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『 キラーキラーネーム 』

名は体を表す。

この世界では、
それが比喩ではなかった。

「優」と名づけられた者は優しく育ち、

「勇」と名づけられた者は、
恐れを知らない人間になった。

だから親たちは、
子どもの名前を慎重に考えた。

ある夫婦に、
男の子が生まれた。

悪を打ち倒す強さと、
人を救う優しさを持ってほしい。

そんな願いを込めて両親は少年に、

吉良 殺助

と名づけた。

読み方は、

きら ころすけ。

殺助は、
両親の願いどおりに育った。

悪い虫を殺して、
花を助けた。

乱暴な獣を殺して、
村人を助けた。

やがて、

悪人を殺して、
被害者を助けるようになった。

しかし、

何が悪で
誰を助けるべきなのか。

殺助には、
だんだんわからなくなった。

人を騙した者。

約束を破った者。

道を譲らなかった者。

自分を批判した者。

殺す理由は、
いくらでも見つかった。

助ける理由は、
いつしか必要なくなった。

殺助は、

世界最悪の殺人鬼となった。

ある夜。

殺助の前に、
一人の少女が現れた。

少女は逃げなかった。

「次はお前を殺す」

殺助が刃物を向けると、
少女は言った。

「やめときな」

殺助の手が止まった。

少女の名前は、

矢目 刻奈。

読み方は、

やめ ときな。

「俺は殺助だ」

「それ、自分で決めた名前?」

「違う」

「だったら」

刻奈は、
殺助の目を見て言った。

「他人が決めた名前どおりに生きるの」
「もうやめときな」

殺助は初めて、
刃物を地面に置いた。

その後、

彼は自ら警察へ出頭した。

長い時間をかけて、
自分が犯した罪と向き合った。

罪が消えることはなかった。

失われた命も戻らなかった。

それでも彼は、
残された人生を償いに使うと決めた。

刑期を終えた殺助は、
名前を変えた。

新しい名前は、

吉良 綺羅星。

読み方は、

きら きらぼし。

彼は世界中を巡った。

争う者の間に立ち、

傷ついた人を助け、

武器を置くよう呼びかけた。

かつて世界中の人々から
恐れられていた男は、

やがて世界平和の象徴となった。


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