カール・アンドレ ミニマル・アートの落ち着く空間。
アメリカのミニマル・アートを代表する彫刻家 カール・アンドレ(Carl Andre)。
1960年代からマテリアルを単純に構成し、本質を定義する作品には多くの芸術家たちが影響を受けている。
アンドレの作品は、レンガ、ブロック、木材、金属などを配置し、その原材料の形を変えずに接着剤なしで構成していく。物質の性質の探求という目的で、素材の特徴とそれを取り巻く環境によって形成されているのだ。
彫る、加工するといった彫刻のプロセスを行わずに、配置によっての彫刻の定義は、新世代の彫刻の本質を定義することになった。「場所を生み出す」作品はミニマリズムのみではなく、ランド・アートにも大きな影響を与えている。
カール・アンドレの略歴

生年月日: 1935年9月16日ー2024年1月24日
出身地:アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 クインシー
学歴:オハイオ州ケニオン大学中退
アンドレは大学を中退した後、クインシーでしばらく働きノースキャロライナで兵役を終え、1957年に芸術に打ち込むためニューヨークに移った。
彼の友人たちと詩、エッセイ、美術を学び合い、アンドレはコンスタンティン・ブランクーシの彫刻に特に惹かれていった。
この頃からすでに木材配置の実験を始め、のこぎりで切って単純な幾何学的な形を作っている。
また、フランク・ステラの「ブラック・ペインティング」にも大きく影響された。ステラは1950年代の終わり、黒いエナメル塗料で均一な平行な面だけで構成された一連の作品で認知度を高めていった。
この芸術性の余地をほとんど残さなかった技法を「構成主義」と呼び、同一でありながら個体である作品に魅了されたそうだ。
しかし、この時期アンドレが「構成主義」を探求し続けたのは、彫刻ではなく、言葉とテキストによるものだった。1960年はじめは、アンドレは彫刻をほとんど制作していない。というのも、彼はペンシルバニア鉄道で鉄道員として働き、三次元アートを制作するためのスペースもお金もなかったからだ。
代わりに、彼は特定のテキストから厳選した単語やフレーズから詩を「構築」していった。フラグメントを書き留め、単語の長さやアルファベット順、または単純な数学的システムなど、決められたプロトコルに従ってページに配置している。
しかし、この肉体労働者の経験と秩序ある貨物列車運行にかかわる仕事は、彼の芸術性に影響を与えたようだ。アンドレが今日でもオーバーオールと簡素なシャツを着ているのは、そのためだとも言われている。
1960年後半からは「構造としての彫刻」に取り組み、レンガ、木材、金属板などの同一のユニットを組み合わせ、配置によっての空間彫刻を制作しする。例えば、金属板を床に敷き詰め、その上を渡ることができる作品は、従来の向き合うタイプの彫刻とは全く異なった空間へ鑑賞者を連れ出してくれる。
アンドレの彫刻は外見に彫るなどという変化を加えていないが、同じユニットを展示室の違う配置でおくことによって、違うものになっていく。彼の作品はどれも似通ったものに見えるが、構成と配置によって大きな変化が起きていることがわかるだろう。
カール・アンドレ 私生活のスキャンダル
アンドレは1985年 50歳でキューバ系アメリカ人芸術家 アナ・メンディエタ(Ana Mendieta)と結婚。
メンディエタ(1948-1985)は彫刻、絵画、ヴィデオアーティストとして活躍し、作品は自伝的なものや女性解放を示唆するものが多い。

引用元:https://www.icaboston.org/art/ana-mendieta/silueta-works-mexico
結婚してから8ヶ月後、アナは一緒に住んでいた34階建てのマンションの窓から落下し死亡。
アナが落下するところを目撃する人はいなかった。しかし、二人が口論していたことや、アナが「No! No! No!No!」と叫んだいた事を聞いていた証人がいた。またアンドレの鼻と腕に争ったような傷があったため、彼は逮捕されたが、3年後、無罪判決を受ける。
けれどその判決に納得のいかないフィミニストの芸術団体が抗議している。2017年、抗議者たちはロサンゼルスのMOCAで開催された「The Geffen Contemporary」での展示会のオープニングに出席し、「カール・アンドレはMOCAにいます。アナ・メンディアタはどこ?」というカードを配っていたた。
アンドレはその後、現代美術家のメリッサ・クレッチマー(1962−)と結婚しており、ニューヨークで暮らしていた。

カール・アンドレの作品

引用元:https://ro.pinterest.com/pin/331929435032657938/

引用元:https://ro.pinterest.com/pin/331929435032657945/

ミニマリズムの心地よさ
アンドレの作品はどれもシンプルで、鑑賞者は興味が持てない場合もあるのではないだろうか。
もし、何の予備知識もなく単に気が向いて美術館に行ったとする。現代美術が展示してある部屋に、アンドレの彫刻があったらどうだろう。 組んである木材を横目で見、置かれている金属板を一応踏んでみる、といった具合できっと感動することはないと思う。「ふーん、現代彫刻ってこんなものか」という程度のことで理解しようとはしないかもしれない。
けれど、しばし立ち止まってその作品を眺めてみてほしい。単純に置かれた木材に平穏を感じはしないか。これが芸術であるかどうかを判断する必要はない。そして可能ならば、木材と木材の間をゆっくり歩いたり、登ってみたらどうだろう。それは、ただのアスレチックの器具と化するのだろうか。
けれどもし、アスレチックのような気分を味わったのなら、あなたはもう別の世界に入り込んでいるわけだ。美術館にいながら、あなたの感覚はジム、もしくは広々とした公園にいる。
そして、彼の作品に芸術性を感じたならば、それは象牙の塔からの思考であっても構わない。俗世と離れてただ得も知れぬ心地よさに浸るのは、至福の一時でもあるからだ。
「シンプル イズ ベスト」という言葉がぴったりなアンドレの作品を、ゆったりと眺めると瞑想をしているような気分になりはしないだろうか。
参考:https://www.theartstory.org/artist/andre-carl/
https://www.tate.org.uk/art/artists/carl-andre-648
