【第3部】全てを並べてみたとき、今回の真相が明らかになる
みなさんこんにちは!
行動心理士の僕です。
【第1部】では妻の証言から「違和感」を扱いました。
【第2部】では夫の証言から話が「崩れる兆候」を見てきました。
そして今回、【第3部】では妻と夫の両面を俯瞰してみたときに、どちらの話に信憑生があるのかをみていきます。
ですが一つだけ、視点を変えてください。
「この人は嘘をついているのか?」
ではなく、
「この人の中で、いま何が起きているのか?」
この視点に立ったとき、語りは単なる「情報」としてではなく「現象」として見えてきます。
⚠️注意⚠️
ここで紹介する仕草は「嘘の証拠」ではなく、本音がにじみ出る可能性のあるサインの一例です。
表情や仕草は人類共通の手がかりですが、
目的は相手を疑うことではなく、“真心”をもって理解することです。
1. 事件概要(証言ベース)
発端は、ハイキング中の口論です。
妻は、不倫関係にある相手との出張について話し、夫はそれを拒否します。
ここから、すでに明らかではありますが、両名の間には、
信頼の崩壊
感情の未処理
関係の緊張
の状態で2人は崖の近くに立っています。
そしてここから、2人の語りが分岐します。
2. 語りはどのように生まれるのか(前提構造)
ここを理解しないと、すべてが浅くなります。
まず、人が出来事を語るとき、語りは大きく2つのプロセスから生まれます。
① 再生(reconstructionではなくretrieval)
これは、実際の体験をそのまま引き出す状態のことを言います。
このとき起きることは、
身体が先に動く
ジェスチャーが自然に出る
時制が現在に近づく
情報の一貫性が保たれる
② 構築(construction)
これは、その場で説明を組み立てる状態のことを指します。
このとき起きることは、
言葉が先に出る
ジェスチャーが減る
曖昧語が増える
時間が飛ぶ
重要なのはここです。
人は「嘘をついたとき」に話が崩れるのではありません。
嘘を重ねるたびに、脳の「処理が追いつかなくなり」崩れることです。
3. 妻の語り:再生が維持される構造
証言
法廷で妻は、
「軽く肩に触れた。ハグのような感じだった」
と証言しております。
ここで起きているのは単なる説明ではありません。
構造
体験 → 身体 → 言語の順で話をします。
何が起きているか
通常、話の流れとしてはこれが自然であり、この順番は逆になりません。
なぜなら、身体は「記憶の一部」だからです。
どういうことか。
言葉で作る説明とは違い、身体は「実際に起きた動き」をなぞります。
①「normal」でのズレ
法廷での証言で、夫との関係性について質疑応答があった際に、妻はここで一瞬、語りにノイズが入ります。
これは何か。
一見このノイズは不自然に感じるかもしれないですが、これは記憶の問題ではなく、感情の問題です。
人は、
納得していないこと
未処理の感情
に触れたとき、一瞬だけ表情が崩れます(マイクロエクスプレッションや行動心理学的行動の話です)。
色々述べていますが、一番重要なのは、語りは崩れていないという事実であり、感情だけが漏れているということ。
つまり本音で語っている可能性があるということです。
押された場面
さらに、法廷で妻はこのように証言します。
「腕を掴まれて、押された」
この時見られた行動心理として、起きているのは再体験です。
再体験とは何か。
それは、記憶を思い出しているのではなくもう一度その場に入っている状態のことを言います。
ある種の追体験とでもいうのでしょうか。
このとき、
時制が現在に変わる
身体が硬くなる
呼吸が変わる
つまりここでもやはり、語りは作られておらず、当時の心理状況が「再現されている」と言っていいでしょう。
4. 夫の語り:崩れが生まれるプロセス
ここからが本質です。
証言
「I felt like a shove」
この一言が、すべての起点です。
ここで何が起きているのか
本来、実際に押されたなら
「押された」
と出るはずです。
しかしここでは
「感じた」
と証言していました。
これは単なる言葉の問題ではありません。
客観的に見たら、出来事として確定できていない状態を指すといえます。
もちろん、日本の法定とは違いアメリカの法廷では、陪審員たちが有罪無罪を決めるので説得したい気持ちから述べたのかもしれません。
なぜこうなるのか
人は、
記憶が曖昧なとき
説明が難しいとき
出来事を「感覚」に変換します。
これは逃げではなく、認知の整合性を保つための処理として自然な行動です。
ここが起点になる理由
この瞬間から、語りは変わります。
① 時間が飛ぶ
「その時」「その後」
として、当該状況の詳細である中身が消えます。
② 流暢性が崩れる
詰まる
リズムが崩れる
話の処理が追いついていない状況が続きます。
③ ジェスチャーが消える
今までは、手振りでイメージを連想させていたものの、思考を外に出せなくなることが続きます。
④ 動作が破綻する
「倒れながら倒した」
実際にやってみても、身体で再現できないような動作を説明します。
つまり何が起きているのか
根本として、夫の証言である語りが「再生」から「構築」に切り替わったと言えるでしょう。
5. 崩れの起点と連鎖
ここが一番重要です。
崩れは突然起きません。
なぜなら、通常は連鎖するからです。
起点
「felt」
連鎖
距離化
↓時間の圧縮
↓認知負荷上昇
↓流暢性崩壊
↓身体表現消失
↓動作不整合
これが意味するもの
クラスターが単発ではなく「構造として崩れている」ということです。
6. 結論
ここでは、僕なりの結論を出したいと思います。
今回の事件はかなり興味深くここ以外でも語られていた証言やそこからみられた行動心理学と行動分析、非言語コミュニケーションとマイクロエクスプレッションが多々みられました。
それこそ、崖の近くで揉み合いをしていたことや、その時間的長さ、両名が主張している石で殴打されたことや、妻が夫の金的部分を強く握りしめて相手の暴力から逃れそうとしたことなどですね。
おそらくは、当人らしか知らない真実がきっとありますが、それが何かはわかる術がありません。
ですが、話し方や構造を客観的にみて、それぞれを言語化した場合、僕は夫側に多くの矛盾と嘘が見受けられました。
この観点から彼は有罪になる可能性が高いと思われます。
※後からこの事件について調べてみたのですが、実際に、有罪判決が下され8月に刑務所へ送還されるみたいです。。。
まとめ
今回のように、言った・言わないの事件で一番重要なのは他者に説得力を持たせるようと話すのではなく、心から本音で語っているように見えるかが重要だということです。
特に、人は、その隙が垣間見えた時にバイアスがかかってしまい目が曇ります。
みなさんもこのような状況になった際には、参考にしてみてください。絶対ではないですが、幾分か力になってくれると思います。
一番簡単なのは、相手を論破することですがそれだと根本的な解決にはなりませんので。。。
出典
Paul Ekman (2003)『Emotions Revealed』
Paul Ekman & Wallace V. Friesen (1978)『Facial Action Coding System (FACS)』
Joe Navarro (2008)『What Every BODY Is Saying』
Desmond Morris (1977)『Manwatching』
Bessel van der Kolk (2014)『The Body Keeps the Score』
Endel Tulving (1972)『Episodic and semantic memory』
Elizabeth Loftus & John C. Palmer (1974)『Reconstruction of automobile destruction: An example of the interaction between language and memory
Daniel Langleben et al. (2002)『Brain activity during simulated deception: An event-related fMRI study』
Joshua D. Greene et al. (2001)『An fMRI investigation of emotional engagement in moral judgment』
Antoine Bechara et al. (1997)『Deciding advantageously before knowing the advantageous strategy』
最後に
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また、みなさん、健康とお身体にはお気をつけてください。
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