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【小説・宵待乱舞はカウンターに灯る。】


楮原繭は、その夢を三度見た。

一度目は、ただの灯りだった。

二度目には、形があった。

三度目には、それが宵待酒場のカウンターに置かれていた。

だからといって、繭は未来を見たとは思わなかった。

夢は夢だ。

昨日見たものが混ざることもある。

忘れていた記憶が、違う顔をして現れることもある。

自分でも気づいていない願いを、出来事のように見せてくることもある。

それでも。

三度目の夢から目を覚ました朝だけは、しばらく布団から起き上がれなかった。

あまりにも、

灯りがきれいだった。


夢の中の宵待酒場には、誰もいなかった。

夜坂朔も。

朝倉咲耶も。

マイル=ベルツも。

水城澪も。

誰もいない。

グラスも片づけられている。

椅子もカウンターの下へ収まっている。

閉店後なのか。

開店前なのか。

それさえ分からない。

ただ、

カウンターの中央に、一つだけ灯りがあった。

見たことのないランプだった。

丸い。

けれど、丸くない。

細い骨のような線が、下から上へ伸びている。

途中でねじれ、

別の線と交差し、

離れ、

また重なる。

完全な規則性はない。

なのに崩れてもいない。

その骨格の一部を、薄い紙のようなものが覆っていた。

透けるところ。

透けないところ。

繊維が濃く残っているところ。

小さく穴が開いているところ。

内側の灯りがそれらを通り、

カウンターに影を落としている。

繭には、

それが水にも見えた。

花にも見えた。

夜空にも見えた。

風がないのに、

最後に一度だけ。

影が大きく揺れた。

そこで目が覚めた。


数日後。

繭は宵待酒場でその話をした。

別に話すつもりはなかった。

咲耶が、

「繭、今日ぼーっとしてない?」

と言ったから、

仕方なく話しただけだった。

「ランプ?」

咲耶がすぐ食いついた。

「はい」

「宵待に?」

「夢の中では」

「それ絶対――」

「夢です」

繭が先に言った。

咲耶が止まる。

「まだ何も言ってない」

「何かの意味がある、とか言うかと思って」

「言おうとはした」

カウンターの端で本を読んでいたマイルが顔を上げた。

「夢を見た、という事実までは確認できます」

咲耶。

「始まった」

マイル。

「ただし、その夢が未来の情報を含むかどうかは確認できません」

繭。

「はい」

「本人が分かっているなら問題ありません」

「夢にまで監査入るんだ」

咲耶が言った。

マイルは本へ戻った。

「入れていません」

そのやり取りを聞きながら。

夜坂は別のところに引っかかっていた。

「そのランプ」

繭を見る。

「形、覚えてます?」

「少しだけ」

「描けます?」

繭は夜坂を見る。

「絵、上手くないですよ」

「俺も別に絵が欲しいわけじゃないです」

「じゃあ?」

「形が知りたい」

夜坂は紙ナプキンとペンを出した。

「描いてみてください」


繭は丸を描いた。

「違います」

自分で言った。

消す。

もう一度描く。

「もっと下が細かったような」

線を足す。

「上は?」

「少し開いてた気がします」

「穴?」

「穴というより」

繭は手で形を作る。

「上へ流れてる感じ」

夜坂。

「絵でお願いします」

「だから描けないって」

咲耶が横から覗く。

「花みたいじゃない?」

「花ではなかったです」

「じゃあ、渦?」

「渦でもない」

マイルも見る。

「外形より内部構造を描いた方がいいのでは」

繭。

「内部?」

「線の流れです」

繭は考えた。

そして。

丸い輪郭の中へ、

何本か線を引いた。

真っ直ぐではない。

少しずつねじれる。

途中で交差させる。

「こんな感じ?」

夜坂。

「もっと?」

「もっとあります」

線を増やす。

