【シロクマ文芸部】『黒い熱帯夜』【サスペンス】
皆さま、本日もお越しいただきありがとうございます。
今日拾い上げたボトルの中には、なんだか少し怪しげで、蒸し暑い夜の空気が閉じ込められた「誰かの漂流記」が入っていました。
少し不気味で、どこか神秘的な夜の物語……。
ちょっとだけゾクッとするかもしれないので、暗い部屋で読むのは気をつけてくださいね。
それでは、アナタにこの漂流記をお届けします。
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ハァ……ハァ……ハァ……
暑く暗い熱帯夜、私は黒い茂みを掻き分け、大きなリュックに長めのロープをぶら下げながら必死に突き進んでいる。
所々に水溜まりやぬかるんでいるところがあり、足をとられてしまう。
しかし、そんなことで歩みを止めるわけにはいかない理由が私にはあった。
この先にある泉に、全てをやり直させてくれる女神がいるというのだ。
周りからもガサガサ……と茂みを掻き分ける音が聞こえる。
どうやら、私だけではないようだ。
視界は暗く何も見えないが、私の直感はこのまま真っ直ぐだと言っている。
あちらこちらで悲鳴が聞こえる。
毒蛇や獣にやられたのだろう。
このサファリスタイルの乳白色は、暗い夜でも格好の標的だ。
途中で倒れているモノや底なし沼にはまっているモノもいたが、私は歩みを止めなかった。
暫く先の視界に、大勢の集団が群がっているのが見える。
かなりの先着がいたようだ。
私は負けじと混雑を掻き分ける。
すると透明な壁にぶつかった。
とても頑丈で、力一杯叩いてもビクともしない。
私は他のモノに負けじと声を張り上げ、透明な壁に向かってドンドンドンドン……と拳を叩きつける。
すると、泉の中央から美しい衣服を身にまとった女性が浮かび上がってきた。
周りのモノたちがより一層声を張り上げている。
無論、私も声を張り上げ叫び続けた。
女神は周りをぐるっと見渡し、品定めをするかのようにゆっくりと眺めた。
そして、私と目が合うとゆっくりと近づき、私の手を取って中へ招き入れてくれた。
私は彼女に選ばれたのだ。
そのまま私は彼女の腕に抱かれ、中央まで行くと泉の底へと沈んでいく。
他の選ばれなかったモノたちは必死に透明な壁を叩き叫んでいたようだが、声は聞こえず、水面が揺れていたため表情もわからなかった。
女神の腕の中で今までの疲れがどっと押し寄せ、ひどい眠気に襲われた。
女神の顔は聖母のような慈しみの表情を浮かべ、私に微笑んでくれている。安心した私はゆっくりと瞼を閉じていき、そのまま深い眠りについた。
◇
突然の眩しさと息苦しさと人の声に驚き、泣きわめいてしまった私を、誰かが優しく抱いてくれた。
私の視界に入ったのは、女神によく似た顔だった。
(了)
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最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。
今回は【小牧幸助】さんの企画に参加させていただきました。
お題は【熱帯夜】ということで書かせていただいたわけなんですけど、確かに最近暑くて寝苦しいですよね💦 まさに熱帯夜です。
もうすぐ8月になったらどうなることやら……。
本当に素敵な企画をありがとうございます。
また機会がありましたら参加させていただきたいと思います。
毎週火曜日に自分の作品を投稿、企画に参加させていただく時は不確定的に投稿します!
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