今更ながらVoid Strangerを語る
刷り込み。インプリンティング。
ひよこが産まれて初めて見た物を親として思い込むように、自分にとってVoid Strangerは謎解きパズルの親となった。
この記事は、筆者が去年プレイしたゲーム――Void Strangerについて脈絡も構成もなく語るものである。普通にネタバレだらけなので未プレイ者は今すぐに、
これを買ってプレイしてください。
あなたが味わうことになる苦痛、痛み、憤りに対し、私は一切の責任を負いません。
いわゆるネタバレ厳禁タイプのゲームだ。
伝わる人はこれで察するので買っていただけるだろう。
このゲームについては本当に何の情報も仕入れずにプレイしてほしい。
BGMすら滅茶苦茶良いので、せめてコレを聞いて興味を持って……なんてことができたら良いのだが、それすらしたくない。
BGMがゲーム体験に強く結びついている故に、その曲の存在ですらネタバレになりうるからだ。
(さらっとOuter wildsの話に触れます。こっちもプレイしていないなら今すぐブラウザバックして購入して宇宙に旅立ってください。)
例えるなら、Outer wildsを何の情報も仕入れずにプレイして、起動直後のタイトル画面の曲でエモさを掻き立てられるのと同時に(これ、神ゲーかもしれんな……)って確信を得るときのように。
初トライで"蛍の光"が流れていい曲だなぁと思ってる間に突然の超新星爆発に巻き込まれて爆散するあのときのように。
BGMに紐付いた初見の体験を奪いたくない。
何ならOuter wildsについては22分で太陽が爆発してループするという前情報すら本当は流したくないぐらいだ。自分が人にオススメするときは、その話は完全に伏せたままオススメしている。仮にそれで興味を惹けなかったとしてもだ。
話が脱線したが、Void Strangerに抱いている感情もそんな感じである。
未プレイの人に『倉庫番のヤバいゲーム』以上の情報を開示して、衝撃を奪いたくはないと思っている。
だから、買ってください。
プレイしてください。

みんなもう買ったね?プレイした?
この先はもうネタバレするからね。
Void Strangerって?
宇佐きりん’s オールタイムベスト表部門一位がOuter wildsであるなら、Void Strangerは裏部門一位である。(一位はランス10と悩むとこだが)
何故裏部門なのかと言えば、それはもう、このゲームの異様なオススメしづらさと、おおよそ現代的とは言い難い苦行に満ちた構成と、いっそ愛憎と言えるほどの思いからである。
クリアできるのさえ一握り。その一握りに刺さるかさえわからない。
そんなゲームを表部門の一位に据えてオススメして回るわけには行かないのである。
プレイ中も、もう勘弁してくれと思うようなことが何度もあった。やるべき事を見据え、それを達成するために後何度Void内を駆けずり回ればいいのかを試算してゲンナリさせられたことも数え切れない。
それでも、このゲームは神ゲーとしてのポジションを揺るぎないものにしている。
シナリオ、演出、構成、BGM、作り込み……それに足る光るものがあったから。
喉元過ぎれば熱さを忘れるとは言うが、クリアして2週間もした頃にはプレイ中の苦しみなんてものは全て風化した。結果、あのシーン凄かったな……あの演出凄かったな……と脳内で追いかけ、動画や感想を漁ってる内に美しい思い出だけが積み上がっていき、気がつけばVoid Strangerを神格化し神ゲー扱いは盤石なものになった。
――風化。
何故、今? という疑問も概ねこれで説明できるかもしれない。
正直のところプレイ直後の印象としては、後に語る勘違いも相まって「凄かったけど……凄かったけど……はたしてこの感動は費やした苦労に見合うものだったのか……?」と思い悩んでいた。
更に自分はプレイ中に手記を残すタイプではない。(スクショと謎解き用の手書きメモぐらいはあるけど)
仮に古代遺跡やゾンビ蔓延る病院や裏世界に突っ込まれても後続に対し有用な情報の一つも手記として遺しておけないタイプの自分は、感想記事を書こうにもプレイ中の詳細な思考や試行の内容を憶えていなかったのである。
そんな訳で感想記事を残すには至らなかったのだけど……(そもそも今まで感想記事書いたことないし)
