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『水底の石(意思)と、鳳凰の羽根休め 〜君が代のはじまりの物語〜』

『水底の石(意思)と、鳳凰の羽根休め〜君が代のはじまりの物語〜』

むかしむかし。

祈りだけが風に揺れていたころ。

ひとつの島がありました。

上から見ると

まるで龍の形に見える島。

その真ん中には

空を映す大きな湖。

水は静かで、

まるで世界の記憶そのものでした。

朝になると目覚め揺れ動き、

夜は穏やかにそっと眠る湖です。

龍たちは

毎日せっせと

湖の底から小さな石を運びます。

ひとつ。

またひとつ。

コトン。

コトン。

石と石が触れ合うたび

「岩音(いわおと)」が鳴りました。

 

コトン。

コトン。

その音は

まるで祈り。

 

長い長い時が流れ、

石は寄り添い、

やがて岩となり、

すこしずつ

湖面に顔を出しはじめました。

 

岩には

やわらかな苔が生まれ、

魚たちが集まり、

水はさらに澄んでいきます。

 

するとある日。

空から

ひらり、と一羽の鵜がやってきました。

岩に羽を休め、

ぽとり、と糞を落とします。

 

次の春。

そこから

細い芽がのびました。

すくすく

すくすく

竹が

天へとのびていきます。

 

その姿を見て

ある人は言いました。

「鬼の角みたいだ。こわい島だ」

 

またある人は言いました。

「鳳凰が羽を閉じて眠っているみたい。なんて神々しい島だろう」

 

同じ景色なのに

見え方はちがう。

 

島が変わったのではなく

見ている“こころ”が

形をつくっていたのです。

 

むかしから

こう伝えられていました。

 

魂には 鬼が宿る、と。

 

怒り、悲しみ、悔しさ、孤独、、、

守ろうとする力が

強すぎると

それは角になり

牙になり

逆鱗となる。

 

触れられれば

暴れだす。

 

でも。

 

愛で包めば すうっと眠る。

鳳凰が羽を休めるように。

 

炎は

燃やすためでなく

あたためるために

あるのだと

その島は

教えていました。

 

やがて人々は気づきます。

鬼を追い出しても

世界は平和にならないと。

 

鬼を

抱きしめたときだけ

涙があふれ

胸がふるえ

琴線に触れ

人は

ほんとうの人になるのだと。

 

それが

弥勒の世。

 

戦わない世界。

責めない世界。

ただ、抱きしめる世界。

 

湖のほとりで

龍は今日も石を積みます。

コトン。

コトン。

祈りの音。

 

小さな石が

いつか岩になり

岩が苔むし

命が集い

鳳凰が

静かに眠る島になるまで。

 

きみがよは

ちよにやちよに

さざれいしの

いわおとなりて

こけのむすまで

 

それは

だれかを称える歌ではなく

 

「あなたが

あなたのままで

やすらかに生きられますように」

 

そんな

太古からの子守唄。

 

今日もどこかで

鬼が眠り

鳳凰が羽を休め

愛が

静かに積もっていく。

竹が生まれてできた物語の 

この島の名前を

人々はいつしか

竹生島

と呼びました。

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