「でも、こんなに揃ってない」

夜坂。

「揃ってない?」

「もう少し」

繭は言葉を探した。

「勝手に動いてる感じ」

夜坂が紙を見た。

「勝手に動く線を設計しろと」

「私は作ってって言ってません」

「でも」

夜坂は紙を持ち上げた。

「これ、作れるかもしれない」

繭。

「何を?」

「ランプ」

咲耶が笑った。

「始まった」

マイル。

「今度はこちらですか」


一週間後。

繭は夜坂の山の家にいた。

古い家。

井戸。

畑。

都会の宵待酒場とは、音の種類が違う。

車の代わりに風がある。

冷蔵庫の低い音の向こうに、

鳥が鳴いている。

その一室だけ、

場違いなくらい機械的だった。

机の上にはノートパソコン。

その横に、

3Dプリンター。

画面には、

白い立体モデルが表示されていた。

夜坂がマウスを回す。

画面の中で、

ランプの骨格が回転した。

「一号」

繭は見る。

「違います」

「早いですね」

「きれいすぎます」

「悪口みたいですね」

「もっと、線がばらばらだった」

夜坂は別のデータを開く。

「二号」

「……近いです」

「お」

「でも上が固い」

「固い?」

「閉じてる感じ」

「開けばいい?」

「ただ開くんじゃなくて」

繭は手を上へ動かす。

「抜けていく感じ」

夜坂が繭を見る。

「夢って便利ですね」

「何が?」

「物理法則の説明が一切いらない」

繭が笑った。

「私も困ってます」


三号。

四号。

五号。

繭は、

違う。

近い。

ここは好き。

そこは違う。

を繰り返した。

夜坂は怒らなかった。

ただ修正した。

ある時。

画面に映った形を見て、

繭が言った。

「これ」

夜坂が止まる。

「はい」

「かなり近いです」

「夢に?」

繭は少し考える。

「……たぶん」

夜坂。

「たぶん?」

「夢なので」

「強いな、その逃げ道」

「だから最初から言ってます」


プリントは、

一度では成功しなかった。

最初の試作品は、

途中で細いリブが倒れた。

二つ目は、

形にはなったが、

持ち上げた瞬間に一部が折れた。

三つ目。

夜坂が少し太くした。

繭が言う。

「太いです」

「強度がいるんですよ」

「夢ではもっと細かった」

「夢には重力ないんですか」

「知りません」

四つ目。

強度は出た。

でも、

点灯すると影が細かすぎた。

夜坂が部屋の照明を落とす。

壁に、

ごちゃごちゃした黒い線が投影される。

繭。

「うるさいですね」

夜坂。

「俺もそう思います」

「夢はもっと静かでした」

「影に静かとかあるんですね」

「ありました」

「夢、強いなあ」


削る。

増やす。

穴を広げる。

リブの角度を変える。

少しだけ左右を崩す。

上へ向かう線を増やす。

きれいな対称形にすると、

繭が首を振った。

「違う」

「何が?」

「正しすぎます」

「工業製品なんで、正しい方が」

「でも夢はこんなに正しくなかった」

夜坂は画面を見た。

しばらくして。

一つのリブを、

ほんの少しずらした。

別のリブを、

逆方向へ捻った。

「これなら?」

繭が見る。

「……いい」

「崩しただけですけどね」

「人の手みたいになった」

その言葉で、

夜坂は手を止めた。


翌朝。

3Dプリンターが、

低い作動音を出していた。

白い樹脂が、

一層ずつ積み上がる。

まだ底しかない。

その上に、

少しずつ線が立ち上がっていく。

繭は長いこと見ていた。

「飽きないですか」

夜坂がコーヒーを持ってくる。

「変なんですよ」

「何が?」

「夢で見たものが」

ノズルを見る。

「一層ずつ現実になっていく」

夜坂もプリンターを見る。

「夢かどうかは分かりませんけどね」

「はい」

「今ここにあるのは、樹脂とGコードです」

繭が笑った。

「そういうところ、マイルさんみたいですね」