それが今では、毎日のようにVoid StrangerのBGMを流し、ふとした時にVoid Strangerに思いを馳せ、Twitterやめたくせに毎日「"void stranger" lang:ja」で検索を掛けて感想と悲鳴を漁り、後方彼氏面でうんうんそうだねわかるよ……とニコニコ頷く生活を送っている。
プレイから一年が経過し苦しみが完全に風化しきった結果、
>純真な記憶のみが残る<
状態となり、Void Strangerと向き合えるようになったのだ。
ある意味、一年掛けてようやくVoid Strangerへの思いを咀嚼しきれた、とも言えるのかもしれない。
だから今、補修された思い出かもしれないけど、垂れ流すような感想記事を書かせてほしい。

こんな記事を見に来る人たちからすれば今更Void Strangerの説明なんて必要ないだろう。
倉庫番ライクのパズルゲーム。
パズルゲームをほとんどプレイしたことのない自分からすると、倉庫番というのは他ジャンルのゲーム中にチョロっと出てくる面倒なミニゲームぐらいのイメージであった。
実際このゲームを倉庫番と例えるのがふさわしいのかもよく分かっていない。倉庫番ってオブジェクトを押したり引いたりするゲームだと思ってるし。その点このゲームは、多少物を押すことはあれど引くことはないし、メインギミックはマスの入れ替えだ。
まあ他にふさわしい例えも知らないので、とりあえず便宜上倉庫番ゲームとして扱っておく。
とりあえず筆者はその程度の知識しかないし、箱入り娘パズルの解けた試しがほとんど無い程度の実力であるとだけ明記しておく。
……余談だが、裏部門に据えておきながら筆者は信頼のおけるゲーマーの友人二人にこのゲームをオススメしたことがある。
一人には「倉庫番が無理すぎる」と言って投げられた。妥当である。
もう一人はノーヒントで最後までクリアしきって(ヤバすぎる)、「きりんの薦めるゲームにはちょっと気をつけることにする」と言われ積み上げた信頼を失った。後日Outer wildsを薦めたところ友人は見事にOuter wildsゾンビと化し、僕はネクロマンサーに一歩近づいた(やったね)。
最高のチル。コレとExtended Encoreをここ一年ずっと作業用BGMにしている。もし死後の世界が無限にパズルを解かされる深淵だったとしても、バックにExtended Encoreが流れてるならなんだか大丈夫な気がしてくる。
思い出
出会いは、各所にて紹介されていた「Outer wildsっぽい」という品評だった。
正直なところ、この品評は5割くらい正しいが5割くらい間違っていると思う。自分はこの品評を鵜呑みにして妙な勘違いをしてしまった。
恐らく、それぞれの思う「Outer wildsっぽさ」に行き違いがあったのだろう。
各所に謎が散りばめられていて、それを自分で考え、統合し、答えを出し進む。その過程を多分「Outer wildsっぽい」と評したのだと思う。
が、自分は「Outer wildsっぽい」を、散りばめられた謎が最終的に一つに結びつき、大枠のストーリーの輪郭を浮かび上がらせていくゲーム構成そのものを指してのことだと思ってしまったのだ。
その観点から行くと、Void Strangerはプレイヤーを放りだしているようでいて道筋は結構舗装されているし、解くべき謎もちゃんと提示されている。
それはOuter wildsのような必然性のある謎ではなく、結構解かれるために用意された謎だ。
ゲームの大枠に横たわっているストーリーに謎が収束していくこともないし、予想だにしないストーリーをプレイヤーが解き明かすこともない(ストーリーは予想だにしない方向に行きまくってたけど)。
そんな事もあって、クリア直後は「期待してたものと違った……」という思いが拭えなかったのだ。
そのせいでゲームをフラットに見ることが出来ていなかった。
これは完全に自分の勘違いが悪いと思う。
(以下はゲームプレイ中の思い出語りだ。いよいよ雑文度合いが増していくがご容赦を。あと下世話なネタが混じっているのもご勘弁を。)
Gray編
さて、そんな勘違いの話はともかく。
ホイホイと釣られゲームを始めてみる。
ほとんど何も説明されずに「がんばってください」と言われるスタート。
モノクロながらに異様に細密なドット絵。
