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第25話|朝焼けプラネタリウムの、まだ知らない願い

今日も、おつかれさま。

もう、
今さらかもしれない。


昔はあった。


なりたかったもの。
行きたかった場所。
叶えたかった夢。


でも。


大人になるって、
少しずつ
“現実的”になることだと
思っていました。


できること。
向いてること。
失敗しないこと。


そうやって
選んでいくうちに。


“本当に願ってたこと”は、
静かに
しまいこまれていく。


忘れたわけじゃない。


ただ――


もう
見ないように
していただけ。


「……まだ、
間に合うのかな」


そんな朝の前。


眠れないまま
歩いた
始発前の街。


空が
夜と朝のあいだで
ゆれている。


そのとき。


見上げた先。


古い時計塔のとなりに、
丸いドーム。


やわらかな光。
星の看板。


「朝焼けプラネタリウム」


“まだ知らない願い、
 映します”



扉を開く。


静かな館内。
誰もいない座席。


でも。


天井いっぱいに、
星。


夜じゃないのに。


朝なのに。


星が
消えていない。


「ようこそ」


現れたのは、
朝焼け色の制服を着た
案内人。


金と薄青の瞳。
やさしい声。


「ここは、
あきらめたと思っていた願いを
映す場所です」


「……あきらめた、
と思っていた?」


案内人は
頷きました。


「なくなった願いより」


「見ないふりをしている願いのほうが、
多いんです」



やがて。


星空が
動き出す。


映ったのは。


小さいころの
自分。


夢中で
絵を描いてる。


笑ってる。


“こんなの作りたい!”
“こうなりたい!”


上手とか。
無理とか。
遅いとか。


まだ
知らなかったころ。


女性は、
思わず
涙ぐみました。


「……いた」


「まだ、
ここにいた」


案内人は
静かに
言いました。


「願いは」


「叶わなかったら
消えるんじゃなく」


「気づいてもらえる日を
待つことがあります」



胸の奥で。


小さく。


でも、
確かに。


光るもの。


大きな夢じゃなくてもいい。


今すぐ
全部じゃなくてもいい。


ただ。


“もう遅い”で
終わらせなくていい。


女性は、
そっと
手をのばす。


すると。


朝の空に、
ひとつの星。


それは
夜の星じゃなく。


“これから”の星。



もし今日、
夢なんて
もう遅いって
思ったなら。


大丈夫。


願いは、
年齢で
消えたりしない。


遠回りしても。
止まっても。
見失っても。


また
見上げればいい。


まだ知らない未来は、
まだ
終わってない。


だから。
“今さら”じゃなく、
“ここから”でもいい。


大丈夫。


朝焼けの空にも、
星は
ちゃんといる。


見えにくいだけで。


明日が、少しだけやさしくなりますように。


あなたは今日、

“もう遅いと思っていた願い”にも

もう一度、空を見せてあげられましたか?

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