七夕の歩幅 #毎週ショートショートnote
約400字・ショートショート
七夕の朝、僕の靴底はアスファルトに接着剤で貼りついたように重い。
一年に一度、天の川を渡る織姫と彦星の逢瀬のため、地上の独り身は歩幅の半分を国に押収されるのだ。
いつもの倍の汗を流し、カクカクと小股で歩く独り身の列に混ざる。
一歩ごとに命を削るような疲労感の中、僕は「年に一度しか会えないなら仕方ないか」と言い聞かせ、乾いた喉を鳴らした。
だが、這うようにして到着した会社でテレビを見た瞬間、その同情は消し飛んだ。
『速報です! 両氏が天の川のド真ん中で合流しました!』
画面の中、二人は僕らから搾取した膨大な歩幅を使い、時速百キロ超の猛スピードで爆走していた。
「織姫!」
「彦星さま!」
猛烈な勢いで抱き合った二人は僕たちの歩幅を回転力に変えて、激しくクルクルと回り始めた。
一回転、二回転。織姫の天衣がふんわりと宙に広がり、天の川の星屑を派手に撒き散らす。
それは教科書に載せたいほどドラマチックで、反吐が出るほど贅沢なイチャイチャだった。
あーあ。やってられっか。

