【POWI】Power Integrations
Power Integrationsの簡単な歴史
◾️創業者と創業期の歩み
高電圧電力変換の集積化を目指した創業
Power Integrationsは1988年、Klas Eklund氏、Art Fury氏、Steve Sharp氏によって設立されました。創業者たちは、電源装置の中で大きな面積を占めていた部品や複雑な回路を、より小型で効率的な半導体へ置き換えることを目指しました。当時の電源回路では、高電圧を扱うトランジスター、制御回路、保護回路、起動用部品などを個別に組み合わせる構成が一般的でした。この方法は設計の自由度がある一方で、部品点数が増え、基板が大きくなり、コストや信頼性の面でも課題がありました。Power Integrationsは、高電圧スイッチと制御回路を一つのICへ組み込むことで、電源設計を簡素化する方向へ進みました。
最初の商業製品TOPSwitch
同社の最初の代表的な商業製品は、1994年に登場したTOPSwitchです。TOPSwitchは、AC電源を電子機器が利用できるDC電力へ変換するAC-DC電源向けのICでした。電源変換に必要な機能を一つのチップに集約することで、従来のディスクリート部品を多く使う設計と比べ、回路の小型化や設計工数の削減を可能にしました。家電、通信機器、パソコン周辺機器など、電源を必要とする製品へ幅広く利用できることが、同社の成長を支えました。
効率規制とEcoSmart技術
1990年代後半には、電子機器が待機中に消費する電力が問題になりました。電源アダプターや家電は、機器を使用していない時間にも一定の電力を消費することがあり、こうした無駄な電力は「待機電力」と呼ばれます。Power Integrationsは、TinySwitchなどの製品に省エネルギー技術を組み込み、待機時の消費電力を抑えることを目指しました。EcoSmartという考え方を製品や企業メッセージに取り入れ、電力変換効率の向上を同社の重要な差別化要素として打ち出していきました。
◾️商業化から現在の事業基盤へ
1997年のNASDAQ上場
Power Integrationsは1997年12月にNASDAQへ上場しました。上場後は、AC-DC電源向けICを中心に、LED照明、モーター制御、産業設備、再生可能エネルギーなどへ製品群を広げました。同社は大規模な最終製品を販売するのではなく、電子機器メーカーや電源メーカーが自社製品に組み込む部品を提供しています。そのため、一つの半導体が多くの製品へ採用されれば、同じ設計が量産期間中に繰り返し使われる可能性があります。
製品ポートフォリオの拡張
2002年にはLinkSwitchシリーズを導入し、従来型の電源トランスを使う構成に対して、より小型で効率的な電源設計を提案しました。その後、LED照明向けのLYTSwitch、モーター制御向けの製品、高電圧ゲートドライバーなどを追加しています。2011年には高電圧ダイオードのQspeed Semiconductorを買収し、2012年にはIGBTゲートドライバーを手がけるスイスのCT-Concept Technologieを買収しました。2015年には英国の電源管理IC企業CamSemiを取得し、製品技術の幅を広げています。
Jennifer Lloyd氏へのCEO交代
Power Integrationsでは、長年にわたってBalu Balakrishnan氏が経営を主導してきました。Balakrishnan氏は2002年にCEOへ就任し、電力変換ICから高電圧ゲートドライバー、車載・産業向け製品まで事業を拡張しました。2025年にはJennifer Lloyd氏が最高経営責任者に就任しました。現在のPower Integrationsは、従来型の充電器や家電向け製品だけでなく、電気自動車、再生可能エネルギー、蓄電池、電力網、AIデータセンターなど、電力需要の増加と効率改善が同時に求められる市場へ重点を置いています。
Power Integrationsの事業内容
◾️主力事業はAC-DC電源ICとPowiGaN
AC-DC電源変換IC
Power Integrationsの主力事業は、交流電力を電子機器が使える直流電力へ変換するAC-DC電源ICです。家庭用コンセントから供給されるAC電力は、そのままではスマートフォン、パソコン、テレビ、家電、ネットワーク機器などの内部回路へ供給できません。そこで、電圧を下げ、電流を制御し、必要な直流電力へ変換する電源回路が必要になります。Power IntegrationsのICは、この電源回路の主要機能を集積し、部品点数の削減、回路の小型化、電力損失の低減を支援します。
