ショートショート 姉が、いた。
姉貴は、自分の思い通りにならないとすぐ癇癪をおこしていた。
美人で、頭がよくて、スポーツができて、でもワガママだった。
完璧だからこそ許されるワガママだった。
「冷蔵庫のプリン食べないなら、ちょーだい」
「はあ?俺が食いてえから買ってきたの。ムリ」
クッションがとんでくる。
「今、私、食べたいよう。お願い」
上目遣いで、拝んでくる。
はああ。
はああ。
いつもこれ。隣で満足そうにプリンを食べている姉貴を見ながらため息をつく。
俺は、姉貴に弱い。
***
「姉ちゃん、参考書貸して」
部屋に行くと、アイマスクをして、イヤホンしたまま寝ていた。起こすのも悪いから、勝手に本棚から参考書を探す。
本の間から、封筒が落ちてきた。
【富島 翔 様】
姉貴の字だ。
おいおい、今どきラブレター?
見たい。
姉貴を見ると、起きる気配はない。
急いで中身を取り出す。
富島様
はじめまして。
友人に紹介していただきました。
手紙のみでの鑑定と伺いました。
私の生年月日は、1990年12月24日
弟の生年月日は、1994年12月24日
どうしたら、会えるのでしょうか。
「は?」
会える?ってか鑑定ってなんだよ。
封筒の中を確認しても、他には何も入っていない。
「きもっ」
封筒に手紙を戻す。
これ、姉貴に聞いていいんか?
気持ちワリィことしてんなよ。
元にあった場所に手紙を戻す。
寝ている姉貴を起こそうと振り返ると、すぐ近くに姉貴が立っていた。
あまりにビックリしすぎて、そのまま尻もちをついた。
「ビックリさせんなよ、ってか、あの手紙なんだよ」
姉貴は、顔をくしゃっとさせながら、泣き出した。
「そうちゃん、やっと会えた。やっと会えたよ」
「はあ?」
「ごめんね、ずっと謝りたかった。私がプリン食べなければ、そうちゃんが事故に巻き込まれることなんかなかったのに。ごめんね。うわーん。そうちゃーーーん」
……ああ、そういうこと。
よく見りゃ、姉貴、めちゃ年取ってんじゃん。
あー、プリン買いに行った日か。
思い出した。
あれ?俺、今までどこに、いたんだっけ?
姉貴は、子供みたいに泣きじゃくっている。
俺、弱いんだよな。姉貴のそういうとこ。
家族にしか見せない、馬鹿みたいに子供っぽいとこ。
泣いている場合じゃねえぞ。
そうやって泣ける相手を、見つけなよ。
もう、呼び出すなよ。
「姉ちゃん。俺、自慢の姉貴が、いた」
