【四国108箇所歩き遍路3(伊予)】#07 別格7番金山出石寺(2025年9月)
これは2015年12月~2025年11月にかけて、順打ち、全7回の区切り打ちで結願した四国108箇所歩き遍路の記録である。
別格7番金山出石寺は、6年前阿波と土佐の二国を打ち終えて後半の計画を作ろうとしたときに情報がほとんどなく、最適ルートと所要時間がわからなくて苦労したいくつかのお寺のうちのひとつだった。
今回6回目の区切り打ちを再開するにあたり再度調べると、歩き遍路サイトと登山サイトでいくつかの山行記録を見つけることができたが、標高812m、八十八箇所の遍路道から往復で20~25km。108箇所で最も難関のお寺だった。
考えた結果、ふもとの遍路宿、ときわ旅館さんに連泊して、最適ルートをレクチャーいただいてから向かうことにした。
主なルートは、
大洲城(西大洲のコメリ)の辺りからほぼ車道を登る阿蔵・高山ルート
伊予平野駅から登る地蔵ルート
同じく伊予平野駅から最も西を登る瀬田ルート
の3つ。3ルート共、最後の登りは同じ出石寺道。
前日チェックインしてすぐ、宿のご主人から3ルートの詳細図をいただいた。かつてのお奨めは阿蔵・高山ルートで、距離が長くても山道より舗装道がよいという人は今でもこちらを歩かれるとのことだった。
そして、いまのお奨めは、距離が最短の山道、地蔵道とのことだった。
ときわ旅館から登るかたの多くはお宿から歩いて往復し、なかには、そのまま内子まで行くかたもいるとのことだったが、篠山詣でで懲りたわたしは、そこまでする気はなかった。そもそも、札所間をひと筆書きしているので、伊予平野駅まで歩く必要もなかった。
地蔵道についてたくさんの写真で説明していただき、朝JR伊予平野駅まで列車で移動してから、別格7番金山出石寺へと歩き始めた。(7:10)

方向音痴のわたしは、まずJR伊予平野駅から登山口まで辿り着くまでがひと苦労だった。宿の冷凍庫にペットボトル2本を忘れてきてしまい、自販機を探して回り道をして方向感覚がなくなり、何度もコンパスを確認しながら、時に地元のかたに尋ねて、川沿いの県道234号線を西へ進んだ。
このときは未だHenroHelperの存在を知らず、googlemapがなぜか使えなかったので、県道234号線という表示をみつけるまでまったく安心できなかった。

古宮第1橋、古宮第2橋を越えてようやく、ヘアピンにカーブする道の向こうに、昨日宿のご主人に写真で教えてもらった登山道入口をみつけることができたときはほっとした。(8:01)

地蔵ルートは、最近のYAMAP山行記録に、拍子抜けするくらい整備された綺麗な道と書いていらしたかたがいたが、ほんとうにその通りだった。
ただ、蜘蛛の巣が凄く、想像を絶するレベルだった。

どう凄いかと言うと、道々ほぼ2m毎に巣が張られおり、陽が当たれば糸が光るので事前に気がつくのだが、陽が当たらないとまったくわからない。
そして、山道にはほとんど陽が入らない。
ということで、本格的な山道になってすぐに、2回連続で蜘蛛の巣に顔を突っ込んでしまった。
幸い菅笠にフェイスカバーもしていたので、口に入ることはなかったのだが、それでもすぐ目の前に蜘蛛の糸が絡まった獲物がぶら下がってきて、ひとり山の中で奇声をあげて払いのけた。それが2回。
さすがに3回目はないように、目を凝らして慎重に進んだが、どんなに目を凝らしても、見えない。
3回目どころかその後も続けてひっかかったので、ついに、金剛杖とダブル持ちのトレッキングポールの2本を右手と左手でそれぞれ前に突き出し、上下にブンブン振りながら進むことにした。
金剛杖を蜘蛛の巣破りの道具にすることについては躊躇いもあったが、そのうちほんとうに蜘蛛の獲物を食べてしまうと思ったので、背に腹は代えられなかった。
しかし、一向に蜘蛛の巣がなくなることはなく、広い車道に出てもなお、たまに長~い蜘蛛の巣が規制線のように張られているのには閉口した。
後日出会った数少ない別格参りの人たちもみな出石山の蜘蛛の巣が酷かったという話をしていて、中には、蜘蛛の巣に耐えられず途中から車道を歩いたという人もいた。
とは言え、道自体が、まだ9月だというのに下草も少なくとても歩きやすく、登山道に入れば遍路標識も多く、さして迷うことはなかった。

空身ということもあり、休憩もせずに時折ごみを拾って草刈りをして「おへんろさん休憩所」という小さい札のある地点まで到達した。(9:53)

遍路道は右へ

ここには地元の中学生たちが小さなベンチを設置してくれている。
昨日お宿のご主人から、ベンチのある車道に出たら必ず右へ行くよう念押しされていた場所だった。左に行くと瀬田道につながって大回りをすることになるとのことだった。
ところが、わたしときたら、ベンチが道の左側にあったので、ちょっと腰掛けてみたのち、左へ下ってしまったのである。
何を隠そう、わたしは下りに弱い。
上りが苦手なので、登っていても、下りがあるとすぐ下りたくなる。
ベンチに腰掛けたままでも少し右の方を向けば、数m先のへんろ道の札が見えたはずなのだが、下りに弱いわたしはまったく目に入らなかった。
そして、この車道になって蜘蛛の巣がなくなったこともあり、わたしは元気一杯どんどん下ってゆき、途中で誤りに気づいたときには、既に15分以上経過しており、慌てて上り返したが30分もロスしてしまったのである。