杖を取得する瞬間の奇妙さを掻き立てる演出。マス目に縛られる瞬間。
正直この時点でどう思っていたかはあまり憶えていない。
ただドット絵が異様に上手いなとは思っていた。
まあ最初の方なのでBGMの素晴らしさも相まって難なく進んでいく……
と思いきやガラス床がで始めた辺りでもう雲行きが怪しくなっていた。
(で、でも、着実にちゃんと進んでいるぞ……)
と励ましながらの進行。
ああ哀れな筆者よ。こんなもんは序の口でしかないことも、この先に待ち構えている無限の階層も知らず……
パズル漬けに嫌気が差し始めた辺りで挟まってくる白樺の思い出。
これがアイスブレイクに丁度良く、そして妙に引き込まれる。
ドット絵の上手さか、表現のコミカルさ故か。
白樺の思い出に入る時も、一旦ゲームがシャットダウンして次回起動時にいきなり回想が始まるという作りも、"普通ではない"感じがして気に入っていた。
多分、この時点でセンスの片鱗のようなものは感じていたのだと思う。
そうでなければわざわざこんなパズル地獄に付き合ったりはしていなかっただろうから。
ゴーレムで苦しみ、雷に撃たれ、突如始まるDDRに笑って、今度は突如始まる戦闘に笑う。
根底ではパズルを解かせ続けながらも、表現やらイベントやらの手を変え品を変えプレイヤーを飽きさせない工夫を入れてくる。
その甲斐もあり、もっと先が見たい!見たい!と、見事に術中に嵌まった筆者は夢中で深淵を下り続けていった。
気がつけばB208だ。

パズル弱者僕は、Cifの領域に入ってからがマジで頭が爆発しそうだった。
しかしなんとなく、もうすぐ終わりますよと言わんばかりの雰囲気を醸し出している気がする。
だから後ちょっと、後ちょっとと励ましながら頑張っていたのである。
ああ哀れな筆者よ。こんなもんはまだまだ序の口でしかないことも、何も終わってないことも知らず……
そしてB208。マジでわからんかった。
とにかく試行錯誤すべく床を集めようと左側に並べていった先で、UIに床が隣接した。
そこで気づく。
なんかUIと床を隔てる線みたいなものが無い。すっごいシームレスに繋がっている。
一歩足を踏み出す。
乗った。
滅茶苦茶鳥肌が立つ。
UIの上をGrayが動いている。
恐る恐る杖を振る。
取れた。
なんかヤバい物質がびちゃびちゃ出た。
何ができるのかを試すべく片っ端からマスを引っこ抜いていった。
死んで、クラッシュして、変な文字が出て、しかし幾つかは普通の床として機能することを確認した。
そしてBを引っこ抜いたとき。
ありえんほどのぞくぞくが走った。
今までのゲーム体験で一番瞬間風速が高かった瞬間かもしれない。
かくして、Void Strangerは見事に親として脳内に刻まれることとなった。
構造そのものがジャンルとして成立するような作品は、どうしても最初に出会ったものを親と認識しがちだ。例えばフェイクモキュメンタリーにおける梨さんの縁シリーズのような。そういう作品は、どれだけ優れていようと最初に見た作品の衝撃には敵わない。
自分にとって、破壊系パズルというジャンルにおけるそれがVoid Strangerだった。今後隣接ジャンルの作品をプレイしたとしても、きっとこの時の衝撃に勝るものは二度と得られないだろう。
酒を飲んでいたのもあって、そこからはもう「ヤバイヤバイヤバイ……」と言いながら無心で進めるだけの亡者となった。イナゴくれ。
そして興奮冷めやらぬまま(途中、ベルセルクだ……ベルセルクじゃね……? 絶対ベルセルク好きでしょ……などと思いつつ)最深部に辿り着く。
流れ始めるVoid。狂っていく画面。

これがもう、酒とゲーム破壊演出で抵抗力が弱まっていた脳に大打撃を与えた。
斬撃・刺突・打撃2倍弱点と化した混乱した頭に異常にぶっ刺さったのだ。
今でも最高のバッドエンド演出だと思ってる。無力を表現する演出としてこれほどのものはない。
そうしてエンディングが終わり、無音の中ただただ狭いマップに取り残され階段を降りた瞬間に。
>純真な記憶のみが残る<
きっと、この時点でもう完全に心を掴まれていた。
すぐさま再走をはじめ、簡単な壁画を解きつつ最深部へ下りる。
試せることは全部試してみようと思ったので、死亡時の諦めるも選択した。
結果、インフィニティのブランドを貰う。
(無限……? 無限ってなに? 無限?)
