台風報道で「福井新聞」が異彩を放つ理由 そして気象庁の台風予測精度の真実(米軍やヨーロッパの予報との比較)
はじめに
今回(2026年6月26/27日)、ふたつの台風が、同時期に日本に接近しました)。台風メーカラー(Mekkhala)と台風ヒーゴス(Higos)です。なーんて、ツウぶった書き方をしていますが、日本だけで通用するガラパゴス名称では「台風7号」と「台風8号」で、ダブル台風と呼ばれました(気象庁が番号を用いるのは、アジア名に馴染みのない国内で、聞き間違いや混同を防ぎ、迅速に防災情報を伝えるためという側面もあります)。
台風が発生すると、進路が心配ですよね。台風の進路が気になって、テレビのニュースや、マスコミ各社のウェブサイトに釘付けになる人も少なくないと思いますが、どれもこれも金太郎アメというか、台風予測の内容は各社どこも全く同じで、気象庁の発表予報だけをそのまま発信しているだけです。
そんな中で、日本のマスコミではただ一つ、台風報道で異彩を放つ報道をしている地方紙があります。それは、福井県で発行されている福井新聞です。同社のオンラインサイト(ウェブサイト)では、「台風○○号…気象庁の予想進路、米軍・ヨーロッパの見方」というタイトルで、気象庁の発表予報以外に、米軍JTWCと欧州ECMWFの予報を併記して台風情報を報じています。これは素晴らしい独自の報道姿勢だと高く評価できます。
今回は
・そもそも米軍JTWCと欧州ECMWFとは何か
・米軍JTWCと欧州ECMWFの台風予報はどこで見ることができるか
・マスコミ各社が米軍JTWCと欧州ECMWFの台風予報を報じない理由
・米軍JTWCと欧州ECMWF以外にも存在する多様な台風予測
・日本気象庁の台風予測の精度の真実
の順に徹底解説いたします。
(参考)台風の国際名称(アジア名)
台風メーカラーや台風ヒーゴスといった、世界で通用するアジア名が何たるかは、別の記事で紹介しています。興味があれば、こちらもご覧ください。
ちなみに、メーカラー(Mekkhala)はタイが提案した名前で、伝説上の「雷の天使」を意味します。ヒーゴス(Higos)はアメリカが提案した名前で、チャモロ語の「いちじく」を意味します。名は実をあらわすといいますが、台風7号メーカラーは、激しい雷雨をもたらす予報です。
米軍JTWCと欧州ECMWFについて
(1)JTWC(合同台風警報センター)とは
太平洋アジア地域の軍事資産(基地や艦船)を守るために、台風やサイクロンの予報を行う米軍の軍事機関です。アメリカ海軍と空軍が共同で運営し、ハワイの真珠湾に常設されています。
JTWCでは日常的な天気予報業務は行っていませんが、台風が発生しない時期であっても、台風の「タネ(たまご)」の動向に常時目を光らせており、数日先までの熱帯低気圧の進路予測を行うほか、津波アラートも担当しているようです。

なお、JTWC自体は、独自の観測体制や数値予測モデル(スパコン)を有しておらず、米国のNOAAや日本気象庁など他機関の一次観測データやスパコンが弾き出した数値モデルを、プロの目で総合的に判断して台風の進路予測を行っているのです。
JTWCの台風予測は、精度が高いことが知られているので、JTWCの予測をウォッチしている愛好家が日本にも少なからず存在します。ただ、JTWCは日本人のためにサービス提供しているのではなく、あくまでも横須賀、嘉手納、岩国、佐世保などの米軍基地を守るための情報発信であり、反射的に日本人もメリットを享受している、というのが実情です。
(2)ECMWF(ヨーロッパ中期予報センター)とは
ヨーロッパ各国が共同で出資・設立した政府間の国際研究機関で、世界最高レベルの気象予測モデルを用いた中長期的な地球規模の気象予報を行っています。一般的な気象現象から台風(熱帯低気圧)の発生予測まで幅広くカバーし、とりわけ台風予測に関しては、スパコンと高度なAIモデルを活用し、約10日先までの中期予測において「世界一の予測精度」と評価されています。

ここは勘違いされる点ですが、ECMWFが発信する台風情報は、観測データをもとにスーパーコンピュータで複数のシミュレーションにより自動生成された「数値予報モデル(計算値)」そのものであり、人間による調整は一切加えられていません。いわば、スパコンが弾き出した「計算結果(生データ)」の状態です。生データの作成までをECMWFが担い、最終的な気象予報は、各国の気象機関の予報官が独自の判断を加味して進路や予報円を決定・公表する、という役割分担になっています。
米軍JTWCと欧州ECMWFの台風予測を見る方法
JTWCやECMWFが、どのような台風予測を出しているのか、そしてそれらの予測が、日本の気象庁の予測と一致しているか否か、気になりますよね。これらの機関の台風予報を見る方法をいくつか紹介します。