左に登る遍路道がある
ミスルートは体力と気力をも奪う。その後はさすがに周囲をよく見ながら歩いたので間違えることはなかったが、伊予平野駅出発から山門の石段下まで5時間半もかかってしまった。(12:45)
11時過ぎには着くつもりにしていたので、かなりショックだった。
石段を一気に駆け上がって出石寺の山門をくぐると、広い境内を、違う世界に来たのかと錯覚するほど大量のアキアカネ(赤とんぼ)が群舞していた。
息をすると口の中に入ってきそうなくらいたくさんのとんぼだったが、わたしが境内に足を踏み入れると、彼らはわたしを遠巻きにすーっと散らばった。

左から手水舎、大師堂、納経所

本来であれば、上りで予定より1時間半も多くかかったのだから、参拝を巻いて、さっさと下山するのが普通の人間だろう。
しかし、ここでわたしはすっかり思考が停止してしまった。隅々まで掃き清められた気持ちの良いお寺でいつもどおり参拝し、お納経をいただき、さらには山門そばのベンチでお昼を食べ、1時間も長居をして、ようやく下山スイッチを入れた。
急がなくてはいけないことはわかっていた。
だから、もういちど最短コースの地蔵道を下ることも一瞬考えたが、蜘蛛の巣のことを思った。
7割方壊して登ったが、くぐれるところはできる限り巣を壊さずにくぐって来てしまった。
わたしの後に歩いて登ってきた人は一人しかおらず、とっくに下っていた。
その人が地蔵道で、かつ、蜘蛛の巣をすべてやっつけてくれていればよいが、そうでない場合には、下りでまた、残してきた蜘蛛の巣と格闘することになる。
それはもう御免。
ということで、出石寺道を2.5km下ったあとは、車道の高山道を下ることにした。(13:48)
この道は、退屈な長い車道だった。車道なので、歩きの道と比較すると案内看板も格段に少なく、わたしを不安にさせた。
2時間20分経過したとき、鉄工所の前にアサヒビールの青い自販機をみつけ、トマトジュースを一気飲みした。駅近くの自販機で買ったお水は携行しており、ちびちび飲みながら来たが、少し塩分を含んだこのトマトジュースは格別の美味しさだった。(16:10)

実は山頂のお寺の手水舎には「当山現在渇水中にて、水の使用を制限しております」と貼り紙がしてあったため、申し訳なくてわたしはお手洗いを借りることができなかった。
それなのに、トマトジュースを一気飲みしてしまった。(ほとんど確信犯)
下りであるし、あと1時間もあれば十分帰れると思ったが、さすがにトイレが心配になった。帰館が17時過ぎると夕食前にかなり急いでお風呂に入らなくてはいけないことも気になった。
ほかのお客さんとかちあえば、食後まで入れないかも知れない。
ここまで考えが至ったところで、反射的にタクシー会社に電話をしていた。
気が抜けた。(ほんとうは、お寺に着いた時点でもう気は抜けていた)
タクシー会社の人から、鉄工所の前の車道をまっすぐ下っていてくださいと言われ、写真を撮りながらゆっくり下っていたら20分でタクシーが到着。
かろうじて17時前に帰館したら、ご主人が玄関前の水道で金剛杖とストックをきれいに洗ってくださったので、お部屋のお杖立てに立てた。
10時間振りでトイレに行き、お風呂に入って、お洗濯をして、夕食をいただいて、長い一日が終った。
ちなみに、宿のご主人は、下草が繁茂して歩きづらくなかったかということをとても気にしていらした。
草はほとんど生えていなかったが、少しだけ草刈りのお接待をさせていただいたことを話すと、お礼を言われた。
いえいえ、お礼を言うのはこちらの方ですから。
難ルートだったはずの出石寺への参拝がわたしでもできるようになったのは、間違いなく地元の方々が整備してくださったおかげである。
10年前であれば、わたしは参拝できなかったと思う。
【参考にしたルート情報】
YAMAPに山行記録がたくさんある
【参考URL】
JR四国旅客鉄道 四国の駅時刻表
【コースタイム(実際)】

* 距離は、ときわ旅館でいただいた地図記載の距離を使用
**鉄工所下~ときわ旅館は、後日歩いてつないだ
宿泊:2食付7,500円(夕食はカレーライスほか、朝食はスープと行動食にできるパン、バナナ、ウィンナー)(宿泊代2026年1月現在)
洗濯:お接待(洗濯機が脱衣所にあるので入浴しながら使用可)
乾燥:部屋干し(部屋に大きな物干し台あり)
その他:
日頃遍路道の整備もしてくださっている、歩き遍路愛にあふれるご主人が、副業しながら奥様と続けてくださっているお宿
お願いすれば、別格7番金山出石寺のルート説明ほか、遍路道等の相談にのっていただける
トイレは、ひとつの空間に個室1、男性用、手洗い1があり男女共用
食事会場の広間の前の廊下に共用の冷凍冷蔵庫あり
近くに飲食店がいくつかと、徒歩7分にコンビニがあるので素泊まりも可
場所はgoogle map等でご確認ください
