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kanam
楽しく美味しく食べる
癌の影に怯えながら、食事を作るのは止めよう。今は、楽しく美味しく食べてもらうことに注力しよう。そう決めてから、心が少し軽くなった。もちろん、毎回の受診は怖いし、血液検査の数値が少しずつ悪化している事実は、目をそらしたいほどの恐怖だ。でも、負けないようにしたい。勝てないかもしれないが、負けないように暮らしたい。病気に人生を乗っ取られないように。キレイごとだろうが、絵空事だろうが、今はこれでいいのだ。
この間、焼津のお土産の厚削り節と昆布で贅沢に出汁を引いた。じっくりと丁寧に。黄金色の鰹出汁は、塩と香り付けの醤油の数滴加えるだけで完璧な味になる。茹でた里芋を手で潰しながら、たまり醤油で軽く下味を付ける。団子にして片栗粉を叩いて揚げたあつあつを、その完璧な出汁で頂くという、世にも贅沢な揚げ出汁里芋になるはずだったのに・・・なぜ崩れた。
今日は、春巻を作った。なかなか減らない卯の花を巻いた、卯の花の春巻。
卯の花に少しトロミをつけようと思ったら、片栗粉がなかった。仕方なく、大事にするあまり賞味期限をとうに切らした吉野葛を使う。少量使うはずが、ドバっと勢いよく出てしまい、結構な量がダメになった。あぁ、ごめんね吉野葛。中心には鶏の塩こうじ煮を裂いたのも入れて、たんぱく質を追加。
抗がん剤のポンプをお腹に抱えた夫が「うまい」と小さな声で呟いてくれて、なんか達成感。
