「内臓脂肪レベル6」の67歳。5年ぶりのビート板に、僕は震えた。
僕のなかで、プールは裸で泳げる気軽なレジャー感覚だった。でも、公共施設の壁は厚い。
ジャグジーで体を温めて、入水の準備をする。 見れば、Apple Watchの現場用カバーをはめたままだった。まださっきの「100円玉パニック」の動揺が収まっていないらしい。
スイミングのワークアウトを選択すると、まずはプールの距離設定だ。老眼で見えていなかったのか、画面の"26m"を"25m"に修正する。
ビート板を手に、やっとプールに浸かった。
体はどんどん絞れている。 身長175cm、入社時は73kgあった体重も、今は63kgを超えることはない。体脂肪率もこの1ヶ月の平均で18.8%。
実は気になっていたことを、AIに相談していた。 「おへそ辺りのプニョプニョした贅肉をなんとかしたい」
提案はいろいろあったが、最も現実的だった答えが「ビート板100m」だった。 かつてトライアスロンに挑んだ僕にとって、バタ足は自信があった。本を読み、パーソナルトレーナーにも教えてもらった技術がある。
肝は「足を広げない」。 親指が擦れるぐらいの間隔で、しなやかに水を打つ。
ビート板に手を乗せ、5年ぶりの感触を楽しむ。 ……はずだった。
(つづく)

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