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ベルーナドームはなぜ暑い? 「半開放型ドーム」の宿命を建築的に考察

西武ライオンズファンの一級建築士です。ライオンズファンの皆様、どうぞよろしくお願いいたします。


ベルーナドーム

ベルーナドームの夏

真夏の所沢、ベルーナドームでの野球観戦は、熱気との戦いでもあります。特に試合序盤、ライオンズ側のスタンド席に後方から差し込む西日は強烈で、「やめてくれ~」と感じる方も多いのではないでしょうか。

観戦するだけでダイエット効果抜群のベルーナドーム。
「屋根があるのに涼しくない」という現状は、偶然ではなく、球場の構造と制度の必然なのです。本コラムでは、建築士の視点から、その理由と今後の暑さ対策について、勝手に考察させて頂きます。(関係者の方の事情がわからないところもあるので、そこはご容赦くださいませ。)


なぜ「完全な室内型球場」にならなかったのか?

ベルーナドームは、1999年にかつての西武ライオンズ球場に屋根をかける形で改修されました。しかし、外壁を設けて完全密閉型にしなかったのには、以下のような複数の理由があります。

1. 建築基準法上の理由
完全密閉型にすると建築基準法の扱いが変更され、避難経路、耐火構造、防災設備の基準が大幅に厳格化されます。既存のスタンドや構造を流用する前提だったため、これらを満たすには、ほぼ新築並みの改築が必要となり、工事期間とコストが大幅に増加してしまうのです。

2. 税務上の理由(固定資産税)
完全な室内型は、固定資産税評価額が高くなります。当時の制度上、「屋根付きだが壁がない構造」にすることで、課税額を抑えることができました。これは、施設を長期的に運営する企業としてのコスト管理の一環だったと考えられます。

3. 自然換気の発想
壁がないことで外気が流入し、夏は風通しを良くし、冬は自然換気による結露対策が可能になるというメリットも想定されていました。(残念ながら、この想定は外れてしまいました。)


現在の暑さの要因と限界

ベルーナドームの現在の暑さの要因は、以下の4つに集約されます。

  • 外気の直接侵入と空調不可
    壁がないため、外部の熱い空気がそのまま流入します。

  • 屋根の輻射熱
    ドームを覆う屋根材が太陽光で熱せられ、その熱がドーム内に放射されます。

  • 湿度のこもりやすさ
    外気とドーム内の熱が合わさり、湿度が上昇し蒸し暑くなります。

  • 観客・設備による発熱
    多くの観客や照明、設備機器が熱を発します。

これに対し、これまで行われてきた暑さ対策には限界がありました。

  • ミスト噴射
    局所的には涼しいものの、空間全体を冷やす効果はありません。

  • 大型扇風機
    風が届かない席も多く、効果は限定的です。

  • 氷・冷房機器
    選手や特定のエリアに限定されており、観客席全体を快適にすることはできません。


考えられる具体的な解決策

ベルーナドームの暑さを根本的に解決するためには、大規模な改修か新設が必要です。考えられる具体的な解決策は以下の通りです。

1. 完全密閉+空調化
外周に壁を設け、ドーム全体を密閉空間にした上で、大型空調設備を導入します。東京ドームやバンテリンドームのような快適な環境が実現しますが、数百億円規模の工事費と、建築基準法への対応、長期の使用制限が課題となります。

2. 局所空調システムの導入
全館空調ではなく、観客席やコンコースなど、人が滞在する場所にだけ送風・冷房設備を設置します。完全密閉よりも安価ですが、冷気のロスが大きく、電力コストもかさみます。あくまで「暑さの軽減」にとどまる可能性があります。

3. 屋根材・構造の遮熱化
屋根裏に断熱層や遮熱フィルムを追加したり、反射率の高い屋根材に変更したりする方法です。輻射熱の低減には効果がありますが、劇的な温度低下は期待できず、湿気対策は別途必要になります。

4. 強制換気・除湿システムの増強
屋根と外周部に大型ファンを配置して熱気を排出し、外気導入部に除湿ユニットを組み込む方法です。湿度を下げることで蒸し暑さが緩和され、体感温度を大幅に下げることができますが、外気温が高い場合は単なる換気だけでは冷却効果が限定的です。

5. 新球場建設
完全空調型の新ドームを別の場所に建設する方法です。根本的に環境を改善できますが、数千億円規模の莫大な建設費が最大の課題となります。

現実的なアプローチとしては、「4. 強制換気・除湿システム」「2. 局所空調システム」を組み合わせ、段階的に改善を進めていくのが良いでしょう。そして、長期的には「1. 完全密閉化」か「5. 新球場」で根本解決を目指すという、二段階構えがもっとも現実的だと考えられます。


選手とファンが最高の夏を過ごせる日を夢見て

ベルーナドームが現在の半屋外構造になったのは、税務や建築法規との折り合いをつけた結果です。しかし、真夏の過酷な環境は、観客だけでなく、選手のパフォーマンスにも影響を及ぼします。猛暑下での連戦は体力消耗を早め、疲労によるケガのリスクも高まります。

こうした環境要因は、選手がFA移籍を考える際の「見えない理由」のひとつになりかねません。もし球場が年間を通して快適な環境になれば、「ここでずっとプレーしたい」と思える要素が増え、FA流出の抑止にもつながる可能性があります。

涼しいベルーナで、選手もファンも最高の夏を過ごせる日を夢見て。建築士として、そして一人の西武ライオンズファンとして、この課題に注目し続けたいと思います。

球場問題の解決 → FA流出抑止 → ライオンズ黄金時代再び!


▼暮らしと住まいに関する電子書籍を執筆しています。


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