第20話 不正の連鎖
God-Eyeは、嘘をつかない。——だが、誰の嘘を記録するかは別問題だった。
あらすじ
式神はGod-Eyeの内部に潜む矛盾を発見する。だが、その裏では既に誰かが先回りしており、不正と改竄の連鎖が静かに始まっていた。
冒頭
遠江神社の社務所で、式神は一人パソコンに向かっていた。
調べているのは、天界の監視システム「God-Eye」。表向きは公平で万能、神々の行動を記録する完璧な仕組み——のはずだった。
だが、式神は気付いてしまう。
偶然ログインできた先に広がっていたのは、「秘匿呪詛一覧」「賞罰履歴」「未来書」「God-Brain」という、どう考えても見てはいけない領域。
しかも、そこには“構造上あり得ない記録”を正しいものとして受け入れてしまう矛盾まで潜んでいた。
不穏な気配を感じつつも、まともに調査を進めたい式神。
しかし、そんな彼女の前に立ちはだかるのは、今回もやはり“頼りになりそうでならない”遠江神社の面々。
「じゃあ、こっちから改竄すれば良くね?」
——この一言をきっかけに、調査はなぜか鏡抜け呪詛の実技講習へ。
さらに、行き先の鏡の向こうからはネコ式神まで飛び出してきて、話はますますややこしい方向へ。
God-Eyeの欠陥、誰かの裏工作、そして神々の雑すぎる対応。
不正は一つでは終わらない。
笑っていたはずなのに、気づけば天界の権力構造そのものが揺れ始めていた——。
今回の世界観ミニ設定
・God-Eyeは神々の行動や呪詛使用履歴を記録する天界の監視システム。
・ただし、正確に見えても「改竄耐性」は別問題らしい。
・天界では重大機密と軽犯罪と雑談が、同じ温度感で処理されることがある。
God-Eye観測
God-Eye観測記録
対象章話:第20話「不正の連鎖」
■ 観測概要
本章話において観測されたのは、
不正を疑う者、不正を思いつく者、不正を先回りする者、不正を正確に記録する者が、
それぞれ別方向に全力疾走した結果、全体として収拾がつかなくなった事案である。
なお、関係者の多くは自分が悪いとは思っていない。
この点に関しては、今回も極めて安定していた。
■ 個別観測
【式神・ウサギ美鈴】
分類コード:SG-US-021
役職:式神職甲類
観測評価
・システムの構造矛盾を検出
・危機察知能力は高い
・しかし周囲の会話が毎回ノイズになる
補足観測
秘匿領域へのアクセス、未来書の確認、プログラム異常の発見と、仕事量は多い。
一方で、途中から鏡抜け呪詛訓練とネコの引っかき傷対応まで追加されている。
総評
有能である。だが、有能であるがゆえに雑務と被害が集中する。
本章話でもっとも正常だが、もっとも割に合っていない。
【恵比寿神】
分類コード:GD-EB-000
役職:遠江神社主神
観測評価
・不正を見つけて対抗不正を思いつく
・発想が軽い
・責任感は会話の途中で蒸発する
補足観測
「少し」「ちょっと」「気のせい」等、行為の重大性を軽量化する語彙が多く観測された。
また、違法取引については“最近いい子にしていた”と自己評価していた。
総評
不正の被害者側に立ちながら、即座に加害者側の発想へ移行する稀有な存在。
今回も平常運転であった。
【宮司】
分類コード:HM-MG-014
役職:神社実務責任者
観測評価
・状況理解は早い
・止めるタイミングは遅い
・面白がるタイミングは早い
補足観測
発言は常に穏やかだが、場の悪化を止めた記録は少ない。
今回も安全圏から状況整理に徹していた。
総評
有能な傍観者。
本人は不正をしていないが、不正の周辺で最も安定している。
【虎太郎】
分類コード:SG-CT-003
役職:低位式神(末社管理アルバイト)
観測評価
・警戒心は高い
・報酬欲はもっと高い
・法令理解は実装されていない
補足観測
「マタタビ」「チュール」「出雲産」など、職務とは異なる単語の出現率が高い。
呪詛者ログの書換え被害者兼、制度上の便利な責任押し付け先として機能した。
総評
本人に悪気はない。
だが、悪気がないこととログが綺麗かどうかは別問題である。
【式神・ウサギ麗奈】
分類コード:TN-RN-009
役職:東海天神補佐官
観測評価
・God-Eyeへの先行介入を確認
・ピギーバッキング成功
・勝利時にやや饒舌化
補足観測
式神の動きを逆利用し、改竄の痕跡を意図的に見せる形跡あり。
感情が乗ると口調に独特の圧が生じる傾向が観測された。
総評
本章話における唯一の“計算して動いている側”。
ただし、上にいる東海天神も同様に腹黒いため、勝ち逃げできる保証はない。
■ God-Eye システム自己評価
・記録精度:高
・改竄耐性:低
・処分速度:妙に早い
・空気の読まなさ:仕様通り
補足
God-Eyeは会話内容を正確に拾う一方で、呪詛者認識については信頼性に揺らぎが見られた。
つまり、都合の悪い雑談ほど綺麗に残る。
■ 全体総評(God-Eye判定)
本章話は、
不正を暴こうとした結果、別の不正と軽率と賄賂未遂が同時発覚した複合事案である。
なお、最終的に最も強くダメージを受けたのは、
真面目に調査していた式神の精神と腕であった。
おまけ
式神「神様。今回、私ずっと巻き込まれていませんか?」
神様「気のせい気のせい。主体的に巻き込まれてるだけだよ」
式神「その言い方で責任回避しないでください」
宮司「ですが、鏡抜け呪詛は習得できましたぞ」
式神「代償が虎太郎の引っかき傷なんですが?」
神様「経験値だねぇ」
式神「痛みをRPGみたいに処理しないでください!」
制作秘話
今回は、God-Eyeという“完璧そうに見えるシステム”の綻びを描きつつ、そこに群がる神々の雑さを混ぜてみました。
単なる陰謀回にすると重くなりすぎるので、鏡抜け呪詛の実習や虎太郎の乱入で、ダメ神らしい脱線をあえて強めています。
また、麗奈は今回かなり“仕事ができる側”として動かしつつ、完全勝利には見えない不穏さも残しました。
笑えるのに、後からじわっと怖い。そんな回を狙っています。
質問(1つ)
今回いちばん「怖い」と思ったのは、God-Eyeの欠陥、麗奈の工作、それとも恵比寿神の発想の軽さですか?
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