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止まっていた時間が動き出す。春の匂いとNOMELON NOLEMON

今日から、休職明けの通勤。 久しぶりに袖を通す服はなんだかよそよそしくて、駅へ向かう足取りは、まだ自分のものじゃないみたいだ。

「これからどうなるんだろう」という不安や、復帰に対する強烈なプレッシャー。 少しでも心細さを紛らわせるために、イヤホンを耳に押し込んだ。流れてきたのは、nomelon nolemonの「I THINK」。 エモーショナルなオルタナティブロックのサウンドが、凝り固まっていた心にダイレクトに響き、無理にでも前を向かせるような力強さで私の背中を押してくれた。

曲を聴きながら、私はずっと抱えていた感覚に重なるフレーズを思い浮かべていた。

“治らない傷跡も 「いつかは」の魔法で見ないふり そうやって秒針は進む 絶望の方角へ進む”

I THINK

休んでいる間に抱えてきた、治りきらない心の傷跡。「いつかは良くなる」と自分に魔法をかけて見ないふりをしても、時間だけが過ぎていく。自分の中の秒針が、まるで絶望の方角へチクタクと進んでしまっているような恐れと焦燥感。 そんな重たい感情をビートに溶かしながら、下を向いていつもの通勤路を歩いていた。

のだけれど、ふと視界の端に明るくて淡い色が飛び込んできた。

顔を上げると、毎日通っていたはずの見慣れた道が、眩しいほどの薄紅色に染まっていたのだ。気がつけば、道沿いの桜が満開を迎えていた。

「ああ、そうか」と思った。 私が立ち止まって動けなくなっていた間にも、季節は確実に巡り、こうして新しい春の準備をしてくれていた。

数日前まではまだ固い蕾だったはずなのに、あっという間に花を開き、青空の下で春の風に揺れている。その圧倒的な生命力と美しさに、私はイヤホンから鳴り響くロックの波の中で、少しだけ立ち止まり、長く深呼吸をした。

絶望の方角へ進んでいると思っていた私の秒針は、本当は春に向かって進んでいたのかもしれない。 毎日の不安にかまけて見ないふりをしていたけれど、休職というお休みをもらったからこそ、立ち止まる植物の力強さと、新しくやってきた春の美しさに気づけた。

ほんの数十秒、桜の木の下で立ち止まっただけなのに、力強いオルタナティブロックの響きと満開の桜から、不思議と前を向くためのエネルギーをもらった気がする。

止まっていた私の時間も、ついに新しい季節と共に少しずつ動き出す。 いきなり全速力で走らなくてもいい。「いつかは」の魔法ではなく、確かな春の匂いを感じながら、焦らず自分のペースで、今日も一日やっていこう。

そう思えた、ちょっとだけ特別で、希望に満ちた春の朝だった。

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