と思いつつ試してみると本当に無限だった。無限が無限なことある?
で、正規エンディング。
愚かな僕は、Lilyがキズモノにされたときに妊娠していた可能性にまったく思い当たらず、急に胎児の話をし始めるみんなに対し何の話をしているのかさっぱりついていけなかったのだが、なんか感動的な演出でスタッフロールが流れ始めたので、防御力のすっかり落ちた自分は素直に感動していた。
光がロゴに重なった瞬間、ぱっと画面が切り替わる。(この演出もセンスありすぎじゃない?)
映る信号機。交差点。現代のメタファー。
そして手の中の赤子を写し、ゲームが落ちる……
引きを作るのが……上手すぎるだろ……
Lillie編
アレだけパズルを乗り越えて全然終わりじゃなさそうなことにまず愕然としていたのだけど、あんなエンディングを見せられてしまえば『触れてはならない』のボタンを触ってしまう時のようにSteamのプレイボタンをすぐにクリックしてしまうのも無理もない話だった。
展開の読めぬ中、姫らしき子がVoidに突き落とされ、いつか見た光景のリフレインのようにB001へと下りてくる。
杖を取る。
ここまでは同じ光景。
またVoidを走るのか?と思いつつB003へ下りる。
やはり見覚えのある光景。
もう慣れたもんだと右に数歩進む。
――すると
左上にチラリと映る謎の動く物体!!!!
一瞬で言わんとしていることの全てを理解した。
怖気が走った。
ヤツらに支配されていた恐怖を思い出した人類のように怯えた。
ハードモードである。
それがあまりに衝撃で防衛反応を働かせてしまったからなのか、その後の記憶はあんまりない。
気がつけば自分は、先にGray編で探索をしておいたほうが良いという情報と、そこで重責を使わなければLillie編に持ち越せるという情報を得て、その通りにしていた。
なんで攻略見ちゃったのかは本当に憶えていない。アレを超えた後のハードモード255階という存在に挫けてしまったのか。
見なかったら見なかったで挫折していたような気もするし、この功罪は正直のところよくわからない。
何にせよLillie編は羽と剣を使いすっ飛ばしていった。
大体はそれでインチキできるのだが、時々正攻法で解かねばならないステージが襲ってくる。
その度に僕は泣きながら赦しを請うハメになった。

君、EXにもいなかった?
シナリオは主従百合から一転、親子関係にフォーカスが移る。
これもまた面白くって……本当にシナリオと演出の巧さが、パズル地獄を進み続ける駆動力になってくれていたと思う。
この表現力があればプレイヤーも辛いパズルを乗り越えてくれると信じていたのだろうか? 恐ろしい胆力と自信である。

か~~~わいすぎマジで。マジで可愛い。かわいすぎひん?
意味わからん可愛さ。
いや可愛すぎないですか???????
この分かりやすいぐらいのおてんばっぷり、跳ねっけのある髪。
腕のほっそりした感じ、何事にも興味津々って感じの顔。
見るからに元気一杯ですって感じ!!!!!!!
その見た目を裏切らない完璧なおてんばムーブ!!!!!
か~~~~~~~~~わい~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!
俺は天真爛漫のおてんばロリに弱い。
そんなこんなで最深部に辿り着く。
今回もVoid状態にならずにクリアすることがエンド条件かと思ってヒヤヒヤしたもんだが、そうではなさそうで安心した。
出生の秘密、感動の再開。
ストレートな話も演出が良ければいくらでも心に訴えかけることが出来るのだと改めて思い知らされる。
良かったね……
と思ってるところに怒涛のSF設定開示。
いや俺そういうの好きですけど、好きですけど……と戸惑っていたら、なんかメガネ捨てはじめて、Void Stranger Cif!!!!
は、まだあんの!???!???!??!?