TOPSwitch・TinySwitch・LinkSwitch
TOPSwitchは、同社の歴史を象徴する電源ICシリーズです。TinySwitchはより小型の電源機器に適した製品群で、待機電力の低減や小型化を意識しています。LinkSwitchは、家電や照明、メーター、補助電源など幅広い用途に対応する電源ICです。これらの製品は、スマートフォン充電器、セットトップボックス、家電、電動工具、ネットワーク機器など、比較的数量の多い市場で使われています。
PowiGaNによる高効率化
Power Integrationsは、窒化ガリウムを使ったPowiGaN技術を展開しています。GaNはシリコンと比べて高速スイッチングに適しており、電源回路の小型化や高効率化を実現しやすい材料です。同社のGaN製品は、急速充電器、産業用電源、電気自動車、再生可能エネルギー、AIデータセンターなどを対象としています。2025年通期の決算では、PowiGaN製品の売上高が前年比40%以上増加したと会社が説明しています。
◾️副事業はゲートドライバー・モーター制御・高電力用途
高電圧ゲートドライバー
Power Integrationsは、IGBT、MOSFET、SiC MOSFETなどのパワー半導体を制御する高電圧ゲートドライバーも提供しています。ゲートドライバーは、パワー半導体を適切なタイミングでオン・オフするための部品です。電力変換装置では、スイッチングの速度や正確性が効率、発熱、信頼性に影響します。ゲートドライバーが高電圧側と制御回路側を適切に絶縁・接続することで、太陽光発電インバーター、風力発電、蓄電池、EV充電器、産業用モーターなどの制御が可能になります。
再生可能エネルギーと電力網
太陽光発電や風力発電では、発電した電力を送電網や蓄電池へ適した形に変換する必要があります。発電量は天候によって変わるため、電圧・電流の制御、電力の安定化、蓄電池との接続が重要です。Power Integrationsのゲートドライバーや高電圧半導体は、こうした電力変換装置の構成部品となります。再生可能エネルギーの導入が進むほど、発電設備だけでなく、電力を変換・制御する半導体の需要も増える可能性があります。
モータードライバー
冷蔵庫、エアコン、洗濯機、換気扇、ポンプ、ファンなどには、モーターを効率的に制御するためのICが使われます。Power Integrationsは、ブラシレスDCモーターを制御する製品を提供しています。モーターを常に最大出力で動かすのではなく、負荷に応じて回転数を調整することで、消費電力や騒音を減らせます。家電の省エネルギー規制が強化されれば、モータードライバーの性能や効率が採用判断に影響する可能性があります。
AIデータセンター向け800VDC構想
AIデータセンターでは、GPUを大量に搭載するため、電力消費と発熱が大きな課題になっています。NVIDIAは、将来のAIデータセンターで800Vの直流配電を利用する構想を示しており、Power Integrationsはこの電源エコシステムに参加しています。同社はGaN製品を通じて、AIデータセンターの高電圧・高効率電力変換に関わる可能性があります。ただし、NVIDIA向けの具体的な売上高や採用数量、量産時期は公表されていません。
Power Integrationsの収益構造まとめ
◾️主力収益は半導体製品の販売
標準品の数量販売
Power Integrationsの売上高は、AC-DC電源IC、GaN製品、ゲートドライバー、モータードライバーなどの半導体製品販売によって構成されています。同社の製品は、電子機器メーカーや電源メーカーが自社製品へ組み込むため、一般消費者がPower Integrationsの名前を直接目にする機会は多くありません。しかし、同社の部品が採用された充電器、家電、LED照明、産業装置などが市場へ出荷されることで売上が発生します。
ファブレスに近い製造モデル
Power Integrationsは、自社ですべての半導体製造工程を完結させるのではなく、外部ファウンドリからウエハを購入し、外部の委託先で組立・パッケージング・検査を行っています。この構造は、巨額の工場投資を抑えながら製品開発へ資金を振り向けられる一方、製造委託先のキャパシティ、価格、品質、為替、供給障害の影響を受けやすいという特徴があります。
販売代理店経由の収益
