ダンジョン第三章 第117階層【実録】『幻の勝利と敗者の帰還!古巣で待ち受ける窓際上司の救済と新たなる絶望の幕開け』
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01:レトロスペクティブ・ディスペア〈回顧の絶望〉
スレイブ・ハイスピード・トレイン(高速魔導列車)の硬い座席に体を深く沈める。車窓の向こう。
猛スピードで流れ去っていく景色を俺はただ虚ろな目で見つめていた。
失意の中。
俺は古巣である西都校のある西都へ、帰還を余儀なくされていた。東都校での日々が、走馬灯のように脳裏を駆け巡る。

ただがむしゃらに理想を追い求めた。
周りの魔導女師(女性講師)たちを巻き込み、泥水をすすりながら突き進んだ。あの一連の行動に、果たして何の意味があったのだろうか。答えの出ない自問自答を俺は永遠に繰り返していた。
最後の最後まで、俺たちの戦術のピースは間違っていなかったはずだ。
しかし、多くの欲望と悪意が渦巻く巨大な権力の中。最終的に全てを書き換え、勝者となるのは「強い者」なのだ。
所詮、持たざる弱者の烏合の衆。多少の知恵を働かせ、泥臭い物理刃(自分軸)を振り回したところで。
その結果は、あまりにも無残なものだった。
絶望的…!
俺は小さくため息をつき、残酷な結末を頭の中で整理し始めた。

02:インパーフェクト・リザルト〈不完全なる結末〉
あの後、最強ギルド(大企業)青木工業との死闘はどう終わったのか。
因果防波堤(下請け)のギルドマスター(社長)たちは、不当な一閃価(単価)の引き下げを免れ、正常な取引に戻ることはできた。

だが、青木工業自体の宝物庫(売上)減少に伴う、因果受託の血盟(発注量)の劇的な低下。彼らのギルド(会社)が苦しい状態であることは、結局何も変わらなかった。
暴君である鮫島長老(役員)と伊藤統括導師(部長)。彼らに裁きの鉄槌を下すことには成功した。

しかし、その巨大な権力は、法の執行陣列(法務部)の金子と情報伝達陣列(広報部)の栗林という、新たな支配者に移譲されただけなのかもしれない。

そして、全ての解決を中心的に行い、俺たちと共闘した篠田先任導師(係長)。彼は愛する鈴木渚の汚名を晴らすことには成功した。だが、鈴木は静かにギルドを退職してしまった。

篠田自身も、今回の汚職騒動に関わった罪を被せられた。組織の中心メンバーから外され、地方へと左遷されてしまったのだ。彼が当初描いていた権能拡大(出世)の最短ルートは完全に閉ざされてしまった。
裏情報の蒐集家(ゴシップ記者)である広沢。

彼の放った王都の醜聞(スクープ)の連載は、大好評のうちに終わった。しかし、最も重要な核心部分について他誌にすっぱ抜かれてしまった。業界内での名声を独り占めするという彼の野望は、脆くも崩れ去ったのだ。

そして、俺自身。
東都校での組織改革には、確かな明度をつけることはできた。
グランドマスター(専務)からの至上命題であった遠隔防壁の分散陣列(在宅システム)。これも、かろうじて軌道に乗った程度である。俺が最初に絵に描いたような巨大なプロジェクトとして主導していくことはできなかった。
あとは、東都校に残してきた平野や山口といった後進の魔導女師たちに託すしかない。とても満足と言えるような結果ではなかった。俺は自らの圧倒的な力不足を痛感していた。勢いと情熱だけでは、巨大な商いの理(ビジネス)は決して動かない。
30前後の若造には、できることが限られていたのだ。
もっと早く、会社の上層部を戦略的に巻き込んでいくべきであった。ただ一つの救い。それは、別れ際に大魔女(現場責任者)がかけてくれた言葉だった。
「目的は完璧ではないけれど、軌道に乗ったわね」

あの冷徹な氷の微笑とともに放たれた、皮肉交じりの声。それが不器用な彼女なりのねぎらいだと分かっていたから。失意の中での心の整理は、あっという間に終わった。
俺は悔しさを噛み締めるあまり、極度の緊張とストレスをごまかす痛々しいルーティンに走った。
手に持っていた魔導乗車券(切符)を、奥歯でギリギリと噛みちぎろうとしたのだ。だが、勢い余って誤って自分の下唇の裏を思い切り噛み抜いてしまう。

