通級を利用したりと、一気に道が広がっていった。
これで、少しずつ息子が過ごしやすくなる。
そう思っていた。
けれど――
クラスの一部の子たちからの嫌がらせが、なくなることはなかった。
そして、保護者の一部から心ないことを言われたこともある。
私自身にも、今でも思い出すと辛くなる記憶がある。
その話は、また今度…