「それ本人の前で言わないでください」


数時間後。

骨格ができた。

白い。

有機的なねじれ。

細いリブ。

上へ抜ける空間。

繭は両手で持ち上げる。

夢の中のものと、

似ている。

でも。

違う。

夜坂がLEDを仮に入れた。

点灯する。

白い骨格だけでは、

光はほとんど素通りした。

影はできる。

けれど。

夢にあった柔らかさがない。

繭はしばらく見た。

「まだ違います」

夜坂。

「でしょうね」

「怒らないんですね」

「骨だけだから」

夜坂は繭を見る。

「ここから、そっちじゃないですか」

「私?」

「夢では、紙みたいなものが貼ってあったんでしょう」

繭は、

白い骨格を見た。

そこで初めて。

自分の仕事が残されていることに気づいた。


数日後。

繭は和紙を持ってきた。

自分で漉いたもの。

白。

少し生成り。

繊維が細かいもの。

太い繊維を残したもの。

薄いもの。

厚いもの。

夜坂が並べられた紙を見る。

「全部貼るんですか」

「全部は貼りません」

「じゃあ?」

「光を見ながら決めます」

夜坂。

「夢を再現するんじゃないんですか」

繭は一枚の和紙を持ち上げ、

窓からの光へ透かした。

「もう無理です」

「諦めた?」

「違います」

繭は骨格へ紙を当てる。

「これはもう」

指で位置を探す。

「夢の中のランプじゃないから」


最初の一枚。

糊を薄く塗る。

骨格へ貼る。

指で押さえる。

乾くのを待つ。

次の一枚。

少し重ねる。

三枚目は、

あえて繊維が濃いところを残す。

四枚目は貼らない。

隙間のままにする。

夜坂が聞く。

「そこ、開けるんです?」

「はい」

「夢でも?」

「覚えてません」

「じゃあ、なぜ?」

繭は少し考えた。

「今、開けた方がきれいだから」

夜坂は頷いた。

それ以上、

夢の話をしなくなった。


二人で作っている。

そう思ったのは、

その頃だった。

始まりは、

確かに繭の夢だった。

でも。

形を作ったのは夜坂だった。

3Dプリンターが、

夜坂の設計を樹脂へ変えた。

繭はそこへ、

自分の紙を貼っている。

夢の中にはなかった判断が、

何十回も入っている。

もう。

誰のものなのか、

少し分からない。

その方が、

繭には心地よかった。


最後の和紙を貼り終えた夜。

二人は完成したランプを、

宵待酒場へ運んだ。

まだ誰にも言わない。

閉店後。

誰もいない店。

カウンター中央に置く。

繭は、

一瞬だけ立ち止まった。

似ている。

夢に。

客のいない店。

暗いカウンター。

中央に置かれた、

一つのランプ。

夜坂が聞く。

「点けます?」

「はい」

天井灯を落とす。

ボトル棚の照明を消す。

店が暗くなる。

夜坂がスイッチを入れた。


橙色の光が、

和紙の中から滲んだ。

薄いところは明るく。

厚いところは深く。

繊維の一本一本が、

小さな影になる。

骨格のねじれが、

カウンターへ落ちる。

一本。

もう一本。

線が重なる。

壁へ伸びる。

グラスの丸みを通って、

形を変える。

白い紙が、

灯りの中で少しだけ黄色くなる。

繭は、

何も言わなかった。

夜坂が聞く。

「どうです?」

長い沈黙。

「違います」

夜坂。

「やっぱり?」

「はい」

繭は笑った。

「夢と違います」

「失敗?」

繭は首を振る。

灯りを見る。

「こっちの方が、好きです」


翌日。

最初に見つけたのは、

咲耶だった。

階段を上がってきて、

カウンターを見る。

止まる。

「何これ!」

夜坂。

「ランプ」

「それは分かる!」

咲耶は近づく。

「いつ作ったの?」

「最近」

「買ったんじゃないの?」

「作りました」

「誰が?」

夜坂が繭を見る。

繭が夜坂を見る。

咲耶。

「何その目配せ」

「二人で」