2025年の売上高のうち、販売代理店経由の売上は約3億460万ドルで、全体の約69%を占めました。直接販売は一部にとどまり、多くの製品が電子部品販売代理店や電源メーカーを経由して顧客へ届いています。販売代理店を活用することで、世界中のOEMや電源メーカーへ効率的に販売できます。一方で、代理店の在庫調整や発注のタイミングが、四半期ごとの売上変動につながることがあります。
◾️直近決算・顧客・将来の収益目標
2025年通期の財務状況
2025年通期の売上高は4億4,350万ドルで、2024年の4億1,900万ドルから約6%増加しました。営業面では産業分野が成長し、高電力ゲートドライバー、電力メーター、電気自動車、バッテリー駆動工具などの需要が寄与しました。2025年の粗利益は2億4,160万ドル、粗利益率は54.5%でした。GAAP純利益は2,210万ドル、希薄化後1株利益は0.39ドルでした。営業活動によるキャッシュフローは1億1,150万ドルで、安定したキャッシュ創出力が確認できます。
2026年第1四半期の決算
2026年第1四半期の売上高は1億830万ドルで、前年同期比3%増、前四半期比5%増でした。GAAP純利益は330万ドル、希薄化後1株利益は0.06ドル、営業活動によるキャッシュフローは2,000万ドルでした。産業向け売上高は前年同期比23%増加しました。再生可能エネルギー、蓄電池、ホームオートメーション、車載分野などが成長を支えています。一方、GAAP営業利益は人員削減に関連する再編費用の影響を受けました。
顧客構成と集中リスク
Power Integrationsの2025年の上位10顧客は、売上高全体の約81%を占めています。最大顧客のAvnetは約32%、Salcomp Groupは約11%でした。Avnetは電子部品の大手販売代理店であり、Power Integrationsにとって重要な販売チャネルです。また、2025年の売上高の約98%が米国外向けでした。特に中国・香港向け売上が大きく、米国企業でありながらアジア市場とアジアのサプライチェーンに強く依存しています。顧客集中度、地域集中度、販売代理店依存度は、同社の収益構造を理解するうえで非常に重要です。
将来の収益目標
Power Integrationsは、長期的な具体的売上高目標を明確には示していません。2026年第2四半期については、売上高1億1,500万ドルから1億2,000万ドル、GAAP粗利益率53.5%から54.5%を見込んでいます。同社が将来の成長市場として注目しているのは、電気自動車、再生可能エネルギー、蓄電池、電力網の近代化、AIデータセンターです。特にPowiGaN製品と高電力ゲートドライバーが、従来型の充電器・家電向けICから新しい成長市場へ移行できるかが重要になります。
Power Integrationsの企業価値(バリュエーション)
◾️時価総額とPSR
時価総額の確認時点
2026年7月15日時点の市場データでは、Power Integrationsの株価は約70.92ドル、時価総額は約39億5,000万ドルでした。
2025年売上高ベースのPSR
2025年の売上高4億4,350万ドルを基準にすると、時価総額39億5,000万ドルのPSRは約8.9倍です。TTM売上高約4億4,630万ドルを使っても、PSRは約8.8倍となります。PSRだけを見ると、成熟した汎用半導体メーカーより高い評価ですが、GaN、EV、再生可能エネルギー、AIデータセンターなどの成長期待が株価に反映されていると考えられます。
PERと配当利回り
2025年のGAAP利益は2,210万ドル、EPSは0.39ドルにとどまったため、実績PERは非常に高く見えます。一方、2026年7月時点の市場データでは予想PERは実績PERより低く、利益回復への期待が織り込まれています。同社は四半期配当を実施しており、2026年第1四半期の配当は1株0.215ドルでした。年間配当を単純に0.86ドルとすると、株価70.92ドルに対する配当利回りは約1.2%です。配当株というより、成長投資と株主還元を組み合わせた半導体企業と考える方が適切です。
◾️時価総額とPSRがそうなる理由、割高・割安の見方
高いPSRを支える成長材料
Power Integrationsの評価が一定程度高くなっている理由は、同社が単なる充電器向け半導体メーカーではなく、高効率な電力変換技術を持つ企業と見られているためです。GaNは、高速スイッチング、小型化、高効率化に適した材料です。急速充電器、AIデータセンター、EV充電器、産業用電源などで採用が進めば、製品単価や市場規模が拡大する可能性があります。
割高派の意見
