上海の電動バイク⑥|私の過失は、ゼロだった
雨が降っていたので、起き上がって近くの屋根がある場所まで移動した。
事故現場が自宅の目の前だったこともあり、嫁に連絡して、警察との事故調査に立ち会ってもらった。
事故検証をしている間、私は出店にあったプラスチックの椅子に座って待っていた。
周りには野次馬が集まってくる。目の前のおっさんが「まだ若いから大丈夫だ」と他人事のように元気づけてくれた。
警察と、バイクに乗っていた加害者と、嫁。三者での検証は30分ぐらいで終わった。
近くの監視カメラの映像を、警察のスマホに転送して確認したらしい。嫁が見せてほしいと希望したところ、動画撮影はしないという条件で見せてもらえたそうだ。
分かったのは、加害者は台湾人の26歳の男性だということ。
夜、雨、フルフェイスのヘルメットによる視界不良、そしてスピードの出し過ぎ。
加えて私が上下真っ黒の格好だったため、姿が見えなかったらしい。
警察の結論としては、私は横断歩道を歩いていて、バイク側が前方不注意。バイクの過失100%となった。
その場で事故証明書を出してもらい、救急車で病院へ運ばれることになった。
事故から救急車で運ばれるまでは、1時間ぐらいだったと思う。
検証中に救急車が到着していたので、中で待機しながら応急処置を受けていた。応急処置といっても、左腕を吊るしに掛けて固定するだけではあったが。
その待機時間で、海外保険会社に連絡して病院を手配してもらい、会社にも事故報告を入れた。
こんなに手が痛いのに仕事のことを考えている私を見て、嫁が社畜だと笑ったのを覚えている。
そして一番びっくりしたのが、事故証明のサインは本人がしないといけないということだ。
この時、怪我をしたのが利き手ではない左手で本当に良かったと思った。
もし右手だったら、サインなんて書けない。あの状況で右手を動かせと言われていたらどうなっていたのか、今でも想像がつかない。
ようやく救急車が出発した。
さすが中国というべきか、道路の舗装が悪く、車内は酷く揺れた。揺れるたびに左手が痛む。
病院までは10分ほどの道だった。
到着して救急車から降ろされる直前、私は突然思い出したように嫁に通訳を求めた。
このまま病院に入ってしまえば、治療、手術、入院と続いて外に出られなくなる。そして今の時代、病院の敷地内は全面禁煙だ。
最後にタバコを一本吸わせてくれないか、と交渉してもらった。
案の定、却下された。
こんなことを思いつくぐらいだから、やっぱり元気だったのだと思う。
そして救急車から降ろされてすぐ、先に救急車の手配料金の支払いを求められた。
約200元。日本円で4000円ぐらいだ。
払うのは当然なのだが、あの順番には何となくモヤモヤしたのを、まだ覚えている。