繭が答えた。

「え」

咲耶の顔が変わる。

「何それ、ちょっといい話じゃん」

夜坂。

「まだ何も話してません」


そのあと、

マイルが来た。

水城澪。

榊冬馬。

蛇口僧。

御影岐。

高瀬梢。

結果として、

ランプの周りに人が集まった。

榊は骨格を見る。

「これ、積層方向どうしたんです?」

咲耶。

「そこから?」

「3Dプリントでしょう?」

夜坂。

「はい」

「上のリブ、結構攻めてません?」

「何回か失敗しました」

榊はしゃがんで覗く。

「ここ、サポートなし?」

「先生」

咲耶が言う。

榊。

「だから先生じゃないです」


マイルは、

和紙の貼り方を見ていた。

「全面を覆っていないんですね」

繭。

「はい」

「意図的に?」

「ほとんどは」

「ほとんど?」

「途中から、なんとなくのところもあります」

マイルが少し考える。

「製作工程として記録しておいた方が」

咲耶。

「マイルも先生」

「私は再現性の話を」

梢。

「同じの、もう一個作りたいの?」

マイルが止まる。

「……その予定がないなら不要ですね」

夜坂。

「珍しく早い」


蛇口僧は、

カウンターに落ちた影を見ていた。

「水みたいですね」

御影岐。

「俺は星に見えます」

榊。

「構造としては螺旋ですね」

マイル。

「複数の要素を重ねて知覚しているだけでは」

咲耶。

「私は花」

梢。

「私はランプ」

全員が梢を見る。

梢。

「何?」

咲耶。

「もうちょっと何かない?」

「きれいなランプ」

「強いなあ」


澪は、

少し離れたところから見ていた。

繭が聞く。

「澪ちゃんは?」

澪は、

上の開口部を見る。

そこから光が細く天井へ抜けている。

「窓みたいです」

咲耶。

「どこが?」

「分からない」

少し考える。

「帰る場所の窓みたいに見えました」

そしてすぐに。

「そう見えただけです」

と言った。

マイルが小さく頷いた。

澪。

「なんですか」

「何も」


咲耶が繭へ聞く。

「で、これ何がきっかけだったの?」

繭は答える。

「夢」

一瞬。

静かになる。

御影岐の顔が明るくなる。

「ほら!」

マイル。

「まだ何も“ほら”ではありません」

「絶対なんかあるじゃないですか」

繭。

「三回見ました」

御影。

「三回!」

「でも、夢です」

「未来の――」

「夢です」

マイル。

「本人が最も冷静ですね」

蛇口僧がランプを見る。

「でも、夢で見たのと同じなんですか」

繭。

「違います」

御影。

「違う?」

「かなり似てますけど」

和紙へ触れないように、

指を近づける。

「夢より、こっちの方が好きです」

御影は少し残念そうな顔をした。

「予言の完成じゃないのか」

夜坂。

「完成させたの、俺らなんで」


人が増えるほど、

影が動いた。

咲耶が身を乗り出す。

花のような模様が崩れる。

榊が反対側へ回る。

細い影が一本消える。

蛇口僧がグラスを持ち上げる。

和紙を通った光が、

ガラスの中で屈折する。

御影が席をずらす。

壁の星が、

少し伸びる。

繭は、

それを見ていた。

そして。

気づいた。

夢では。

最後に一度だけ、

影が大きく揺れた。

今は。

ずっと揺れている。

誰かが笑うたび。

誰かが手を動かすたび。

人の影が、

ランプの影へ入り込む。

離れる。

また重なる。


「名前は?」

咲耶が聞いた。

夜坂。

「まだないです」

「作ったのに?」

「名前から作るタイプじゃないんで」

御影。

「これは意味を先に読んで」

マイル。

「不要です」

「まだ言ってないでしょう」

榊。

「構造からなら、螺旋――」

咲耶。

「先生も待って」

「だから」

その時。

繭が言った。

「乱舞」

全員が止まる。

咲耶。

「乱舞?」

繭は、

