小さく動いて、一枚ずつカードをめくる
これまで、すべて小ぶりでいいから動いて、一つずつ叩いて、カードをめくることを心がけてきた。
スポーツサプリの20年以上もそうだった。
最初から何もかも整っていたわけではない。
動いて、お客様の声を聞いて、反応を見て、少し直す。
また動いて、また反応を見る。
その繰り返しだった。
そして今、自分自身ももう一度、スタート地点に戻っている。
ずいぶん自尊心やプライド、葛藤に苛まれてきた。
「いまさら、そんなことをやるのか」
そんな気持ちもあった。
これまでの経験や実績を、自分自身が素直に受け入れられない時期もあった。
うまくいかない理由を探し、だから仕方がないと自分を納得させようとしたこともある。
これまでとは違うことを始めれば何かが変わるのではないかと考えたり、自己研鑽を続けることで、動かないことへの安心感をつくっていた時期もあった。
孤立感、喪失感、不甲斐なさ、惨めさ、不安、恐怖。
いろいろなものを抱えていたと思う。
でも、結局のところ、
どこかで立ち直るのも自分。
建て直すのも自分。
奮起するのも自分。
行動を起こすのも自分。
何度でもやり直すのも自分。
誰かが、自分の代わりに動いてくれるわけではない。
だから今は、とにかくがむしゃらに、いまの自分にできることをやっている。
まだ結果はわからない。
でも、少しずつ貪欲さを取り戻し、蘇ってきているような感覚がある。
これまでの自分にあぐらをかくのではなく、一度、振り出しに戻してみる。
とことん落ちたからこそ、見えたものもあったのかもしれない。
人にどう思われるかも、以前ほど気にならなくなった。
いま、自分が何を考え、何をしたいのか。
そして、相手に何を検討してもらい、どんな仕事につなげたいのか。
それを、ありのまま、シンプルに伝える。
考えるだけでは、何も変わらない。
これは、どんな立場であっても同じなのだと思う。
正解かどうかは、やってみなければわからない。
だから、いま頭の中にあるものを、まず身体を動かしてやってみる。
やれば、必ず何かしらの反応が返ってくる。
その反応を見て、少し手直しする。
微調整して、また動く。
小さく試す。
反応を見る。
違えば変える。
いけそうなら広げる。
私は、このやり方を20年以上の事業の中でも繰り返してきた。
スポーツサプリ事業も、創業時から完璧な事業計画があったわけではない。
人が揃っていたわけでもない。
十分な予算があったわけでもない。
完璧な商品やサービスができていたわけでもない。
動きながら、お客様の声を聞きながら、少しずつ形を変えていった。
その途中には、リーマンショックも、東日本大震災も、新型コロナウイルスもあった。
事業を始めたときに、そんなことまで予測できるはずがない。
だから私は、最初から理想的な「建て付け」をつくることに、あまり意味を感じていない。
もちろん、考えることは必要だ。
でも、考えて、考えて、完璧になってから動こうとすると、いつまで経っても始まらない。
新規事業や新しい取り組みも同じだと思う。
いきなり、
・大きな事業計画をつくる
・人を集める
・大きな予算を確保する
・完璧な商品やサービスをつくる
・会社として正式に立ち上げる
必要はない。
まずは、いま手元にあるカードを見る。
今いる人。
今ある商品やサービス。
既存のお客様。
これまで培ってきた経験やノウハウ。
使える設備や環境。
必要なら、外部の人や企業の力を借りる。
そして、いま持っているカードをどう切るかを考える。
小さく動いてみる。
うまくいかなければ戻す。
違うと思えば変える。
可能性が見えれば、少し広げる。
「小さく始める」のは、失敗を怖がっているからではない。
変えられる余地を残しておきたいからだ。
会社や事業は、失敗してもやり直せるとは限らない。
だからこそ、大きく賭ける前に、小さく手を打つ。
私は、これからの職業人生の最後まで、このやり方を貫きたいと思っている。
大魚を一度に獲ることよりも、
一枚ずつカードをめくりながら、
何が見えるのかを確かめ、
また次の一手を考える。
その繰り返しでいい。
そして、これは個人だけの話ではないと思う。
企業も同じ。
既存事業に絶対はない。
だからといって、新規事業という名の博打をする必要もない。
できることからでいい。
小さな着想を形にする。
小さく手を打つ。
反応を見る。
変える。
また動く。
その積み重ねが、次の事業や次の可能性につながっていく。
考えるだけでは、何も変わらない。
だから私は、
小さく動いて、一枚ずつカードをめくる。
これからも、それを続けていきたい。