Cif編
UIの重責が変わってるのこだわりあって好き。
白樺はないし重責揃ってるしでさっくりと進む。
――さっくりと進めなくなった。

失礼、苦痛を愛するための祈りをフル詠唱してしまいました。
一面一面がクソ重い。
一生「ウグゥーーーーーーーーーーッ!!!」(0時に包丁で刺されるはたてちゃんbot)と悶絶しながら進んでいた。
もう本当にだいぶ辛かったのだが、それでも辞めなかったのは並々ならぬセンスに魅了されていたからなのか。
それでも無理なもんは無理だったので、遂に上に挙げたステージで初めて答えを見た。無理すぎ。
障害物を使ってゴーレムをずらす手法は高難度面の頻出テクとなるが、これ、思いつかないときは本当に思いつかない。
急遽始まるボンバーマンに一笑いしつつも無限にぶち転がされ続け、疲労困憊の中エンディングを見た。
Beeちゃんが可愛かった。渋々付き合わされているCifも。
波打ち際のタイトル画面にエモさを感じつつ、一旦物語はここで終わったらしいと悟る。
しかしまだ解いてない謎が明らかにある。
その謎を解明するため、我々調査隊はVoidの奥地へと再び向かった――。
DIS編
Void Strangerというゲームの一番の醍醐味はここにあるのだろう。
ただ示された通りにクリアを目指すのではなく、Voidを駆けずり回り解いてない謎を、隠されたものを一つづつ解き明かしていく……
ある意味で「Outer wildsっぽい」部分である。
基本的に一方通行で、セーブも一つしかないので手軽に戻ることは叶わない。戻りたいと思えばそれ相応の手段を用意するか死ぬしかなく、逆に深層付近に求めるものがあるなら自力でもう一度下りねばならない。
あまりに不親切で苦行じみてて、考えるだけで嫌になるような作業だった。
しかしそれを通して、ショートカットを学び、解法を暗記し、階数操作や数字調整を習得し、目的の場所に辿り着くにはどのようなルートを辿るのが手っ取り早いのかを考えるようになる。
気がつけばVoid内をするすると移動できるようになっていた。
ここでプレイヤーは気がつく訳である。
このゲームの一面一面は、解くべきステージなどではなく移動するためのフィールドマップにすぎないと。
この認識の変化こそがVoid Strangerのゲーム部分で最も唸らされた構成にして、ゲームの肝だったように思う。
そして、それを認識させるためには、どうしてもこの苦行じみた作業は必要だった。恐ろしい話である。
B223のブランドは割とすぐに気がついた。
この構成ならこっそり階数を飛ばしているのは絶対にやってるだろうと当たりをつけていたからだ。
後から考えれば、各ゾーン終盤には必ず刻印部屋があるのだからそこから類推するべきだったのだろうけど。
B053は流石にギブアップした。
マップを繋げるとこまでは試したのだが、どうあがいても蛇の身体が繋がらなかった。
まさか空白を挟んで繋げるとは思いもしなかった。
かなり怪しい設問ではあるが、実際ノーヒントでクリアしてる人もいるし、蛇の身体以外にもそんなん気が付かんよ……と思ってしまうとは言えちゃんとヒントが2,3個あることを知ったので、もう笑うしか無かった。(蛇の矢印とか、only remainの文字からの推測とか)
探索の中でB255の先に行ったりもした。
なんか不穏な音するな……とは思っていたが、画面外からなんか来たときは死ぬほどビビり散らした。(バグ空間で何かに襲われてクラッシュした時も死ぬかと思ったけど)
あれGorちゃんの下半身なんですね。可愛いね。
メニュー画面で襲ってくるやつを初見で見てたら多分しょんべんちびってたと思います。
最奥の像はヤバそうだったのでスルーした。
時々ここでゲームデータ消される事について結構本気で怒ってる人を見かけるが、このゲームにおけるデータリセットって別に何のデメリットもないような気がする。
ロッドを入手してからはほとんど悩まなかった。
まだ解いてない箇所は一箇所しかない。そしてこのロッドでできることを考えれば、逆算してやることは一つに絞られる。
とは言え、実際に試行して、DISのデカい門の前に辿り着いたときは脳汁でいっぱいだった。
……まあ、その先も身を苛むパズルが頭からケツまでチョコたっぷりだったんですけどね。

パズルゲーの画面か、これが?