割高派は、売上高約4億4,000万ドルに対して時価総額が約39億5,000万ドルあり、PSRが約9倍に達している点を重視します。2025年の売上成長率は約6%で、売上高が急拡大しているわけではありません。GaNやAIデータセンター向け製品の将来期待が先行しており、量産採用や売上高への貢献が遅れれば、バリュエーションが低下する可能性があります。また、上位顧客と販売代理店への依存度が高く、主要顧客の在庫調整や発注先変更が起きた場合、業績に大きな影響が出る可能性があります。
割安派の意見
割安派は、Power Integrationsの製品が電力効率化という長期的な構造テーマに位置している点を評価します。世界の電子機器、EV、再生可能エネルギー、データセンターでは、電力消費を抑えながら高い性能を実現することが求められています。また、2025年には産業向け売上が伸び、2026年第1四半期も産業売上が23%増加しました。PowiGaN製品の成長、高電力ゲートドライバーの採用、NVIDIAの800VDCエコシステムへの参加が進めば、現在のPSRは将来の売上成長によって低下する可能性があります。
Power Integrationsのリスク評価
◾️最大リスクはGaN・AI向け需要が期待ほど伸びないこと
AIデータセンターの量産採用リスク
Power Integrationsは、AIデータセンター向け800VDC電源構想に関連しています。しかし、協業やサプライヤー登録が、そのまま大規模な売上高になるとは限りません。AIデータセンターの電力方式は、サーバー設計、電源シェルフ、施設側の配電設備、ラックメーカー、ハイパースケーラーの採用方針に左右されます。800VDCの普及時期が遅れたり、別の電源方式が採用されたりすれば、Power Integrationsの期待成長も後ずれする可能性があります。
GaNの価格低下
GaNは成長材料ですが、競合企業も多く、価格競争が起きる可能性があります。中国メーカーを含む複数企業がGaN製品を展開しており、技術性能が似通えば、顧客はより安価な部品を選択する可能性があります。
新規市場での認証期間
自動車、産業設備、再生可能エネルギー、AIデータセンターでは、民生用充電器よりも高い信頼性や長期耐久性が求められます。製品が完成しても、顧客の認証、温度試験、寿命試験、量産評価に時間がかかるため、研究開発費が先行する可能性があります。
◾️懸念される財務・顧客・供給リスク
顧客集中と代理店依存
2025年の上位10顧客が売上の約81%を占め、Avnetだけで約32%を占めています。販売代理店を通じて幅広い最終顧客へ販売しているとはいえ、主要代理店の発注政策や在庫水準が変化すると、Power Integrationsの四半期売上高に影響します。
中国・アジア地域への集中
同社の海外売上比率は約98%で、特に中国・香港を含むアジア向け売上が大きな割合を占めています。米中関係、輸出規制、関税、台湾海峡の緊張、物流障害などが製造・販売の双方に影響する可能性があります。
製造委託先と為替
同社は外部ファウンドリからシリコンウエハを購入しており、特に日本のファウンドリからの調達が粗利益率に影響します。円とドルの為替が変動すると、同じ販売価格でも製造コストや粗利益率が変化します。
利益率の変動
半導体企業では、製品構成、顧客構成、地域構成、販売価格、工場稼働率によって粗利益率が変わります。高利益率の産業用製品が伸びれば改善しますが、低価格品や在庫処分が増えれば、利益率が低下する可能性があります。
Power Integrationsの競合他社
ー直接の競合他社ー
◾️Infineon Technologies
高耐圧パワー半導体との競合
Infineon Technologiesは、MOSFET、IGBT、SiC、GaN、ゲートドライバー、電源管理ICなどを幅広く提供する大手パワー半導体企業です。Power Integrationsの高電圧ゲートドライバー、GaN製品、再生可能エネルギー・EV向け電力変換製品と競合します。Infineonは製品ラインアップと製造規模が大きく、車載・産業顧客との関係も強い点が脅威です。
Power Integrationsの差別化
Power Integrationsは、高電圧回路と制御回路を一体化したIC、システム設計の簡素化、GaNを含む統合型電源ソリューションで差別化を図っています。
◾️Navitas Semiconductor
GaN専業に近い競合企業