①JTWCやECMWFの公式サイト
いずれも英語のサイトですが、公開されている図を見るだけで直感的に理解できます。
JTWCについては、Joint Typhoon Warning Centerのサイトのトップページにある「TC Warning Graphic」というリンクをクリックすると、日本でもよく見かける「赤い予報円と予測進路の線」が描かれた画像が表示されます。時間は「Z(協定世界時)」で表記されており、表示時間に9時間を足すと日本時間になります。
https://www.metoc.navy.mil/jtwc/jtwc.html
ECMWFについては、「ECMWF Charts」のサイトに入り、検索窓に「Typhoon」と入力するとシミュレーション図が見つかります。
https://charts.ecmwf.int
②Windy
Windyはチェコ発祥の気象情報サービスで、ウェブ上で、世界中の風、雨、気温、波、気圧などの気象データをアニメーションで直感的に確認できます。同様の気象情報サービスを発信している会社は世界中に多数ありますが、Windyの情報が質・量ともに最も充実していると定評があります。
Windy自体は、独自に台風の予測を出しているのではなく、世界の公的気象機関が公表しているデータを可視化して提供するサービスですが、複数の機関の進路予測をビジュアルで比較することができます。

台風発生時には、Windyのトップ画面に「ハリケーントラッカー」というメニューが登場するので、そこをクリックすると台風の目が地図上に現れます。ECMWF、GFS、ICON、MSMなど複数の機関名が提示されますので、それぞれクリックすると、各機関の予測を見ることができます。
③福井新聞のオンラインサイト
日本のマスコミでは、海外の気象機関の予測が報じられることはほとんどありません。その唯一の例外が、福井県内で発行される福井新聞です。新聞本紙にも情報が掲載されているかどうかは分かりませんが、台風が発生すると、同社のウェブサイト(福井新聞ONLINE)に、「【特集】台風の進路予報」という専用枠が出ています。

「台風○○号…気象庁の予想進路、米軍・ヨーロッパの見方」というタイトルの記事の中では、気象庁の予想進路とともに、米軍JTWCとECMWFの予測図が併記され、両者の予測についてのコメントが添えられています。
この記事の中には、Windyが提供するECMWFのリアルタイムマップが埋め込まれているので、わざわざWindyのウェブサイトにアクセスしなくても、ECMWFの最新の予測を目にすることができます。
また、世界で唯一のガラパゴスである数字表記だけでなく、グローバルスタンダードの固有名詞(アジア名)の解説が最後に添えられている点も好感が持てます。
④その他の情報発信主体
その他、研究機関や民間気象会社、それに気象予報士など個人がSNS発信などの形で、海外の気象関係機関の予測情報を独自にウェブサイト掲載している例があります。例えば、GPV Weatherの「各国モデルの台風進路予想 」、応用気象エンジニアリングの「気象モデル比較」などが挙げられます。
報道機関がJTWCやECMWFの予測を報じない理由
(1)気象業務法による法規制
上述の福井新聞を除き、日本のマスコミにおいて、米軍やヨーロッパの予測が報じられることはありません。その理由は、法的規制があるからです。具体的に見てみましょう。
最近では、様々な民間気象会社が独自の気象予報サービス業務を行っていますが、気象業務法という法律の第17条の規定により、気象庁以外の者が、一般向けに気象の「予報業務」を行う場合は、気象庁長官の許可を得る必要があります。さらに、実際の気象の予想は国家資格を持つ「気象予報士」に行わせる義務があります。気象庁の許可を得ずに、独自の天気予報を継続して発表した場合には、罰則が適用されます。
予報の許可を得ている民間気象会社であっても、気象、地象、津波、高潮、波浪及び洪水の警報を独自に発令することは、法律の第23条で禁止されています。警報を出せるのは気象庁だけなのです。
(2)気象庁による台風情報の独占・統制の根拠
このように、法律により台風予報を気象庁が独占し他者を排除することの根拠として指摘されるのが、「情報の混乱」による住民の避難遅れを防ぐことです。例えば、気象庁が「日本(例えば九州)上陸」と予測を出しているのに、他の機関が「日本には上陸しない」と予測し、マスコミなどが両方を並列で報道すると、住民が「自分の地域には来ないから安心だ」と判断し、避難が遅れる(正常性バイアスが働く)リスクが高まります。