途中で岩に「後もうちょっとな気がする」とか励まされたような気がするが、全然もうちょっとじゃなかった。
やっぱ岩が喋ったりするわけがないので幻聴だったかもしれない。コンパニオンキューブも喋らないし。
Beeちゃんの戦闘体、なんかpixivの特殊性癖で見る感じのやつだよな……この姿勢で、アレがこう……そうした感じで……(続きはFANBOXで!)とか雑念塗れになりつつも、こっちはさっくりと倒す。
そして、Cif戦。
バカ面白かった。
ここに来て急にリアルタイム要素の絡むSTG風マジバトル。
倉庫番の名に釣られて始めた人にとっては堪ったもんじゃないだろうが、自分にとっては最高の気分だった。
元々STG沼の人間だったからだ。
しかもこういう、複数種類の攻撃をその場その場の最適な状況判断で対応するタイプの弾幕がいっっっっちばん好きだった。
もう夢中でプレイした。
数時間費やした。
だが、Cifはあまりに強大で、そして僕の親指は貧弱だった。
STGでも細かいちょん押しぐらいはするものの、基本的にはボタンは押しっぱか押さないかのどちらかである。
それが、Void Strangerでは仕様上、高速で動きたいときはマス目の分だけ十字キーを連打する必要がある。
腱鞘炎になるかと思った。
というかこのままでは絶対になる痛みを発し始めたので、泣く泣く討伐を諦めて攻略を見た。
叫んだ。
「クロノ・トリガーじゃねぇか!!!!!!!!」
まっさかこんなところで、散々擦り倒された往年のミームに負けるとは思わなかった。
でも最高だった。
後日ちゃんと正面からの討伐を果たしました。
これも余談。
Void Strangerはプレイヤーに対し2つの譲歩をしている。
上のレビューで触れられているのだが、
内の一つは、ターン制であるものの必ず主人公の動きが処理順で優先されることだ。
例えば、そのまま進めば敵と同じマス目でカチ合う場面でも、そのマスが階段であるならば主人公が階段を下りる判定が先行処理されて敵との接触判定が無視される。
これはある種の優しさであるのだが、最終的にはコレを前提とした解法が組まれ始めるので、結局のところ使わねばクリアできない仕様となっていく。
そしてもう一つは、誤入力で床から落ちそうになったときに生ずる一秒間の猶予時間だ。
この仕様をパズルを解くのに用いることはない。
従って完全な恩情とも言える。
まあ残機性かつUNDOの無いこのゲームで、誤入力=即死は流石にストレスフルすぎるが故の恩情な気もするけど、それはともかく。
この仕様、Cifガチンコ討伐をするときに大いに利用することになる。
討伐過程でどんどん足場が狭まっていくため、どうしても弾幕を避けきれない瞬間が発生するのだけど、この仕様を使うことで普通では届かない位置に1秒間だけ緊急回避することができるのである。当たり判定がちゃんと入力先の1マスに移っているのだ。
思えば、主人公側のアクションでリアルタイム要素があるのはこの猶予時間だけである。
パズルを解くだけなら何の必要性も無かった仕様が、この瞬間攻略に必要な仕様に変わったのだ。
本当に、そんなとこまで全て使うことを想定していたのか? 怖すぎる。
で、ようやく黒幕との邂逅。
Levの登場のかっこよさ、まさかのAddの正体、その後の対峙、明らかに超越してる戦闘演出、Lilyこそが適合者という驚き……
いろいろな設定が開示されて面白かった。
そしてLilyにちょっと怒られ、遂に二人で一緒に戦うことを決意する。
いかにも大トリって感じだ。
ラスボスっぽい雰囲気、入りのコミカルさでちょっと笑ってから始まる盛り上げ、SFっぽい背景、盛り上げ、盛り上げ、百合太極拳……
うそ。
うそ、うそうそうそ。
これはもしや……? という疑念が沸き起こる。
開ける視界。
遂には宇宙の艦隊を前にして、地球から甲虫のような人形生物が駆け抜ける。
僕はこの瞬間に何が起きているのかを余す所なく理解した。
Stage 0 Start
筆者は涙ぐみながら、冗談抜きでスタンディングオベーションをしていた。

「ヒャァ、もう我慢できねぇ!!」(ドバドバ投下されるSTG)