Navitas Semiconductorは、GaNおよびSiCを使った電力半導体を提供しています。急速充電器、データセンター、太陽光発電、EV、産業機器などが主な対象です。Power IntegrationsのPowiGaNと、NavitasのGaNパワーICや電源ソリューションは、充電器やAIデータセンター向け電源で競合します。GaNのスイッチング性能、小型化、効率、システムへの組み込みやすさが比較されます。
事業規模の違い
Navitasは成長投資を優先する段階にあり、Power Integrationsは長年の製品販売と配当実績を持っています。Power Integrationsは収益基盤、Navitasは成長率と新規市場への集中という違いがあります。
◾️onsemi
電力変換・車載半導体との競合
onsemiは、パワー半導体、SiC、センサー、電源管理IC、車載半導体を展開しています。EVの電源システム、太陽光発電インバーター、蓄電池、産業機器、モーター制御などでPower Integrationsと競合します。特に高電力用途では、Power IntegrationsのゲートドライバーやGaN製品と、onsemiのSiC・シリコン製品が比較されます。
広い顧客基盤
onsemiは車載・産業市場に広い顧客基盤を持つため、Power Integrationsが新規市場へ進出する際の強力な競争相手になります。
◾️Monolithic Power Systems
電源管理ICの競合
Monolithic Power Systems(MPS)は、電源管理IC、DC-DCコンバーター、電源モジュールを提供しています。MPSは、サーバー、通信機器、産業機器、車載機器などの電源管理でPower Integrationsと競合します。Power Integrationsが高電圧AC-DCやGaNに強いのに対し、MPSは基板上の電圧変換や高性能システム向け電源管理で存在感を持ちます。
AIデータセンターでの競争
AIサーバー向け電源では、電源をどの段階で変換し、どのメーカーのICやモジュールを採用するかが重要です。AIデータセンター投資が拡大すれば、両社の競合も強まる可能性があります。
ー間接的な競合他社ー
◾️NVIDIA
電源需要を生み出す側の企業
NVIDIAはPower Integrationsの直接競合ではなく、AI GPUを提供する企業です。GPUの高性能化によって、Power Integrationsの高効率電力変換製品に需要を生み出す側に位置します。
間接的な影響
一方、NVIDIAが電源システム全体のリファレンス設計や部品認定を主導する場合、Power Integrationsは競合製品との採用競争に直面します。NVIDIAの800VDC構想は成長機会である一方、採用部品をめぐる競争を厳しくする可能性があります。
◾️STMicroelectronics
広範なパワー半導体
STMicroelectronicsは、パワーMOSFET、IGBT、SiC、GaN、マイコン、センサーなどを展開しています。Power Integrationsが単一の電源ICやゲートドライバーを提供する市場で、STは半導体を組み合わせたシステム全体の提案を行えます。車載、産業、再生可能エネルギー、家電などで競争が発生します。
材料技術の競争
GaNとSiCのどちらが採用されるかは、電圧、電力、周波数、価格、信頼性によって変わります。STが複数材料を展開していることは、Power Integrationsにとって競争上の圧力となります。
◾️Texas Instruments
アナログ半導体との競合
Texas Instrumentsは、電源管理IC、アナログIC、組み込みプロセッサーなどを提供しています。Power Integrationsの電源IC、モーター制御、ゲートドライバーと、TIの電源管理・アナログ半導体が顧客の設計予算を巡って競合します。TIは製品数と販売網が非常に大きく、顧客が複数の部品を一括調達したい場合に強みを持ちます。
設計自由度の違い
Power Integrationsは、電力変換に必要な機能を統合した製品で設計を簡素化しようとします。TIは、多様なICを組み合わせて顧客が柔軟に設計できる選択肢を提供します。この違いが用途別の採用競争につながります。
Power Integrationsの今後見るべきポイント
◾️今後の最大重要ポイントはGaNと産業向け製品の成長
PowiGaNの売上拡大
PowiGaN製品が、急速充電器だけでなく、産業用電源、EV、蓄電池、AIデータセンターへ広がるかが重要です。2025年はPowiGaN売上高が前年比40%以上増加しましたが、今後も同じ成長率を維持できるかを確認する必要があります。