防災など危機管理対応において、住民がどの情報を信じるべきか迷うことは、被害の拡大の悲劇をもたらす危険なことがらです。このような情報の混乱を抑止する、という社会防衛論が他機関による情報発信を禁じ、気象庁だけに情報発信を独占させている理由とされています。 気象庁による台風情報の独占・統制は、情報の混乱を抑止し、国民の生命・安全を守るという観点から正当化されてきましたが、一方で、国民の知る権利や表現の自由を侵害しているのではないか、といった批判も成り立ちます。
インターネットが普及し、世界中の情報をいつでも・どこでも・誰でも入手可能になっている時代にあって、海外の情報をかたくなにシャットダウンする姿勢は、「民は之に由らしむべし、之を知らしむべからず」という傲慢や独善を感じざるを得ません。
JTWCやECMWFが「九州に上陸の可能性が高い」という予測を出しているのに、日本気象庁が「日本には上陸しない」と予報を出し、結果的に九州に台風が上陸して甚大な被害が発生してしまう事態も想定されます。万一このような事態に陥れば誰が責任をとるのでしょうかね。
(3)報道機関などの横並び自粛の実態
上述のとおり、日本では気象業務法により、気象予報業務は許可制とされており、気象庁以外の者が、気象関係の警報を出すことは禁じられています。実際のところ、日本のマスコミや民間気象会社が、JTWCやECMWFの予測を「独自の確定的な予報」としてそのまま一般国民向けに発信することは、気象業務法第23条に抵触してしまう可能性が否定できません。
しかしながら、確定的な予報ではなく、ひとつのシミュレーションであることを明示した上で、参考情報として、JTWCやECMWFの情報を発信することまで、気象業務法に抵触することはないと考えられます。にもかかわらず、マスコミ各社が、揃いに揃って、台風の進路に関してJTWCやECMWFの情報に一切言及しないのは、過度な自粛行為だと言わざるを得ません。
台風報道に関するマスコミの自粛姿勢の背景には、気象庁に対する遠慮(忖度)があると考えられます。全国紙や通信社、民放在京キー局は、気象庁の記者クラブに担当記者を常駐させていますが、気象庁の機嫌を損ね情報の確保に支障が生じることを懸念しているのでしょう。
多くの地方紙や地方テレビ局は、自社に専門の気象班を置く余力はなく、通信社や気象庁から発信される一律の情報をそのまま報じているのが実情です。このようなマスコミの横並びの中で、福井新聞だけがJTWCやECMWFの情報も報じるという独自姿勢は敬服に値します。
ちなみに、国内最大手の民間気象予報会社ウェザーニューズは、ちょっと前までは、比較的柔軟にJTWCやECMWFの情報もウェブサイトで発信していたように記憶しています。だけど最近は、無料公開の範囲では、JTWCやECMWFの情報に言及するのは止めてしまい、有料会員に限定して情報発信するようにしているようです。
海外機関の台風情報発信を有料会員に限定する理由を、ウェザーニューズは、気象業務法への抵触のおそれを挙げています。ただ、上述のとおり、あまり説得力がありません。レジャー施設などが飲食物の持ち込みを禁止する理由として、ある訳のない「保健所の指導」をあげることがあるのと同様で、単に有料会員獲得という営業上の理由だと思われます。
台風予測の多様性
ここまで、台風の進路予測には、日本の気象庁が公表しているもの以外にも、米軍のJTWCや欧州の気象機関ECMWFによる予測がよく知られていることを説明してきました。実際には、これらの機関以外にも、世界の様々な機関が、台風情報を発信しています。ところで、諸機関が発信する台風情報は、大きく2つに大別されます。さらに最近では、AI予測も登場しています。
(1)数値予測モデル型と発表予報型の違い
世の中にある台風予測は、大きく分けて「数値予測モデル」と「発表予報」の2種類があります。
「数値予測モデル(計算結果・生データ)」
ECMWFのデータなどがこれに当たります。地球全体の空気や海の動きをスパコンを用いて物理方程式で計算して得られたもので、人間の手が一切加わっていない生データです。米国のNOAA/GFS、日本気象庁のJMA/GSM、英国気象庁のUKMO/UM、ドイツ気象庁のDWD/ICON、カナダ気象センターのCMC/GEMなども同様です。これらは、いわば「スパコンが出した計算結果」そのものです。
「発表予報(プロによる最終結論)」
一方、気象庁の発表予報や、米軍のJTWCは、自国のスパコンデータや他国の生データも見比べた上で、過去の経験なども踏まえ、予報官がプロの目で判断・補正し、一本の進路予測を導いたものです。こちらは、「計算結果を見たプロの予報官が、経験を加えて出した最終結論」といえます。
