魔法の鏡|【水たまり】 #シロクマ文芸部
水たまり、って、罠みたいだと思う。
嫌な意味じゃ、なくて。
ううん、暗がりで気付かなかった水たまりを踏んでお気に入りの靴が水没したりするのは確かに嫌なんだけど……そうだけど、そうじゃなくって。
なんていうかな……ほら、誰でも簡単に子供に戻れちゃう、みたいな。
そういう、ある種楽しい罠。
仕掛け、っていう方がしっくりくるのかな。
何かさ、お気に入りの靴が水没してゲンナリした後って、もうどーでもいーやってバシャバシャ水たまりをわざと踏んだりしない?
ほら、そういうこと。
小さい子って、水たまりにわざと入りたがるじゃない?
水たまりを踏む。ただそれだけのことが楽しい子供。
でもその童心って、きっといつまで経っても消えないんだ。
だって、ほら──
バシャン!!
突然の雨。不覚にも水溜まりを踏んだわたしは一瞬「あーあ……」と項垂れてから、もう一回も二回も同じだ、って。
今度はわざと水たまりを踏みに行く。
じゅわり、スニーカーの布地を越えて靴下を浸す。
ぐじゅり、がぽ、という蛙の潰れた鳴き声みたいな音をさせながら。
わたしは点々と水たまりを踏んでいく。
まるで水たまりひとつひとつがHPやMPを回復させてくれる泉だと云わんばかりに。
バシャン、じゅわ、がぽっ。
音を鳴らすのも楽しくなってくる。
水たまり、って。
もしかしたら子供の自分に会う為の、魔法の鏡、なのかも知れない。
