(19)【僕は何を差し出すべきか】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-失踪編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしてます。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。
【僕は何を差し出すべきか】
朝4時。
目が覚めた瞬間、
昨日とは違和感があった。
何?と考えても答えのない違和感。。。
身体は重い。
いつもの事だ。
足を伸ばす。
腕を曲げる。
首を回す。
安定の重さだ。
安定の痛さだ。
身体じゃない。心だ。
頭の中だ。
ざわついているのは。違和感は。
頭の中でこだまする
「明日も来てちょ〜よ。」
その一言が、
ずっと頭の中を回っていた
とりまねぎま、コーヒーだ。
コーヒーメーカーのスイッチを入れる。
香りが広がった時も違和感がある。
飲んでも美味しいと思えない。
冷蔵庫掃除のせいで味覚が
バグったのだろうか?
いや、僕の大切なコーヒーを邪魔する。
気になることがあるのだ。
朝のコーヒーを邪魔するもの。。。
それは
「明日も来てちょ〜よ。」
が実現するかどうかだ。
この違和感の正体は、期待だった。
そして、その裏にある恐怖だった。
何かを得るためには
何かを失う必要があると
聞いた事がある。
失うなら小さなものがいい。
なのに、僕は大切なコーヒーを
失ってしまうのだろうか?
いつも通り5時に来た松下さん。
僕の心はいつも通りじゃあない。
ソワソワする。
ドキドキする。
心臓がウルサイ。
心がウルサイ。
頭の中がウルサイ。
僕は自分が思うよりも
考えていたよりも小心者だった。
「今日も解体現場、
指名してくれてますかね?」
「あぁ多分な。」
「どこも同じやけどな、
1から仕事教えるの大変やろ?
しかも自分たちで教えるのは。」
「でも俺らみたいに固定の人間がおれば
毎回教えんでええし、
新しいヤツ来ても俺らに教えさせれば
楽やからな。」
認められたから指名
頑張ってるから指名
ではないのか?
都合がいいから指名
そうなのか?
時間になり、1階会議室に向かう。
いつもと何も変わらない。
いつものように、タバコの煙。
いつものように、沈黙の空間。
いつものように、ホワイトボードに
名前が書かれていく。
いや、僕の心だけが、いつもと違った。
僕と松下さんの名前の横に
「指」と書かれた。
指名という事だろう。
C班、ドライバー兼
日当17,000円確定だ。
報酬はいい。
最初の人夫出しとは
比べ物にならない。
なのに、違和感。
心に違和感。
そうか!報酬が高くても、
正当な対価ではないのだ。
さっきの松下さんの言葉。的を得ている。
確かに僕らは「都合がいい」存在だ。
頭の中でこだまする。
都合のいい存在。
スペアはいくらでもいる存在。
彼らが楽になるための存在。
必要なくなれば変更すればいい存在。
認められたわけじゃなかった。
ただ「便利だっただけ」だ。
僕は、コーヒーを、
大切にしているコーヒーを
差し出そうとしている。
僕は大切な自分だけの時間、
自分を取り戻す時間を
「引き換え」ようとしているのだ。
大切なコーヒーの代わりに
絶対に裏切ってこなかった
コーヒーの代わりに
仕事の指名を得ようとしている。
安心したかった。
誰かに認められたかった。
評価されたかった。
人間らしくなりたかった。
飲み続けてきたコーヒーを
手放す時が来たのか?
それだけの価値があるのか?
どんな時も支えてくれたコーヒー。
会議室の端で缶コーヒーを開けて飲む。
コーヒーの味がしなかった。
僕はどうするべきだろう。
僕にとって大きな岐路になる。
松下さんが言っていた
「道って踏み外してもまた道ができる。」
沁みてくる。

あなたならどうしますか?
安心と引き換えに、
自分(コーヒー)を差し出しますか?
それとも。。。
何も保証がなくても、
自分(コーヒー)を守りますか?
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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
→目次から読む
→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
