シニアライフを楽しもう!(71)=「終活」をする意味について考えよう=
皆様、こんにちは。
私は、間もなく70歳になるチ~タラといいます。
お金に関するアドバイスや提案等を行うファイナンシャル・プランナー(FP)をしています。
本稿では、60歳以上の方々を「シニア」と呼ばせていただきますが、私は、自分自身がシニアであることもあり、シニア向けのライフプランニングなどを生きがいにしていこうかなと考えています。
今回は、「『終活』をする意味について考えよう」をテーマとし、「終活」をする意味や終活ビジネス事業者の見極め方などについてお話しします。
私は、本稿の第11回で、「終活」についてご説明しました。
「終活」とは、次のような活動です。
Ⓐ 自分自身に向けて行う活動
・ これからやりたいこと
・ 延命治療や介護について望むこと
・ 家族や大切な人に伝えたいこと
などをエンディングノートに書きます。
Ⓑ 家族に向けて行う活動
・ 不要な私物を整理・処分する
・ 金融機関の預貯金・クレジットカード・有価証券・不動産などの財産を把握・処分して財産目録にまとめる
・ 誰に何を相続させたいかを明確にして遺言書を作成する
・ 葬儀やお墓について家族と話し合う
などが考えられます。
世の中は終活ブーム真っ盛りだが…
世の中は正に終活ブーム真っ盛りで、私たちファイナンシャル・プランナーもそうですが、葬祭事業者、金融事業者、不動産事業者、法律系士業者、介護・福祉事業者など、そして終活全般の相談や専門業者の紹介を行う事業者、身元保証を行う事業者、死後事務のサポートを行う事業者、終活ガイドを養成する事業者、終活ビジネス研究所など、たくさんの事業者が続々と終活ビジネスに参入しています。
その一方で、シニアの立場からみると、「終活」を全うするのは容易ではないようです。
現に、50代以上の方で、「終活」について関心があると答えた方は7割以上に達した一方で、実際にこれを継続できている人は約2割にとどまるという調査結果もあるそうです。
https://s-madoguchi.jp/service/syukatu/hejimerarenai/
そこで、以下、「終活」が始められない(続かない)理由と、「終活」をする意味について考えてみたいと思います。
「終活」が始められない(続かない)理由
まず、シニアが「終活」が難しいと感じる理由を挙げます。次のようなことが言われています。
〇 自分の死を考えると気持ちが暗くなる、気分が乗らない
自分の死を意識することで気分が暗くなったり、「死ぬのはまだまだ先のことだ」など実感が持てないことがあります。
〇 何から始めるべきかわからない
「終活」には様々のものがあるため、どこから手をつけてよいか迷うことが少なくありません。
〇 時間と手間がかかり面倒だ
財産の整理、行政への届出や申請、様々な情報の記録や更新などに時間と手間がかかり、とても煩わしく思えます。
〇 専門的な知識が足りない
「終活」には法律や税務に関する知識が必要となる場面があり、難しく感じることがあります。
〇 終活関連事業者の信頼性に疑問がある
実に様々な事業者が終活ビジネスに参入してきており、信頼できる事業者を選ぶことが難しい状況です。
以上の理由は“なるほど”と思えることばかりであり、「終活」が始められない(続かない)のは当然だとも思えます。
終活ビジネスに対する違和感
これまで人の死に寄り添う仕事をされてきた方々の中には、終活ビジネスが活況を呈していることに対して違和感を持つ方もいます。
例えば、看護師で東京女子医科大学大学院看護職生涯発達学分野非常勤講師の宮子あずさ氏は、概略次のように述べています。
https://www.tyojyu.or.jp/net/essay/houmonkangoshi-oi/hayarushukatsu.html
〇 団塊の世代が70代に入り、「終活」についての話題が盛んに報じられている。先日もテレビで「終活」の見本市を見てびっくり。広い会場は、たくさんの人たちで大賑わい。寝心地のよさそうな棺桶に入ってみる人やら、葬儀のガイダンスを受ける人やら。皆それぞれに、自分たちの死についての情報集めに熱心である。
〇 私はその様子を見て、強い違和感にとらわれてしまった。そして、「棺桶の寝心地など、どうでもいいではないか。死んでしまったらわからないのだぞ」と、テレビの前でぶつぶつ悪態をついたのである。
〇 ひどい言い方になってしまった。でも、なんか力の入れどころがずれている。そんなたまらない気持ちになったのだ。「終活」とは死への備えを産業化(することで)所詮(しょせん)は商売という側面もあるのだから、冷静に見ることも大事なのではないだろうか。
