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消された一家「北九州・連続監禁殺人事件」

サイコパス診断は不要

この本は一気に読める。
この本を読みながら笑える。
そして、この本を読んだ直後に
焼肉を食べられる。

もし、それができるのなら、
あなたは、
サイコパスの才能があるのかもしれない。

サイコパス診断

そう感じるほど、この事件は凄惨だ。
数々の犯罪ノンフィクションを
読んできた私でも、
何度も本を閉じ、休憩を挟みながら読み進めた。

理由は単純。
内容が重すぎるからだ。

下手に想像できてしまう。
文章の先にある光景が頭に浮かんでしまう。
そのため、精神的な負担が大きく、
読み終えるまでにかなりの時間がかかった。

様々な見方

北九州・連続監禁殺人事件は、
関係者の多くが死亡していることもあり、
書籍によって細かな時系列や描写に違いがある。

その中でも、今回の本をお勧めする理由は
「読みやすさ」にある。
もちろん、事件そのものが衝撃的なので、
内容が軽いという意味ではない。

この本は、
凄惨な事件を必要以上に刺激的に描くことなく、
起きた出来事を淡々と積み重ねていく。

途中、筆者自身の考察や意見も入る。
しかし基本となるのは、
事実を追っていく構成だ。
私はその様な本が好きだ。
何故なら、その方が
事件の異常性を冷静に理解できると思うからだ。

主な人物

事件発生から
20年以上が経過しているため、
詳しく知らない人もいると思う。
まずは主な人物を整理したい。

松永太 と 緒方純子

・松永太
事件の中心人物。
巧みな話術や暴力によって周囲を支配し、
監禁・殺人を主導したとされる。

・緒方純子
松永太と内縁関係にあった女性。
松永の支配下で事件に関与した。

・元不動産会社勤務男性A
監禁事件に巻き込まれ、
最初に死亡した被害者。

・少女B(Aの娘)
監禁状態から逃れ、警察に助けを求めたことで
事件発覚のきっかけとなった人物。

・緒方純子の両親・妹一家
松永による支配の対象となり、
事件の被害者となった。

時系列

続いて事件の流れを整理する。
被害者が多く、煩雑な事件の為
大まかな流れとして紹介する。

①1982年頃
松永太と緒方純子が交際開始。
②1992年10月
松永の会社が破綻。詐欺容疑で指名手配。
松永と緒方が逃走。
その後、不動産会社勤務男性Aと接触。
③1994年頃
Aが「競馬をコンピューターで当てられる
凄い人物」として松永を周囲に紹介。
④1994年10月
Aの長女も含め、松永・緒方・Aらが同居。
⑤1996年2月
A死亡。
⑥1997年
緒方一家が呼び寄せられ、
同居・監禁状態になる。
⑦1997年末〜1998年
緒方の家族らが次々と死亡。
父→母→妹→妹→甥→姪
(死亡順)
⑧2002年1月
少女Bが逃走するが、再び松永側に戻される。
⑨2002年3月
少女Bが再度逃走。
警察へ助けを求め、事件が発覚。
⑩2002年10月
緒方純子が自供。
⑪2005年
一審判決。
松永太・緒方純子ともに死刑判決。
⑫2007年
二審で緒方純子は無期懲役へ減刑。
⑬2011年
最高裁で松永太の死刑確定。

大まかな時系列

松永は実に色々な方法で虐待し、
人としての尊厳を傷つけた。
詳細は省略するが
(是非本で自分の目で読んで欲しい)
有名なのは「通電」だ。
人に電気を流すのだ。
それは激痛で気を失うほどだという。
被害者によっては、通電のやり過ぎで
指が引っ付いたり
骨が見えたりしてたとの事。

疑問「何故逃げない?」

恐らく大半の人は思うだろう。
「何故逃げない?」
監禁はされていたが、松永は外出もしていた。
被害者全員で協力をすれば、
その間に脱出することも可能だったはずだ。

そこには、単純な恐怖だけでは説明できない、
長期間にわたる心理的支配があった。

人は最初から
逃げられない状態になるわけではない。
少しずつ自由を奪われ、
判断力を削られ、
周囲との関係を壊されていく。

「逃げれば助かる」ではなく、
「逃げたらもっと酷いことになる」
「自分が悪いのかもしれない」
そう思わされる状態に追い込まれていく。

さらに、
家族同士の信頼関係まで壊されることで、
本来なら助け合うはずの相手さえ
信用できなくなる。

誰も信じられない・・・・

外から見ると理解しづらい行動だが、
極限状態に置かれた人間は、
遠い未来の自由よりも、
目の前の危機を避けて
生き延びることを優先してしまう。

この事件の恐ろしさは、
単に人の身体を閉じ込めたことではない。
人の心にある「逃げる」という選択肢まで
奪ったことだ。

少しでも興味がある方は、
ぜひ本書を読んでみてほしい。

恐らく、想像している以上に重く、苦しく、
現実とは思えない出来事が
そこには描かれている。

ただ、忘れてはいけない。
これはフィクションではない。

わずか20年ほど前に実際に起きた事件であり、
そこには被害に遭った人たちがいた。

そして、松永と出会うまでは、
それぞれに普通の日常を
送っていた人たちがいた。

せめて、この事件を生き延びた方々が、
残された人生を少しでも穏やかに
過ごせることを願うばかりだ。

【松永に関わり、死亡した人物】
※判明しているもの
・元不動産会社勤務 A
・緒方純子の母
・緒方純子の父
・緒方純子の妹
・緒方純子の妹夫
・緒方純子の姪(妹夫婦の子)
・緒方純子の甥(妹夫婦の子)
・松永と交際していた女性(当時32歳)
・上記女性の子供(当時1歳)

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