[41]【危険な考え】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-新聞配達編-
午前一時。
コーヒーをいれる。
コーヒーメーカーから落ちたばかりのコーヒーを、お気に入りのカップに注ぐ。
松下さん。
吉田。
二人とも、僕を助けてくれた。
この二人がいなかったら、今の僕はいないだろう。
二人は今も、現場で働いている。
これから暑くなるというのに、毎日汗を流している。
僕自身、ようやく生活が軌道に乗り始めたばかりだった。
それなのに、もう他人の心配をしていた。
吉田も松下さんも、自動車免許を持っていない。
外田新聞店で働くのは無理だろうか。
配達なら自転車でできる。
折込作業の補助としてなら、雇ってもらえるかもしれない。
新聞店には、配達以外にも仕事がある。
集金。
契約。
松下さんは口下手だから、営業は難しいだろう。
だが、吉田なら。
あの口のうまさを使えば、契約を取れる可能性がある。
社長に相談してみようか。
そんな考えが、頭の中を巡り始めた。
外田新聞店で折込作業をしている時も。
配達している時も。
僕は、そのことばかり考えていた。
そう。
僕は、思いついたら実行したくなる人間だった。
あと一日。
あと一日だけ考えてみよう。
それでも考えが変わらなければ、
社長に相談するだけ相談してみよう。
まだ何も始まっていない。
ただ、頭の中で考えているだけだ。
それなのに僕は、
もう二人が外田新聞店で働く姿を思い浮かべていた。
そんな危険な考えに包まれながら、僕は粛々と仕事をこなす。
→次の話【第42話】「もう一度吉田に電話」へ
7/20掲載
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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】


【第ニ章・新聞配達編】