〇 翻(ひるがえ)って、「終活」への熱意に、私は「思い通りに死を演出しよう」という強い意志を感じもする。しかしそれは以下の3つの点で、ほどほどにしたほうがいいと考えざるをえない。
・ そもそもどんな死に方をするかはそのときにならないとわからない
・ 死をつくり込むことよりも、楽しく生きることにエネルギーを注ぐ人のほうが見ていて気持ちがよい
・ 死後の指示が細かすぎると、残る人間がかえって困る
〇 最大の備えは、遺言状。母がこれを残してくれたおかげで、すべてのことがすんなりいき、それを実感した。
〇 最後に、多くの患者さんの死を見送る中で、予想外の経過で亡くなる人もたくさんいらっしゃった。結局のところ、私たち人間は、どのように死ぬかはわからない。「死に方」にこだわりが強すぎると、予想外の転帰をとったときに、受け入れがたい気持ちが募るのではないか。そのことがとても心配になる。
〇 「終活」で一番大事なのは、「人事を尽くして天命を待つ」という二枚腰の考え方。死に方にこだわるよりも、生きることに注力する。全部仕切ろうとせず、任せるところは任せる。これが賢明ではないだろうか。
〇 結局のところ、最も大事な「終活」は、遺言状と、「思ったようにならないこともある」とのわきまえ。これに尽きるといえる。
仰るとおりだ、と思います。
「終活」をする意味
昨年、新著「<ひとり死>時代の死生観―『一人称の死』とどう向き合うか―」(朝日新聞出版)を上梓したシニア生活文化研究所代表理事の小谷みどり氏も、概略次のように述べています。
https://www.asahi.com/relife/article/15803671
〇 「終活」ブームになって、自分のお葬式や相続をどうしようかなと考える人は増えましたが、私の中に何か違和感がありました。
〇 相続も「遺言書を書いておきましょう」というのは、死んでいく人と遺される人がいるから成立するもので、相続する人がいなければ全て国庫に入ります。
〇 私が考える「終活」の一番の目的は、その時のために、自分と周りの人間関係を見つめ直すことです。自分がどう生きたいのか、周りの人とどう関係を築いていきたいのか。生きている時もそうだし、亡くなった時もそれが続いていく。
〇 単にお葬式や家の片付けをどうしたいかという問題だけでなく、自分はどう関係を築きたいか、どんな生き方をしたいか、どんな死に方をしたいかを、まず大枠で考えることがすごく大事だと思います。
〇 将来への不安は人それぞれですよね。大事なのは「今を生きる」ことなので、起きるかどうか分からないことを、やみくもに不安に思うのは時間がもったいない。とはいえ、ただ不安に思うなと言っても難しいので、自分が何を不安に思っているのかを知れば、安心できると思います。
〇 まずは自分を知り、自分が何を不安に思っているかを知り、その不安を解消して、今を生きる。そのためにも死生観を持ち、自分がどんなふうに生きたいのかを考えることがすごく大事だということを、この本にまとめました。
〇 結局は人間関係があれば安心できるのではないかと思います。人に迷惑をかけてはいけないから、自分のことは自分でというのが美徳とされていますが、できないことを「助けて」と言える強さを持つことはとても大事です。高齢者は自立できなくなったら、人の手を借りなければならない。その時に「助けて」と言って、助けてくれる人に迷惑だと思わせない人間関係を、日頃から築いておけばいいわけですよね。手間を迷惑と思わせない人間関係を築いておけば、「終活」をしなくても、少しは不安が解消されると思います。
誤解を恐れずに言えば、小谷氏は、“最優先事項は、本人が①これからどのように生きたいか、②どのような死に方をしたいか、そして③家族や友人の方々とどのような関係を築きたいかを考え抜くことであり、「終活」は、①②③の思いや考えを実現するための手段に過ぎない”と言っておられるのではないでしょうか。
本人が死生観や周囲との人間関係についてある程度しっかりした考えを持っていないと、最悪の場合、終活ビジネス事業者の思惑などに振り回されて本人の満足は得られないのみならず、費用ばかりが嵩(かさ)んでしまうことにもなりかねません。
シニアは何をすべきか
以上を踏まえ、シニアは何をすべきかについて、私の考えを述べます。
まず第1に、前記の①②③を、箇条書きでよいので、A4用紙1枚程度にまとめてみましょう。
第2に、冒頭のⒶⒷを参考にして、A4用紙にまとめた内容を実行するためになすべきことをリストアップしてみましょう。
第3に、なすべきことがとりあえずまとまったら、その内容を親しい方や専門家等に伝え、疑問点や不明点を相談してみましょう。