このように、気象庁やJTWCの発表予報と、ECMWFの予測とは、全く異質なものであり、専門家に言わせれば、素人がツウぶって3つの予測を単純に併置して眺めるのは愚の骨頂のようです。
(2)AI気象モデル
従来の公的気象機関による数値予測モデルは、現在の気温や気圧、風などのデータを元に、複雑な物理方程式により演算して得られたもので、計算量が膨大なため、結果が出るまでにかなりの時間を要します。
それに対し、最新のAIモデルでは、過去数十年間の膨大な気象データを学習しており、パターン認識により、複雑な物理計算を行うことなく、わずか数分程度の圧倒的なスピードで台風予測を弾き出します。
台風(熱帯低気圧)のAI予測は、ITジャイアントがしのぎを削っている領域ですが、GoogleのAI気象モデル、HuaweiのPangu-Weather、米国海洋気象庁(NOAA)のAIGFS、日本のウェザーニューズのAIが、いずれも高い精度での予測に成功しているようです。
ちなみにウェザーニューズは、AIを駆使した自社独自の台風進路予測が2025年は、気象庁や米軍JTWCを上回り、予測精度No.1を達成したことを誇らしげに宣言しています。
日本気象庁の台風進路予測の精度は高いのか、低いのか
ここまで、世界の様々な機関が、台風情報を発信していることを見てきました。では、日本気象庁の台風予測の精度は、他機関と比べて高いのか、それとも低いのか、はなはだ気になりますよね。
ウェブで検索してみると、諸説入り乱れており、「日本の気象庁の台風進路予測レベルは、欧州ECMWFと比べると精度が低い」とする意見がある一方で、「どの機関の予測も、さほどレベルは変わらない」、さらには「気象庁の予報はトップクラス」とするまで、様々です。
これらの主張の根拠が気になって、気象庁の公表データを調べてみました。そうすると、次のような事実が判明しました。
(1) 数値予報モデルの精度
まず、2020年9月までのデータが載っている資料によれば、「全球モデルの北半球における5日予報」については、「各センターとも年々着実に予測精度が向上している。気象庁もそれに追随しているが、ECMWFの精度が優れており、UKMOがそれに次ぐ状況である。」として、ECMWFなどと比べると気象庁の精度が劣ることを自認しています。
また、「北西太平洋領域72時間予報」について、12の数値予報モデルを検証し、「気象庁は1996年以降、世界トップクラスの精度を維持しているが、近年はECMWFを中心に引き離されている。」と記載し、やはりECMWFにはかなわないことを自白しています。
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nwpkaisetu/53/1_7_2.pdf
一方で、令和4年12月12日付けの予報官、太田行哉氏の署名入りのパワポ資料によると、「進路予測誤差経年変化(T-72)」の72時間予報のグラフを見ると、依然として、日本の気象庁の成績は芳しくないことが見て取れます。
他方で、次のページに載っている「進路予測誤差経年変化(T+0)」については、「解析誤差については、気象庁がここ数年1位」と記載があります。「1位」と誇らしく書いていますが、これはあくまでも、「台風が今どこにいるか」を正確に捉える初期解析のことであって、いわゆる進路予測とは言い難いデータです。
https://pfi.kishou.go.jp/Presen2022/2_1_ota.pdf
結局のところ、5日予報や72時間予報については、日本の気象庁はECMWFなどの予報レベルに劣後しているのが実態のようです。ただし、ここでの比較は、あくまでも気象庁の数値予報モデルとECMWFのそれを比較したものであって、発表予報の誤差ではないことに留意が必要です。
(2)発表予報の精度
他方で、数値予報モデルなどを踏まえ、人が最終判断する発表予報に関しては、日本の気象庁は、「台風予報の精度検証結果」をホームページに掲載しています。これを見ると、台風進路予報(中心位置の予報)は経年的に精度が改善していることが伺えます。一方で、台風強度予報(中心気圧・最大風速の予報)は精度向上が見られないことを認めています。
https://www.data.jma.go.jp/typhoon/verification/index.html
ちなみに、発表予報について、気象庁のホームページには国際比較は示されていませんが、気象庁とJTWCの精度比較については、中国の研究者グループが2017年に発表した興味深い論文があります。
https://journals.ametsoc.org/view/journals/wefo/32/2/waf-d-16-0043_1.xml
