(お題ss潮風の戯れ言)月だけが知っている
浜辺の白いカフェ。小さなテーブルには、椅子が二つ。一つに深く腰掛け、左手で薄いブルーのカクテルを飲む。
空いた右手は所在なく、テーブルに投げ出した。
なんでなんだろうね。
問いかけはグラスか、風か。あるいは自分自身にだったかもしれない。
なんで━━
言葉は続かない。その答えは、自分がよく分かっているから。
反対側の空いた椅子を見つめる。今も、そこに座っているような気がした。
でも、それは叶わない。
右手は空気を握った。過去の温もりを探すように。
左手の指輪がグラスに触れた。硬質な響きは風に溶けてゆく。音と砂が混じった風の行方を、酔った目で追いかけた。
潮風の戯れ言を。届くことのない言葉を探すように。
飲みかけのグラスは倒れ、机を濡らしている。
浜辺の白いカフェのテーブルには、もう誰も居ない。
砂浜には足跡が波打ち際まで続いている。
波が押し寄せて足跡を隠した。
それを月だけが見ていた。
潮風の戯れ言が響いた、気がした。
参加させていただきました!ありがとうございます。