産業向け売上の継続成長
2026年第1四半期、産業向け売上は前年同期比23%増加しました。再生可能エネルギー、電力メーター、蓄電池、ホームオートメーション、車載などの成長が続けば、家電・充電器中心の収益構成を変えられる可能性があります。
AIデータセンター向け採用
NVIDIAの800VDC構想に関連するPower Integrations製品が、いつ、どの程度量産へ移行するかが重要です。サプライヤーリストへの登録や協業発表だけでなく、実際の売上高、受注、製品認証、顧客名の開示を確認する必要があります。
◾️頭の片隅に入れておく重要ポイント
次回決算の確認
売上高が会社見通しの1億1,500万ドルから1億2,000万ドルの範囲に入るか、粗利益率が改善しているか、産業向け売上とGaN売上が伸びているかを確認します。
顧客集中度の変化
Avnetが売上高の約32%を占める状況が続いているか、販売代理店の在庫が過剰になっていないかを確認します。上位10顧客比率が下がれば、顧客基盤が分散していると評価できます。
キャッシュフローと配当
営業キャッシュフローが安定しているか、研究開発費や設備投資を維持しながら配当を継続できるかも重要です。高成長市場へ投資する一方、売上が伸びない場合には利益率や配当政策に影響が出る可能性があります。
Power Integrationsに関する記事ならこれ!
◾️もてのり✨米国株決算さんの記事
Power Integrationsの事業概要、AC-DC電源IC、LEDドライバー、モータードライバー、IGBT・SiC向けゲートドライバー、2025年第4四半期の売上高とEPSを確認できます。会社説明と決算情報が一つの記事に整理されており、Power Integrationsがどのような電子部品を提供している会社なのかを理解する入口として利用できます。売上高、粗利益率、業績見通しを把握したうえで、公式決算資料と照合すると、事業全体を理解しやすくなります。
◾️Insight Deskさんの記事
GaNの特徴、急速充電器、AIサーバー電源、EV充電、5G、産業用電源、主要競合企業など、Power Integrationsが注力するGaN市場の全体像を整理しています。Power Integrations単体の決算記事では確認しにくい、GaN市場の成長分野や競合企業を把握できます。上記2本を合わせて読むことで、Power Integrationsの事業内容、直近決算、PowiGaNの成長可能性、GaN市場の競争環境を一つの流れで確認できます。
Power Integrationsのまとめ
◾️重要な内容と見通し
高電圧電力変換に特化した半導体企業
Power Integrationsは、AC-DC電源IC、GaN製品、ゲートドライバー、モータードライバーを提供しています。製品は充電器、家電、LED照明、産業機器、EV、再生可能エネルギー、蓄電池などに使われています。
GaNと産業向けが成長の中心
2025年は売上高が6%増加し、2026年第1四半期も売上高が前年同期比3%増加しました。産業向け売上は23%増加し、PowiGaN製品も高い成長を示しています。
AIデータセンターは大きな可能性と不確実性を持つ
NVIDIAの800VDC構想に関わることで、Power Integrationsには新しい成長機会があります。ただし、現時点ではAIデータセンター向けの具体的な売上規模や量産時期が明らかになっていません。
◾️投資判断で確認したいこと
GaN製品の売上成長
PowiGaNの売上高が継続的に伸びるかを確認します。
粗利益率と営業利益
新製品投資や再編費用を吸収し、利益率が回復するかが重要です。
顧客集中とアジア依存
Avnetなどの主要販売代理店への依存度、中国・香港を中心としたアジア売上の大きさを確認します。
◾️免責事項
本記事は情報提供を目的として作成したものであり、特定の金融商品や銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。記事内の情報は、公開情報などをもとに作成していますが、その正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。投資には価格変動等のリスクがあり、元本割れが生じる可能性があります。投資判断はご自身で十分に調査・検討のうえ、自己責任で行ってください。
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