大イベントの日
子ども部屋にかけてあるカレンダーの、7月のとある1日に、マスからはみ出す勢いの鉛筆の字で「大イベント」と書かれている。
次男の誕生日だった。
その日彼は、機嫌良く起きてきたというのに、朝からさっそく長男とケンカをして、二度ほど泣いた。
長男に、わざわざこんな日に泣かさなくても‥と小言を言うと、長男は、俺は正論を言っただけで、泣くとは思わんかったもん。と言う。確かに、私も泣くとは思わなかった。まぁ、もめた原因はどっちが出した漫画を片付けるか、どっちが先にゲームをするかだったんですけどね。ほんとブレない兄弟。
二人とも片付けなさいという話。
長男が部活に行き、途端に家が静かになった。
子どもたちが大きくなるということは、こういうことなんだなぁ‥と、夏休みの平日ど真ん中にその変化を実感する。
まだシュンとした表情の次男。あれ、さっき仲直りして一緒にテレビ見てたよね?
「ママ‥」
どうした?
「一緒にマリオしよう」
‥洗濯干してからでもいい?
ていうか、長男部活なんだから、どっち先にゲームするかでケンカする必要なくなかった?
二人で、彼がマリオメーカー2でコツコツ作ったマリオワールドをプレイすることになった。
私としては、平日の朝の9時からのんびりSwitchする気には全然なれないのだけれど、ここでつれなくしたらまたセンチメンタル次男が「俺誕生日なのに朝から全然楽しくない‥!」と泣くかも知れなかったので、急いで洗濯を干し終えた。
「俺は今日は誕生日だから、宿題はしない」
だそうです。へいへい。
テレビの前に二人並んで座る。
ステージによってその都度変わるギミックに翻弄されて、何回も同じところでルイージが死んでしまう。そのたびにマリオが復活させてくれたり、ルイージがどうしても越せない場面ではマリオ一人ですすんだり。時にルイージが奇跡の大ジャンプを見せたりした。
幾多の困難を乗り越え、力を合わせてとうとうクッパを倒した。
「やったなー」
やったねー。途中で何度、もう無理と思ったか。
「ママさっきの場面上手かったなぁ!ママのおかげで倒せたわ!」
このナチュラルボーン褒め上手次男。それにしても機嫌なおったようでよかったわ。
誕生日前後にセンチメンタルになるのは自分にも覚えがあるけど、思春期以降のことだと思ってた。それとも単に、暑さで疲れがたまって感情が不安定になっているのかも知れない。
そして、今の子は自分でこんな風にゲームを自由自在にアレンジできることに、今更ながら感心した。
私の時はまず、何度やっても二面の途中から進めなくて、すぐに飽きてしまってたけど、彼らの遊び方はそのゲームを「作る」ことなのだ。ここにこの敵を配置して、ここにははてなブロックを置いて。ここはこのジャンプを使わないと進めない‥手も頭も駆使してゲームを構築していく。さらに水中のステージ、次は氷のステージ、最終場面はクッパ城のステージ‥と、それなりに難しくなるように、楽しめるように作ってあるもんなぁ。
もしかしたら、ゲーム全般大好き長男より、次男の方が意外とゲームクリエイターとかになったりするのかも知れない。
旅行で美味しいものをいろいろ食べてきたせいか、次男は誕生日当日は特に何も食べたいものはないと言う。強いていうなら、ピーマンの肉詰めを自分で作って食べたい、それを夏休みの家庭科の宿題にするから‥と彼が言うので、私は、ゲームを終えた後スーパーで、ステーキでもお刺身でもなくピーマンとひき肉を買ってきた。
ピーマンのヘタをとって、ひき肉をコネコネする次男。暑いし、生の肉だから手早くね、と言ったぐらいで私のすることはあまりなく、横で口を挟みながら、宿題提出用に何枚か写真を撮った。最後の方はちょっと疲れてきたらしく、ピーマンを2個残してもういいかな‥と言うので、手を洗ってもらってバトンタッチした。
結局宿題一個片づいたね。
誕生日の日に自分でご飯作る小学生ってそんなに多くないと思うよ。
もしかしたら、彼の将来はゲームクリエイターでなくて料理人かな。
「ママー」
どうした?
「猫カフェ、いつ行ける?」
ぬいぐるみをこよなく愛している次男の誕生日のリクエストは、ステーキでもプレゼントでもなく、まだ行ったことのない猫カフェに行くことなのだった。
本人曰く、プレゼントはまだ希望が決まってないだけ だそうだが、じーじばーばからはおっきなLaQを、そして旅行のお土産で既にしろくまのぬいぐるみをゲットしているから、正直他に欲しいものが思いつかないのだろう。
猫カフェに行ったら、猫のぬいぐるみ欲しい‥と言い出すのかな。
いや本当は、本物の猫か犬が欲しい‥のだろうと、分かってはいるのだけど。それはちょっと叶えてあげられそうにない。彼も分かっているから、あえての「猫カフェ」なのだった。ごめんよ。
無事に11歳になりました。
大きな夢も小さな夢も。今は叶わぬ夢も、まだ見つかってない夢も。焦らず一つずつ、あなたが追いかけて行くのを、楽しみに見守っている。