カウンターに揺れる影を見る。

「はい」

「何が?」

「分からないです」

少し笑う。

「でも、なんとなく」

夜坂がランプを見る。

「宵待乱舞」

繭。

「……いいですね」

咲耶。

「決まるの早っ」

マイル。

「命名理由は?」

繭。

「今の影です」

「それだけ?」

「はい」

マイルは少し考え、

「十分ですね」

と言った。


閉店後。

人が帰った。

繭だけが残っていた。

カウンターの中央では、

宵待乱舞がまだ光っている。

夢と似た景色。

でも。

違う。

夢では、

誰もいなかった。

今は。

空になったグラスが残っている。

咲耶が座っていた椅子が、

少し斜めになっている。

榊が書きかけた紙ナプキンがある。

蛇口僧が忘れかけたハンカチもある。

人がいた痕跡が、

あちこちに残っている。

夜坂がグラスを洗いながら聞いた。

「で」

「はい」

「結局」

「はい」

「予知夢だったんですかね」

繭は笑った。

「夜坂さんがそれ聞くんですね」

「作った側として、一応」

繭は灯りを見る。

夢で先にこれを見たのか。

それとも。

繭の中にあった像を、

夢が見せただけなのか。

その像を夜坂へ話したから、

夜坂が形にしたのか。

結果が似ているから、

あとから意味を感じているだけなのか。

分からない。

だから。

繭は、

分かることだけを言った。

「夢で見なかったら、これは作らなかったと思います」

夜坂が頷く。

「それは確かですね」

「はい」

それで話は終わった。


夜坂が天井灯を消す。

最後に残る、

宵待乱舞の光。

繭は、

もう一度それを見る。

夢の中で見た灯りを、

そのまま現実へ持ってきたわけではない。

夢には、

CADもなかった。

失敗したプリントもなかった。

折れたリブも。

夜坂の悪態も。

糊の匂いも。

乾くのを待った時間も。

和紙に残る繭の指先も。

何一つなかった。

夢では完成していた。

現実では、

完成するまでに人が必要だった。

そして。

完成した後にも、

人が必要だった。

誰もいなければ、

ただ一つの灯り。

誰かが座れば、

その人の影が加わる。

別の人が来れば、

また形が変わる。

その夜ごとに。

違う模様になる。

だから。

夢で見たものより、

こっちの方がよかった。


夜坂がスイッチへ手を伸ばす。

「消しますよ」

「はい」

宵待乱舞が消える。

白い骨格と和紙だけが残った。

繭は、

少しだけ不思議な気持ちになる。

夢から出てきたように見えたものが。

灯りを消せば、

ちゃんとただの物になる。

樹脂。

和紙。

糊。

LED。

人の手。

それでいい。

むしろ。

それがいい。


翌日の夜。

宵待乱舞は、

またカウンターに灯った。

誰かが、

「花みたいですね」

と言った。

別の客は、

「魚の骨みたい」

と言った。

夜坂は笑った。

繭も笑った。

どちらも訂正しなかった。

夢の意味を説明する必要もない。

誰かの未来を証明する必要もない。

ただ。

一度、

繭の眠りの中にあったものが。

夜坂の画面へ移り。

機械の中で積み上がり。

繭の和紙をまとい。

今。

誰かのグラスの横を照らしている。

夢だったものは、

夢のままでは残らなかった。

人の手を通るたび。

少しずつ変わった。

そして。

変わったからこそ、

ここにある。

カウンターに落ちた影が、

誰かの笑い声で揺れる。

花にも。

水にも。

星にも。

何にも見えない影にもなる。

宵待乱舞は、

何も語らない。

ただ今夜も。

それぞれ違う人たちの間で、

静かに、

乱舞していた。




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神原月見|言語化審神者(げんごかさにわ) 再び空を飛ぶ為の訓練費用に使わせていただきますm(_ _)m