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Nipsey Hussleの遺志を守る仕事

Nipsey HussleとBino Rideauxが長い時間をかけて作った"Prolific"が、ついに世に出た。Blacc SamとBino RideauxがREAL 92.3のThe Cruz ShowとBootleg Kevの番組で語ったのは、遺された音源の発売報告だけではない。曲順もアートワークも生前に決まっていた作品をどう守るか、そしてNipsey Hussleが残したMarathonの考え方をどう次の事業へ渡すかだった。

死後の音楽には、未完成の素材を後から整えたのか、本人が残した形を保っているのかという問いがついて回る。二人の話を追うと、Blacc Samたちが避けているのはリリースそのものではなく、作品の都合に合わせて故人の意思を作り替えることだと分かる。"Prolific"、Marathon Burger、そして8話から9話に及ぶドキュメンタリーは、別々の企画に見えて、同じ判断から出発している。


"Prolific"に残った二人の完成形

制作の起点は、Nipsey HussleとBino Rideauxが2016年から2017年ごろに曲を作り始めた時間にある。Blacc Samは、Nipsey Hussleから音源を受け取った時点で、それが完成していると分かったと話す。弟は作業途中のアイデアを見せて意見を求めることもあったが、完成版を渡すときには曲順まで固めていた。"Prolific"についても彼とBinoが100パーセント一緒に作り、曲順も組み、アートワークまで手がけたと説明している。

Bino Rideauxが明かしたのは、最初から現在のタイトルと方向性だったわけではないという事実だ。当初のタイトルは"Single for the Summer"で、恋愛の良い面と悪い面を歌う、女性に向けた作品を考えていた。ところが制作が進むと、二人は別のエネルギーに向かう。ポストプロダクションの段階でチームがタイトルを見直し、Nipsey Hussleが残した意図に近いものとして"Prolific"を選んだ。

その変化は、単なるタイトル変更ではない。Bino Rideauxは"Super Real"や"Count on You"を、作品の中でも特に脆さをさらした曲として挙げている。後者では、Nipsey Hussleが失った人々や自分の経験を語り、Bino Rideauxも自分の喪失と重なる部分を受け止めながら向き合ったという。一方で"500 Horses"では、Nipsey Hussleが先に作っていたフックとヴァースにBino Rideauxが加わり、"Situations"では二人がヴァースを交わした。作品の幅は、最初の企画名よりも、二人がスタジオで選んだ曲の並びによって決まっている。

後から手を入れる余地がなかったわけではない。Bino Rideauxは、チームで「もう一度攻めた方がいい」と考えた箇所もあったと話す。それでも毎回オリジナルに戻って聴くと、最初の形の方がよかった。Blacc Samも、制作やプロダクションを変える案を検討した後に「元に戻そう」と判断したと語る。ここで守られたのは、古い録音を無条件に保存することではない。二人が当時つかんだやり取りを、現在の都合で上書きしないことだった。

Cardi Bが参加した曲も同じ基準で扱われた。Blacc Samによれば、Nipsey Hussleはその曲を気に入っていたが、"Victory Lap"には合わず、"Prolific"に置く方がよいと判断していた。Bino RideauxとCardi Bがまだ現在ほど大きくなる前に録音した曲だからこそ、別の作品のために作り替えず、本人が選んだ場所に戻す必要があった。"Prolific"は未発表曲を集めた箱ではなく、Nipsey HussleとBino Rideauxが自分たちの手で終わらせたアルバムとして立っている。

未発表音源を扱う責任

Blacc Samが未発表音源について最初に置いた線引きは、金銭だった。Nipsey Hussleの死後、家族やチームの外から「今すぐ出すべきだ」という声は届いた。しかし、家族と仲間が金銭目的で便乗することはできない。Blacc Samは、時間が経って自分が音楽を聴けるようになるまで待ち、Bino Rideauxたちとこの作品を出すべきだと確かめてから動いたと語る。