相談先は、疑問点等の内容によって多岐にわたりますが、まずはご家族、信頼できる知人・友人、又は自治体の窓口などに相談するのがよいと思います。
以下、相談先の候補となる専門家を列挙します。
〇 市区町村の窓口
市区町村の窓口では、福祉・医療・介護に関する相談が可能です。役場の総合案内やホームページでどこに相談すべきか確認してみましょう。
これらの窓口では、高齢者向けの各種支援サービスや介護保険制度についての案内、エンディングノートの配布や書き方の説明なども行っています。
https://shukatsu-support.jp/column/municipality/#colm01
〇 医療・介護に関する相談先
地域包括支援センター、医療機関、介護事業者などが考えられます。
〇 財産整理・財産管理・相続に関する相談先
ファイナンシャル・プランナー、弁護士(遺言書作成等)、司法書士(不動産登記等)、税理士(相続税対策、遺産整理等)、銀行の信託部門などが考えられます。
〇 葬儀・お墓に関する相談先
葬儀社、霊園、寺院などが考えられます。
以上3つのプロセスを通じて、皆様がこれからの生き方について何らかのヒントを得られるとすれば、とても嬉しいです。
終活ビジネス事業者の見極め方
2024年4月22日付け朝日新聞によると、終活サービスや葬儀を巡る消費者トラブルが相次いでいるそうです。
埼玉県消費生活支援センターには、終活や葬儀に関する相談が毎年100件以上(2021年度163件、2022年度191件、2023年度151件)寄せられていて、2021年には、広告で「追加料金一切不要のお葬式」などとうたっていた全国展開する葬儀サービス業者が、実際には表示された以外の追加料金が必要だったとして、消費者庁から景品表示法違反で課徴金納付命令を受けるケースもあったそうです。
https://www.asahi.com/articles/ASS4P3RHFS4PUTNB00YM.html
上記記事も踏まえ、信頼できる終活ビジネス事業者を選ぶ際には、以下の点に注目しましょう。
〇 情報の透明性と明確さ
サービス内容と料金体系が明確に示されていることが重要です。
・ サービス内容の具体性:サービスの範囲や内容が具体的に説明されているか。
・ 料金体系の明確性:見積書等に追加費用の有無が細かく記載されているか。
・ 情報提供の積極性:質問に対して明確に回答し、不明瞭な点がないか。
〇 専門性と柔軟な対応
顧客の個別の事情に柔軟に対応できるか、専門知識が豊富かを確認しましょう。
・ 幅広い対応能力:遺品整理、相続相談など、多岐にわたるニーズに対応できるか。
・ 専門家の在籍:終活カウンセラー、弁護士、司法書士などの専門家がいるか。
・ 個別相談の充実:個別相談会や家族向け説明会などが設けられているか。
〇 信頼性の確認と実績
第三者機関による評価や実績もチェックしましょう。
・ 評価基準や認定:事業者が明確な評価基準に基づく評価や認定を受けているか。
・ 実績と経験:設立以来の契約者数や経験の豊富さが公表されているか。
・ 口コミ・評判:実際に利用した人の口コミや評判を参考にすることができるか 。
〇 スタッフの対応
担当スタッフの対応ぶりも、十分チェックしましょう。
・ 丁寧な言葉遣い:相談時の態度や言葉遣いが適切か。
・ 親身な姿勢: 利用者の話を親身になって聞いてくれるか。
・ 強引さがないか: 契約を不必要に急がせたり、高圧的な態度で契約させようとしていないか。
〇 体制とアフターサポート
契約後のサポート体制や、いざという時の対応も確認しましょう。
・ 顧客管理システム:ADL(activities of daily living。日常生活動作)、既往歴、服薬情報など顧客情報が適切に管理されているか。
・ 見守り契約の有無:定期的な見守りや状況確認が行われるのか。
・ 緊急時の対応:24時間対応窓口など、緊急時の連絡体制が整っているか。
なお、事業者との関係で困ったときは、一人で悩まずに、自治体の相談窓口や「消費者ホットライン」188に相談するなどしましょう。
以上、「終活」をする意味や終活ビジネス事業者の見極め方などについてお話ししました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。ご意見・ご感想がありましたら、コメントを付けていただければありがたいです。
次回も、今回に皆様から寄せられたご意見や近頃の巷(ちまた)の話題等を踏まえ、シニアライフを楽しむためのヒントなどについてお話しします。
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