やった。やった。
やりやがった。
こんだけ延々と地獄パズルに付き合わせてきて、最後の最後にこんなゴテゴテのSTG演出入れてくるなんて。
こんなことインディーじゃなきゃできるわけがない。
ともすれば、今まで組み上げてきたパズルゲームとしての骨子を破壊するような行為だ。それでもSTGぶち込みたいって執念と、これをぶち込んだところでパズルゲームとしての作品強度が落ちたりしないって信念がなければ到底こんな事はできない。
マジで最高だった。
ぶっちゃけ自分のVoid Strangerに対する思い出の七割ぐらいはここだった。
それぐらいカタルシスがあった。
半ば絶頂しながらSTGパートを進める。
なんか被弾しまくってるけどよくわからんが死ななかった。
初見でボスまで超える。この辺はシューターとしての意地もあった。
Levの本体。
ここ好きすぎる。
どこかの感想で見た「永夜返し」って表現が言いえて妙で好き。
あんま名前挙がりませんがコレも大好きです。
演出も流れもすごいエモーショナルじゃないですか? 泣いちゃう。
今思うと、弾幕STGお決まりの自機中心当たり判定を心として扱って抜き出したのはUNDERTALEが最初? な気がしますけど、あの発想って本当に天才でしたね。
Lev戦のラストは、確かに心が触れ合っていた。
そうして本当に最後の最後のエンディングを迎えたわけである。
実は「本当に今度こそ終わりでいいのか……?」って疑念もちらっとあったので、ちょっと気が気でなくって調べたりもしたんだけど、その満足感は凄まじかった。
その後
Void Strangerというゲームに、どういうスタンスをもって向き合えばいいのかが分からなかった。
確かに滅茶苦茶面白かった。
だが同じぐらいにしんどい思いをしたのも確かだった。
そこに前述の勘違いも相まって、どう評価してどう表現すればいいのかが分からなかった。
ので、ひたすら「ヤバい」と「地獄」と「オススメはしかねる」としか言っていなかった気がする。
そうは言いつつも、
この作品は俺の手に余る……そしてまだ何かあるに違いない……
そんな思いからか感想を漁り動画を見る日々。
そうして2週間後ぐらいにはもう「神ゲー」と言いふらしていた気がする。手のひらの関節の柔らかさには自信があった。
それと同時期に不思議な変化が起き始める。
Lax Lullabyを始め、Void Strangerの音楽を流し始めるとそこに異様な安堵感を憶え始めた。
あるべきところにあるような、居るべきところにいるような。
頭の中でありありとSEが鳴り始める。
床を抜く音。ヴィオ↑
床を置く音。ヴィオ↓
あんなに、あんなに辛かったのに、今ではもうあの深淵が恋しくて恋しくて仕方がない。
そしてクリアから1ヶ月後。
あの厳しくも優しい深淵に実家帰りすることを決意した。
このゲームはEXステージが存在するのだ。

決して難しい問いではない。しかし見ただけで頭を抱えたくなる力に満ちている。
EXの開幕としてコレほどふさわしいステージもない。


もうダメかもしれない 助けて 情けない助けて 助けて助けて
SI 俺たちを助けて 情けないぜ助けて(青春アミーゴ)


おまけのステージに入って、初めて見る仕様を使わされることってあるんだ。
もしかしたらハードモードの道中で使ってたのかもしれないが。

EXにもそういうステージは複数あるし。
しかし極限までシンプルでいて難しいのは最早芸術としか言いようがない。
辛かったが、もうパズルさえも普通に楽しくなっていた。
Extended EncoreのBGM性能が高すぎたのもある。
そして半年後、DV彼氏を忘れられない彼女さながらに再び郷愁に駆られた筆者は今度こそVoid Strangerにケリをつけることを決める。
Cif正面討伐。
クリア動画を幾つか参考にし、第2形態を極力スキップするパターンを組んだ。
最終耐久フェーズのDOD目隠し新宿踊りみたいなアレが想像以上にキツかったのだが、ある動画でラストに一気に上まで登る手法を使ってるのをみて真似したらあっさり超えられた。