その判断を可能にしたのは、作品を急いで換金しなければならない状況をNipsey Hussleが残さなかったという説明でもある。Blacc Samは、子どもたちのための資産や信託が整えられており、音楽を無理に出して生活を支える必要はなかったと話した。だからこそ、レーベルや外部の期待よりも、本人がどのように出したかったかを優先できる。遺作を守るという言葉が感傷で終わらないのは、公開を急がなくてもよい経済的な土台を本人が作っていたからだ。

この基準は、Nipsey HussleのヴァースがKanye WestとTy Dolla Signの"Vultures"収録曲"Do It"に使われた経緯にも表れている。Blacc Samたちは、その使用を事前に知らず、連絡を受けてから内容を確認したという。最初は驚いたが、Ty Dolla SignとKanye Westの作品であることを踏まえて、チームは使用を認める方向へ進めた。一方、"Prolific"に残すべき曲は別にあり、そこに収録するNipsey Hussleのヴァースを守った。何でも拒むのでも、何でも出すのでもない。曲がどの作品にふさわしいかを判断している。

Jay-Zが参加した"What It Feels Like"が"Judas and the Black Messiah"のために公開されたときも、Blacc SamはNipsey HussleがJay-Zと何かを作りたいと望んでいたことを思い出したという。新しい音源を出すたびに、話題性や収益だけではなく、その曲が本人のキャリアとどう接続するかが問われる。死後の公開は、ファイルを見つけた人が順に放つ作業ではない。残した人間の関係、作品の目的、聴かれる場所を一つずつ合わせる作業だ。

この見方は、Nipsey Hussleの死後に発表された音源をめぐる判断を考えるうえで、"Racks in the Middle"をめぐる記事とも接続する。ただし、今回の"Prolific"は最後の瞬間を偶然記録した曲ではない。Nipsey HussleとBino Rideauxが曲順まで決めた一枚を、遺された側が時間をかけて公開した作品である。

未発表音源のすべてがアルバムになるわけでもない。Blacc Samは、フルの曲、ヴァースだけの曲、フックだけの素材が大量に残っていると話し、完成度や録音時期を見ながらドキュメンタリーのサウンドトラックへ回す考えを示した。All Money Inのメンバーに残したフックやヴァースを使うプロジェクトも進んでいるという。公開しないことも含めて、どの形なら音源の時間を裏切らないかを決める。その慎重さが、Nipsey Hussleの作品を一時的なニュースから切り離している。

Marathonブランドの拡張

Marathonという名前は、最初から衣服を売るためだけにあったわけではない。Blacc Samは、Nipsey Hussleがストリートの勢いを保ったまま、ショーの空気を変えようとしたと振り返る。以前は観客がステージに上がり、争いが起きることもあった。Nipsey Hussleが「弾丸」のシリーズを終わらせてMarathonを名乗ろうとしたとき、Blacc Samは意図を理解できなかった。しかし、実際に変化が起きると、観客は履歴書を持ち、別の地域から来た人々が「あなたを見ている」と伝えるようになった。

ここでのMarathonは、危険な過去を消すためのきれいな看板ではない。自分がどこから来たかを隠さず、それでも同じ場所に閉じこもらないための仕組みだった。Nipsey Hussleは、音楽を作るだけでなく、レーベル、衣料、食、映画へ広がる生活ブランドを構想していた。Blacc Samは、その考えを受け取ったからこそ、難しい時期でもブランドを信じられると話す。何を売るかより、何を一つの名前でつなぐかが先にあった。

その延長にMarathon Burgerがある。インタビューでは、店舗が4か所まで増え、アーティスト、スポーツ選手、俳優などが訪れ、列に並ぶ人へ買い取りで食事を配る人もいると語られた。これは単に有名人が立ち寄る店という話ではない。店の前に人が集まり、食事を買い、街を訪れた人が次の目的地として選ぶ。音楽から生まれた名前が、日常の行動へ変わった例である。

