[11]【泥だらけの新聞を、終わったことにできない】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-新聞配達編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしています。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。
【泥だらけの新聞】
14:00。
配達から戻ったあと、
結局ほとんど眠れなかった。
このままじゃまずい___。
寝不足のまま仕事に出たら、
またミスをするかもしれない。
気分を変えよう。
インスタントコーヒーをいれた。
ひと口飲む。
熱いだけだった。
味が、よく分からない。
粉を少し足す。
今度は苦い。
誰もいない部屋で、
僕はひとり苦笑いした。
___ああ。
前にもこんなことがあった。
水撒きだ。
人夫出しの仕事をしていた頃。
うまくやれなくて、
頭も心も空回りしていたあの時と同じだ。
気持ちを切り替えないといけない。
今夜は、ちゃんと配れるように___。
そう思って販売所に向かった。
皆、いつも通り談笑していた。
今朝の騒ぎなんて、
もう無かったことになったみたいに。
その空気が痛かった。
優しさなのは分かる。
責めないでくれているのも分かる。
でも、その上辺のやさしさが
今の僕には妙に刺さった。
そんなの、優しさじゃない___。
心の中で、
叫びたくなる衝動が湧いた。
僕だけが、
まだ終われていなかった。
宮本さんと一緒に、
午後の集金業務に出る。
バイクにまたがるだけで、
少し身体がこわばった。
今朝転んだ時に打った足が、
まだ痛む。
しばらく走ったところで、
宮本さんが言った。
「休憩しようか。」
自販機の前で缶コーヒーを買う。
飲んだことのない銘柄だった。
これが宮本さんのお気に入りらしい。
ひと口飲む。
甘い。
異常に甘い。
これはもう、
コーヒーというより
別の飲み物だと思った。
でも、不思議と少しだけホッとした。
張りつめていたものが、
ほんの少し緩んだ気がした

僕は缶を持ったまま言った。
「今朝はすいませんでした。」
宮本さんは、あっさり言った。
「あんなの日常だよ。
気にしなくていいよ。」
「でも、皆さんに迷惑かけたし___」
「俺も何回もコケたことあるしさ。
まぁ、洗礼みたいなもんよ。」
そう言って笑った。
優しい___。
でも、その優しさが
今の僕にはうまく受け取れなかった。
優しさって、
時々凶器になる。
責められる方がまだ楽な時がある。
許されると、
逆に自分の情けなさだけが
くっきり浮かび上がることがある。
僕は、
得体の知れないモヤモヤに包まれていた。
今夜はミスなく配れるだろうか。
この優しさに、
ちゃんと応えられるだろうか。
皆の中では、
もう終わった話なのかもしれない。
いや___
無理やり終わらせてくれているだけだ。
僕の中では何ひとつ終わっていなかった。
何も解決していない。
切り替えないといけない。
寝不足のせいか、
ミスのせいか、
頭の中がぐちゃぐちゃだった。
こんな状態じゃ、
またやらかす。
その時だった。
後ろからクラクションが鳴った。
宮本さんだ。
ハッとして前を見る。
信号が赤なのに、
僕はそのまま行こうとしていた。
マズい___。
嫌な予感がした。
僕は___
どうしたらいいんだ___?
何がしたいんだ___?
【次の話】[12]【社長の優しさが、痛かった】へ
■創作大賞2026応募作品
(ホラー小説部門・サイコホラー)
・創作大賞2026応募作品なので、こちらも読んでいただけると巨大なエネルギーになります。
![夕日[第1章]へ](https://assets.st-note.com/img/1779768353-5m39bSyoIkaKJYCvhxPWpDEV.png?width=1200)
■ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
もし何か1つでも残ったら、
【スキ】で教えてください。
【フォロー】していただけると、
続きを書くエネルギーになります。
■はじめての方へ
・僕のメチャクチャな人生の紹介です。
→プロフィール
■以下連載(ノンフィクション)
・僕のメチャクチャな人生の恥を晒して書いています。
「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
→目次から読む
→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