徐々にスピードが遅くなるなら、遅くなる前に先にこっちから飛び越してやればいいという逆転の発想に助けられた。ありがとう。
そして0ifもクリア。楽しかった。
これマジでブチ上がります。
原曲聞きたさにZeroRangerもやりにいった。(面白かった)
もし一本のSTGとして作品が出されてて、前情報無しに裏ボスたどり着いてコレ流れてきたらちょっと心が射精してたかも。
「永夜返し」もしっかり超えて永遠のダンスを踊った。
そして僕のVoid Strangerは終わりを告げた。
総評
Void Stranger、神ゲーです。
後に別の純パズルゲームをプレイしたときに、報酬もなくパズルを解くことに意義を見出だせない自分に気がついた。
そんな自分に、ストーリーと言う駆動力すらない、純粋に高難度パズルが詰まっただけのEX面をやらせるにまで至ったのだ。それは凄いことだと思う。
Void Strangerは倉庫番パズルゲームであったが、ナラティブで、そしてプレイヤーが今まで積み重ねてきたゲーム体験を全肯定するような、体験してきたゲームが多ければ多いほど刺さるようなゲーマー讃歌であった。
こちらは丁度最近書かれたVoid Strangerの感想ブログである。
クリア直後はもにょもにょとした気持ちを抱えていたのが、自身の中で温めてる内にどんどん評価が上がっていく様は非常に身に覚えがあって笑ってしまったのが、それはともかく。
クソでかいジグソーパズルがあったとして、まずパズルをすべて完成させなければ1枚の絵としては評価できないだろう。本作も同じで、その美しさを感じ取るためにはパズルを解いてクリアまでたどり着かなければいけない。
感想内のこの表現にとても納得した。
人への薦めがたさの理由は、まさしくジグソーパズルを完成させるまでの困難さにあるのだろう。
一度完成させてしまった筆者は、その絵の美しさに脳を焼かれ、1年経った今でもVoid Strangerのことを思い続けている。
最後に。
「まるで奥手な若者の恋愛のようですね」
「恋愛?」
「えぇ。自分のことを愛してくれると相手が証明しない限り、自分も相手を愛したくない、……でしょう?」
「なるホド、推理小説における作家と読者の関係を面白く表現していマス」
「その理論によると、まさに奥手な小学生中学生の恋愛だな」
これは筆者の大好きな『うみねこのなく頃に』の一節だ。(コイツまたうみねこの話してる)
自分はハードコアなゲームの作者とプレイヤーの関係をこれで捉えている。
はっきり言って難しいゲームをプレイするのは、辛い。
時間は掛かる。思うように進まない。あと何度同じことを繰り返せばいいのかの見通しが立たないストレス。
何より、それを乗り越えたとして、『得られるカタルシスは、迎えてくれる光景はこの苦行に見合ったものだろうか?』という疑念。
その疑念すら抑え込み苦行じみたプレイを続けさせるには、ゲーム性以上に作者への信頼が必要になると思う。
作者がプレイヤーのことを信頼してゲームを作ってくれていると分からなければ、プレイヤーもまた、いたずらに難易度の高い作品に無駄な労力を注ぎたくはならない。
作者とプレイヤーの間に信頼があるからこそ、異常な高難易度は成立する。
自分はVoid Strangerをプレイしたとき、数度ほど攻略を見た。
Lillieモードの進み方で。B053の壁画で。いくつかのパズルで。
名も知らぬ作者だったから、信頼し切ることが出来なかった。これはひとえに自分の弱さによるものである。
当然、多少攻略を見た程度で台無しになるような作品強度では無い。
それでも、振り返ると、もし全てをノーヒントで解いたならと思わずにはいられない。
Void Strangerは、深淵に石を投げ入れれば、ちゃんと投げ入れた分だけ返ってくるゲームだった。作者とプレイヤーの相互信頼によって成り立っているゲームだった。
それを理解したのはクリアした後だった。
右代宮戦人と同じく、理解した時には全てが遅かったのだ。
もしもSystem Erasureが次の作品を出してくれるなら、そのときは今度こそ喜んで、深淵に無限の献身を捧げたいと思う。