次の計画として語られたのがMarathon Tacosだ。Marathonの店舗とバーガー店が並ぶMelroseメルローズに、年末までの大きな開店を目指しているという。価格を手頃にするか、プレミアムな商品として扱うかも、番組内で冗談を交えながら話し合われた。ブランドの継承は、昔のロゴを保存することだけではない。どの街で、誰に、どんな値段で届けるかを決め続けることで、Nipsey Hussleの考え方が今の商売へ移される。

Blacc Samは、Marathonの店舗でNipsey HussleのGrammy賞を展示する計画にも触れた。記念品をしまい込まず、ファンが見られる場所へ置くという判断である。音源、店、展示物の扱いに共通しているのは、所有を誇示することではなく、次の人が触れられるようにする姿勢だ。Nipsey Hussleの遺志を守る仕事は、過去を密閉する仕事ではない。過去の意味を損なわない形を探しながら、次の生活へ接続する仕事になっている。

ドキュメンタリーに残す時間

未発表音源の扱いが慎重になる理由は、ドキュメンタリーの規模を見ても分かる。Blacc Samによれば、作品は8話から9話ほどになり、幼少期、初めて自分で録音やビート制作を始めた時期、ストリートにいた時間、音楽へ本気で進んだ時期、New YorkニューヨークでJohnny Shipesと動いた時期までを含む。SpringHillが集めた映像だけでも数百時間に及び、家族が存在を知らなかった素材もあるという。

それだけの映像を前にして、Blacc Samは完成を急がなかった。外部の会社が創作面を握る条件を受け入れず、自分たちで資金を出しながら制作を続けてきた。Allan Hughesをエグゼクティブプロデューサーとして迎えた後も、まず作品を完成させ、そのうえでNetflixやHBO Maxのような配信先を探す考えだ。大きな金額で売ることより、世界中の人に届く場所を選ぶことを優先すると話している。

Blacc Sam自身も、編集に15時間、16時間と張り付き、場面の細部を確認している。事実と違う場面なら差し替え、必要な映像が見つかるまでチームへ探し直させる。素材が多いほど、編集者の都合で順番を作る誘惑も増える。それでも彼がこだわるのは、見栄えのよい物語を作ることより、何が起きたのかを正確に並べることだ。"Prolific"の曲順を守った判断と、ドキュメンタリーの場面を確認する姿勢は、同じ方向を向いている。

その作業をBlacc Samが引き受けるのは、表に出たいからではない。普段は裏側にいる人物だが、ブランドやアルバム、映像の目的を達成するために必要なら前に出ると話す。Bino Rideauxも、Nipsey Hussleが自分の可能性を先に見ていたと振り返り、「自分を見るときには、Nipsey Hussleも見えるようにする」と語った。二人の役割は同じではない。Bino Rideauxは音楽で関係を引き受け、Blacc Samは作品と資産と記録の境界を管理する。

だから、今回の仕事はNipsey Hussleを新しく演出することではない。本人が選んだ曲順を残し、本人が望んだブランドの広がりを守り、本人の時間を示す映像を正しい順番で並べることだ。Blacc Samはドキュメンタリーについて「自分たちはこれを台無しにしないように任されている」と話した。その言葉は、派手な追加を避ける消極策ではない。残されたものを見極め、壊さず、必要な人へ渡すための積極的な仕事である。

"Prolific"が示したのは、死後でも新作を作れるということではない。完成した作品を完成したまま扱うには、待つこと、断ること、選び直すことが必要だということだ。Marathon Burgerやドキュメンタリーも同じで、Nipsey Hussleの名前を使うだけでは続かない。Blacc SamとBino Rideauxが今やっているのは、Nipsey Hussleの代わりになることではなく、彼が残した判断を次の現場で実行し続けることなのである。

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