「ぐあぁっ!」
口の中から生暖かい鉄の味が広がる。
俺は血混じりの涎を垂らしながら、白目を剥いて座席の上で激しく悶絶した。

『おい、おっさん!』
『過去の反省に浸りながら自らの口腔内を物理的に破壊するとか、ただの自傷系ホラーだワン!』
『一人で勝手に流血して、魔導列車の指定席を完全な猟奇事件の現場に変えてるワン!』
魔犬ツン(相棒)の容赦なきジャッジメント・サタン〈魔犬の正論〉が、俺の心臓を鋭く抉る!
痛恨的…!
俺は唇の激痛に耐えながら、ハンカチで血を拭い、静かに前を向いた。
03:ホームタウン・リターンズ〈古巣への帰還〉
魔導列車が駅に滑り込む。
俺は3ヶ月ぶりに、西都校へと戻ってきた。大魔女は東都と西都を頻繁に行き来していた。そのため、俺にはこの3ヶ月前がずいぶん遠い昔のことのように思えていた。
見慣れた建物の前に立つ。重い扉を開け、執務の間(執務室)へと顔を出した。相変わらずの、どんよりとした重苦しい瘴気(息苦しい空気)。特攻団員(営業員)たちは、虚ろな目で黙々と通信魔導具(電話)を取り続けている。

俺が立ち寄ったことなど、誰一人として気づきもしない。巫女(事務員)も、こちらをチラリと見て淡々と会釈をするだけだ。
冷遇的…!
だが、そこに一人だけ、大声で気さくに声をかけてきた者がいた。
「あー、久しぶりじゃない」
「元気にしてた?」
「饅頭、食べる?」
その呑気な声の主は、前魔導指導団長(前教務主任)の山本だった。

以前と全く変わらない力の抜けた笑顔。少し間抜けなテンポのずれたやり取り。激しい死闘を終え、心身ともにボロボロになった今の俺には、その存在が適度で最高な清涼剤となった。
一気に、自分のホームに帰ってきたという実感が胸にこみ上げてくる。
04:ニュー・ディザスター・アウェイクニング〈新たなる災厄の目覚め〉
時計の針が兵糧補給(ランチ)の時間を示す。団長と俺は連れ立って、いつものあの和食店「太田屋」へと向かった。個室に案内され、座布団に腰を下ろす。団長から、優しい労いの声がかかる。
「異次元おじさん」
「本当にお疲れ様」
「無事に終わったのかい?」
俺の暗く沈んだ表情を見て、全てを察してくれたのだろう。俺は、もう何も隠す必要はないと思い、包み隠さず答えていく。
「当初の目的は、なんとか建て直すことはできたんですけど……」
「グランドマスター(専務)からの勅命であった遠隔防壁の分散陣列の構築については」
「なんとか軌道には乗ったものの、自分が思い描いていた理想のものとは、ほど遠い結果になりました」
俺は肩を落とし、無力感を隠さずに吐露した。それを静かに聞いていた団長は、ふっと穏やかな笑顔を浮かべて話し始めた。

「いいんじゃない」
「100%なんてことないし」
「その感じだと60%ぐらいはできてそうだから」
「世の中、そんなもんじゃない」
「自分の思い通りに全てが進むなんて、そんなの傲慢じゃないかな」
衝撃的…!
俺はその言葉を聞いて、ハッとした。
重くのしかかっていた完璧主義という鎖。それが音を立てて砕け散り、肩から何かつきものが取れたような、スッキリとした気持ちになったのだ。

これは、いつも飄々としている団長なりの深くて温かい励ましだった。
俺は丹田の奥底で燻っていた残存魔力が、新たな決意と共に静かな脈動を始めるのを感じた。温かい光となって全身の血脈を巡っていく。
俺は心の中で、新たな物理刃を力強く詠唱した!
「発動せよ……!」

マインド・リセット・サンクチュアリ〈魂の再構築領域(心の救済)〉ッ!!
二人は名物のとりめし御膳を頬張りながら、和やかに談笑にふけっていただが、不意に団長の顔から笑顔が消え、少し真剣な表情へと変わった。彼は箸を置き、俺に西都校の現状を静かに語り始めた。
「日常の運営については問題なく、ちゃんと回っている」
「そこは心配しないでくれ」
団長は少し言い淀む。

「しかし、大きな問題が発生している」
「俺には対処が難しいんだ」
「異次元おじさんが帰ってきたから、なんとか助けてほしい」
戦慄的…!
それは、帰還したばかりの俺の全身に、冷たい氷水を浴びせるような言葉だった。休む間もなく突きつけられた、衝撃の事実。俺の心に、再び警鐘が激しく鳴り響き始めたのだ。
いざ、次なる階層へ。
【次回予告:ダンジョン第118階層】
失意の帰還を果たした異次元おじさんを癒やしたのは、窓際団長の温かい言葉だった! だが、平和な時間は長くは続かない! 団長の口から語られた西都校の「大きな問題」とは一体何なのか!? 留守の間に組織を蝕んでいた新たなる絶望のバグが、俺の前に立ちはだかる! 休む間もなく始まる次なるクエストに、おじさんのMPは再び削り取られていく! 次なる死闘が今、幕を開ける! 次階層を見逃すな!
最後までお付き合いありがとうございます。
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【迷宮の深淵へようこそ】
この「クソゲー(社会)」から強制ログアウトさせられた、時給1,100円スタートの男の生存戦略。

覚悟がある奴だけ、次のページをめくれ。
異次元おじさんの自己紹介はこちら👇️👇️
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