この論文は、北西太平洋における台風進路予報の誤差を定量的に評価したもので、全体として、JTWCが最も精度が高く、中国の気象庁CMAは顕著な改善が見られることが示されています。アブストラクトには、日本の気象庁の発表予報の成績について言及はありませんが、本文中では、西太平洋の低緯度(フィリピン・東シナ海)ではJTWCが移動速度・位置予測で優位性を示し、中緯度(日本近海)では高密度観測データや日本周辺の環境解析に優れた気象庁(JMA)が高い精度を発揮することが示されています。
また、2021年の姉妹論文では、2005~2018年の台風の強度予報について検証されています。24~48時間先の強度予測は日本気象庁よりもJTWCの精度が高く、台風の急激な弱体化(RW)の予測は逆に日本気象庁の方がレベルが高いとのことです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jmsj/99/1/99_2021-008/_pdf/-char/en
常識的に考えても、日本近海や陸地に近づくほど、地域のレーダーやアメダスなどの詳細な観測網を直接組み込んでいる気象庁の予測モデルが力を発揮し、進路・弱体化の予測において長けていることは、さもありなんですね。
$$
\begin{array}{l:l:l}
項目 & 日本気象庁 & 米軍JTWC \\
\hline
進路予報の精度 & 日本周辺の観測データが多く、高い精度を誇る。 & グローバルな観測網を使用し、気象庁と同等レベルの精度。 \\
対象ユーザー & 一般市民の防災対応や船舶向け。 & 米軍の軍事行動の安全確保。 \\
予報の更新 & 1日最大4回(原則6時間ごと)。 & 1日最大4回(原則6時間ごと)。 \\
発表する中心気圧 & 海面更正気圧(一般的な天気図で使われる気圧)を採用。 & MSLP(海上気圧)等を採用。気象庁より低めの数値傾向。 \\
最大風速の基準 & 国際的な基準である10分間平均の最大風速。 & 1分間平均の最大風速(気象庁より強く出る)。単位はノット。 \\
\hline
\end{array}
$$
ちょっと細かいですが、気象庁の数値予測モデルは、地球全体ではGSM(全球モデル)を用いており、こちらは 約13 kmの格子(メッシュ)で解析するのに対し、日本周辺域ではMSM(メソモデル)を併用しています。こちらは 解析の幅が5 kmと精緻であり、その分、予測の精度が高まるという事情もあるようです。
結局のところ、台風が日本に接近する前のはるか南の海上に留まっている段階では、JTWCにやや優位性があり、日本に近づけば近づくほど、気象庁の予報の精度が増していくということで、基本的には気象庁の情報を信用して問題は無さそうです。
おわりに
今回は、台風の進路予測について、
・気象庁の発表予報以外にも、米軍JTWCや欧州ECMWFのような精度が高い予測が存在していること、
・それにもかかわらず、日本国内のテレビや新聞社の公式サイトで発信される情報が、気象庁の情報だけに限られていること、
・そのような中で、福井県の地方紙である福井新聞だけは、JTWCやECMWFの予測も紹介し異彩を放っていること、
を記事の前半で紹介しました。
記事の後半ではさらに、
・日本気象庁の発表予報、米軍JTWC、欧州ECMWF以外にも、世界の様々な気象機関が独自に台風進路予測を発表しており、これらは数値予測モデル型と発表予報型に大別されること、
・最近ではAIを用いた台風予測が台頭し、短時間で高精度の予測結果を実現していること、
に触れた上で、日本気象庁の台風予測の精度の高さを検証しました。
最終的な結論として、
・1週間先の長期予測は、欧州ECMWFが最も優れており、残念ながら日本気象庁のGSMはそれに及ばないこと、
・予報官が判断する発表予報では、米軍JTWCと日本気象庁の成績は互角(JTWCがやや優位)であるものの、日本に近づくほど日本気象庁が強みを発揮する、
ということを説明しました。
今では、スマホ1つで欧州ECMWFや米軍JTWCの予測を誰もが簡単にチェックできる時代ですが、日本に最接近中の段階においては、日本気象庁の予報を信頼して間違いはなさそうです。
だけど、国民の「知る権利」や「知りたい欲求」に応えるべく、マスコミ各社においては、気象庁を過度に忖度することなく、福井新聞のように、欧州ECMWFや米軍JTWCの予測も参考情報として発信することが望まれます。そしてそうなれば、結果として、気象庁の予測精度の更なる向上につながっていくことが期待されます。
#台風進路予想
#米軍台風情報
#JTWC
#ECMWF
#気象庁
#Windy
#福井新聞
#気象業務法
#AI台風予測
#防災
