【ビル・パーキンス】「ゼロで死ぬ」
アリとキリギリスの話を、
ご存じでしょうか。
夏のあいだ、
ひたすら食料を蓄え続けるアリ。
歌い踊り、
今この瞬間を生きるキリギリス。
私たちはずっと
「アリになれ」
と教わってきました。
老後のために。
将来のために。
見えない何かのために。
でも、ふと思うのです。
冬を乗り越えたアリは、
いつ遊ぶのだろう、
と。
「喜びの先送り」という、静かな罠
世界的ベストセラー
『DIE WITH ZERO(ゼロで死ぬ)』の著者、
ビル・パーキンス氏は
こんな問いを立てます。
人生の終わりに、
通帳に残っているお金は
何を意味するのか?
それは未使用の時間です。
換えることのできなかった経験です。
先送りし続けた、
喜びの残骸です。
「老後が心配だから」
「もう少し貯まってから」
「落ち着いたら行こう」——
そうやって
先へ先へと積み上げてきたものが、
気づいたときには
使い道のない数字になっていた。
そんな人生を、
豊かと呼べるでしょうか。
90歳になってから
水上スキーを始めるのは、
正直なところ厳しい。
体力がある今しかできないことが、
この世界にはたくさんある。
お金を無駄にすることより、
経験の機会を失うことのほうが、
ずっと大きな損失なのです。
人生でもっとも大切な仕事は、「思い出作り」である
パーキンス氏は断言します。
人生においてしなければならない、
最も重要な仕事は
「思い出作り」だ、
と。
人生とは、
経験の総和です。
最後に振り返ったとき、
残るのは数字ではなく、
記憶です。
ここで登場するのが、
「記憶の配当」
という美しい概念。
投資が配当を生むように、
経験もまた、
時間をかけて喜びを生み続けます。
20代に無理をして訪れた
ヨーロッパの街並み。
見知らぬ旅人と
夜を明かして語り合った宿。
あの旅のことを、
30歳になっても、
40歳になっても、
子どもに話して聞かせながら笑える。
その「思い出す喜び」が、
複利のように積み重なっていく。
つまり、
経験への投資は早ければ早いほど、
受け取れるリターンが大きくなるのです。
お金は「命の時間」でできている
働いて得るお金は、
実のところ、
あなたの限られた時間を削って
手に入れたものです。
仮に、旅立つときに
口座へ1,500万円が
残っていたとしましょう。
時給2,000円で換算すれば、
約2年半分の時間です。
2年半を、
誰かのためでも
自分の喜びのためでもなく、
ただ通帳に預けたまま
逝くことになる。
それはもったいない、
というより——
少し、
切ない話
ではないでしょうか。
「ゼロで死ぬ」とは、
けして無計画に散財せよ
という意味ではありません。
せっかく命を削って稼いだエネルギーを、
生きているうちに
価値ある経験へと転換し切ること。
その覚悟を持って、
今を生きようという思想です。
お金の価値は、年齢とともに変わる
同じ100万円でも、
30歳での100万円と、
80歳での100万円は、
別物です。
老後の過ごし方には、
大きく3つのフェーズがある
と言われています。
ゴーゴー・イヤー
引退直後の、意欲に満ちた時期。スローゴー・イヤー
行動が穏やかになっていく時期。ノーゴー・イヤー
70代後半以降、
お金を使う気力そのものが薄れる時期。
多くの方が
「ノーゴー・イヤー」に入ってから、
初めてお金が余っていることに気づく。
でも、その頃にはもう、
使いたいという気持ちが起きてこない。
だからこそ、
健康で体力があるうちに、
意識的にお金を経験へと
変えていくことが大切です。
「老後が心配で」と言いながら、
いちばん楽しめる今を削り続けるのは——
少し、本末転倒かもしれません。
人生を「タイムバケット」で考える
本書では、
具体的なライフプランの手法として
「タイムバケット」
という考え方が紹介されています。
人生を5〜10年ごとの
「バケツ」に区切り、
その年代でしかできない経験を
割り振っていくのです。
30代のバケツに入れるもの
体力を使う登山、
バックパック旅行、
スポーツ観戦の遠征。40代のバケツに入れるもの
子どもと一緒に過ごす家族旅行、
親と出かける小旅行。50代のバケツに入れるもの
ゆっくり味わう美食の旅、
学び直しの留学……。
視覚化することで、
「今しかできないこと」の輪郭が、
はっきり見えてきます。
なお、資産のピークは
45歳から60歳のあいだ
に設定し、
その後は稼ぐよりも
「使う・経験に変える」
フェーズへと意識的に
移行することが推奨されています。
金額を目標にすると、
不安から永遠に働き続けてしまう。
だから「年齢」で
区切るのです。
子どもへの贈り物は、生きているうちに
相続についても、
本書は一石を投じます。
親が亡くなったとき、
子どもはすでに
50〜60代であることが多い。
そのとき渡されたお金より、
子どもが26〜35歳のときに
渡したお金のほうが、
はるかに大きな意味を持つはずです。
経験の価値を
最大限に引き出せる年齢に、
必要なお金を届ける。
それが最も合理的な、
愛情の使い方なのかもしれません。
結局、今が一番若い
死ぬ前の後悔として
最も多く挙げられる言葉が、
ふたつあるそうです。
「もっと自分に正直に生きればよかった」
「働きすぎなければよかった」
なんとも、胸に刺さる言葉です。
AIが労働の多くを代替していく時代が、
もうそこまで来ています。
そのとき人間にとって
最も大切な価値観は、
「今この瞬間の経験を楽しむこと」
になっていくのではないでしょうか。
あなたが今何歳であっても、
今日が、残りの人生で
いちばん若い日です。
将来の不安のために
「今」という輝きを
先送りするのをやめ、
記憶の配当を生む経験に、
あなたの命(ライフエネルギー)を
少しずつ投資してみませんか。
最後に
あなたの「タイムバケット」に、
今すぐ入れたい経験は何ですか?
いつも読んでくださる皆さんへ。
こうして言葉を綴り続けられるのは、
あなたが読んでくださるおかげです。
ありがとうございます。
また次の記事でお会いしましょう。
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